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〈佐伯 霞 の真実〉


___「貴方、私が一昨日松上君と居たのを見たでしょ?」

「え…?」

先生の一言で軽かった足が突然鉛のように重く感じた。

「これ、貴方の赤いペン。あの日生物室前に落ちていたの。いつもはわざと落としてるのに、今回は不注意かしら?」

先生は引き攣った笑顔を私に向けた。

先生が松上君を襲っているところを見ていたことがバレてしまっていたのだ。

「あ、あの…。えっと…その…。」

言葉は出ずとも、冷たい汗が額に流れていくのを全身で感じ取った。

早乙女先生は脳味噌の模型を棚の上に置き、私の背丈よりも低くしゃがんだ。

「貴方の告白、受け止めるわ。だからあの日のことは秘密にしてほしいの。」

右左と瞳孔を動かし、私の顔を真っ直ぐ見る、

彼女の真剣な顔を眺めていると、誰も知らない、あの日の先生の乱れた姿がチラチラと脳裏に浮かぶ。

が、それも束の間、先生が発した言葉をもう一度繰り返し頭が混乱する。

__受け止める?それってどういう…

そんな考えをする隙も作らず、先生は私の頬に口付けをした。



「ッツ…//」


「付き合いましょう、私たち。この関係も、あの日の出来事も全て隠し通すの」

顔と顔を離し、今度は優しい表情で小さく笑みを浮かべた。

「でも、こんな私でいいんですか?大して可愛くもないし、先生とは不釣り合いだと自分でも自覚しているんです」

__この言葉によって否定されることになったらどうしよう。

私は少し俯いて、溢れそうな涙を目の中に閉じ込めた。


「過小評価しないで。佐伯さんは充分可愛いじゃない」

嘘か本当かわからない口調でそう言うと彼女は手を私の首に巻きつけた。




「好きよ。」



苦しかったが、彼女の細い手が私の頸動脈に触れていることがすごく嬉しかった。




〈早乙女 裕香 の真実〉


__真実を確かめなければ。

佐伯は私が松上君を突き落としているところを見ているはず。

彼女は私の弱みを握ったとでも思っているのだろうか。

彼女の私への好意が冷めてしまえば、警察沙汰になり教師という職も失ってしまうだろう。

__獄中生活なんて溜まったものじゃない。

私は向こうからやってきた佐伯に恐る恐る聞く。


「貴方、私が一昨日松上君と居たのを見たでしょ?」


彼女は困惑している様子だった。嘘をつけないタイプなのか、確実に犯行現場を目撃している反応だ。

ストーカー行為もそう。何もかも分かりやすい。

__佐伯が私の弱みを握っているのなら、その弱みを利用してやろう。

意を決して彼女の告白を条件として呑んだのだ。秘密にしてもらう代わりに付き合う、ただそれだけのこと。

私は彼女に優しくキスをした。

トマトのように、彼女の顔が徐々に赤くなっていった。

さらに彼女が顔を伏せ、眉を顰めて発した言葉に、私はどれほど都合が良いのかと思った。

「でも、こんな私でいいんですか?大して可愛くもないし、先生とは不釣り合いだと自分でも自覚しているんです」


私は適当に綺麗事を並べ、彼女を慰めた。

可愛いなんて思ったことは本当に無く、寧ろ気味が悪い程だった。

しかし、彼女は満足げだった。

これで彼女の容姿のコンプレックスを利用し弱みに漬け込み、交換条件を成立させたのだ。

彼女はいずれ松上のように殺す。

そんな考えをしていると自然に指を佐伯の首に絡めていた。強く手の中に収めようと無心でキツく締めた。








彼女を幸せの絶頂で地獄に堕とす。

そう固く決意した私は手の力を緩めた。

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