「さて、寝る前に錬金しておこうかな……」
一息ついたあと、ベッドから起き出して錬金術の用意をする。
テレーゼさんの指輪と、メイドさんたち用のカフスボタンに、さくっとアーティファクト錬金をしてしまおう。
まずは小手調べに、カフスボタンからやろうかな?
宝石のところを置換しないといけないから、忘れないうちにね。
それじゃ、れんきんちかーんっ。
バチッ バチッ バチッ バチッ バチッ
「……はい、終了っと」
置換を終えたカフスボタンを、テーブルに置いて眺めてみる。
紫色の髪のクラリスさんにはアメジストを、
赤茶色の髪のマーガレットさんにはルビーを、
緑色の髪のミュリエルさんにはエメラルドを、
白色の髪のルーシーさんにはオパールを、
金色の髪のキャスリーンさんにはトパーズを入れてみた。
「ふむふむ、こうして見るとなかなかに壮観だね。
さて、それじゃ次はアーティファクト錬金で効果を付与……っと」
はい、れんきーんっ。
バチッ バチッ バチッ バチッ バチッ
「終了っ」
そして、かんてーっ。
──────────────────
【カフスボタン(S+級)】
一般的な装身具。アメジストがあしらわれている
※錬金効果:精神力が1.0%増加する
※追加効果:精神力が1.0%増加する
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【カフスボタン(S+級)】
一般的な装身具。ルビーがあしらわれている
※錬金効果:体力が1.0%増加する
※追加効果:体力が1.0%増加する
──────────────────
【カフスボタン(S+級)】
一般的な装身具。エメラルドがあしらわれている
※錬金効果:素早さが1.0%増加する
※追加効果:素早さが1.0%増加する
──────────────────
【カフスボタン(S+級)】
一般的な装身具。オパールがあしらわれている
※錬金効果:力が1.0%増加する
※追加効果:力が1.0%増加する
──────────────────
【カフスボタン(S+級)】
一般的な装身具。トパーズがあしらわれている
※錬金効果:幸運が1.0%増加する
※追加効果:幸運が1.0%増加する
──────────────────
……ふむ。
特別な効果は付かなかったけど、上がるステータスは綺麗に散ったかな。
それに何となく、それぞれの個性に合わせた感じで付いたかも?
実際のところ、スズメの涙ほどの補正でしか無いんだけどね。
例えば握力が30キロとすれば、2%増えたとしても30.6キロになるくらいだし……。
……いや、もしかして大きい? うーん、やっぱり微妙かな?
ちなみに、錬金効果を持つアイテムを複数同時に持っても、そのすべてが効果を発揮するわけでは無いようだ。
どうやら2つくらいしか効果が発揮されないみたいなんだけど、この辺りは何ともゲームみたいな感じに思えてしまう。
「さて、それじゃ次はテレーゼさんの指輪かな。
れんきーんっ」
バチッ
かんてーっ。
──────────────────
【リング(S+級)】
手作りの指輪。サファイアがあしらわれている
※錬金効果:夢占い
※追加効果:体力が1.0%増加する
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「ぬわっ!?」
……おぉっと、何やら効果が付いちゃった……。
『夢占い』? うーん、何だろう……? えい、かんてーっ。
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【夢占い】
睡眠時、正夢を見る可能性が高くなる
──────────────────
……ふむ?
これは……別に、凄くないような気がする?
いやいや、でも未来予測の一種だから、凄いのかな?
凄いような、凄くないような……。
まぁいいか、このまま渡してしまおう。
……あ、いや。
こんなのを持ってると、リーゼさんみたいに悪さをしてくる人がいるかもしれないよね。
情報操作の魔法を掛けてから渡すのが一番良いんだろうけど、さて、どうしたものか……。
……うーん、考えていても仕方ないか。
今日中に錬金術師ギルドの依頼をやってしまって、明日納品に行ったときに、テレーゼさんに相談してみよう。
明日の午後はピエールさんと会う予定を入れているから、錬金術師ギルドには午前中に行こうかな?
せっかくだし、テレーゼさんを誘って4人で昼食でもとることにしよう。
一緒に食事をする約束も、まだ果たしていないからね。
こういう約束は、しっかり守っていかないと。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
次の日、ルークとエミリアさんと一緒に錬金術師ギルドへ向かう。
建物に入ると、いつも通りの出迎えが待ち受けていた。
「アイナさああああん! いらっしゃいませえええええ!」
もはや恒例。響き渡るテレーゼさんの声だ。
「テレーゼさん、こんにちは。
早速であれなんですが、今日のお昼、ご一緒にいかがですか?」
「えっ!?」
「え?」
「えぇ!?
わ、私、避けられていたんじゃなかったんですね! 嬉しいですっ!!」
……何ですと!?
ちょっと予想外だったけど、そう思われていたのか。
いや、今までは本当に時間が合わなかったり、私の状態が良くなかったってだけのつもりだったんだけど――
「人聞きが悪いですよ!
それで、午後は用事があるので、少し早めだと助かるのですが……」
「大丈夫です! 仕事は主任に押し付けていきますので!」
「おいそこ、何を言ってるんだよ……」
不意に、テレーゼさんの後ろから男性の声が聞こえてきた。
偶然通り掛かったようで、静かな圧を放ちながらダグラスさんが立っている。
「あ、あわわわわ……」
「ダグラスさん、こんにちは。
あとでテレーゼさんをお借りしても良いですか? 昼休みをご一緒したいな、と」
「ああ、別に構わないぞ。
ところでアイナさんは、今日はどうしたんだ? まさか、もう納品?」
「はい、その通りです」
「おおう……、やっぱり早いな。それじゃ応接室に行こうか。
ああ、そうそう。さすがにまだ新しい依頼は入ってきていないから、今日渡せる依頼はないぞ」
「おお、ついに無くなりましたか!」
「いや……『賢者の石』と『秩序の氷』は残っているんだが――」
「それは眼中に無いです」
「だよなぁ……。
まぁいいや。件数も少ないし、さくっと終わらせよう」
「はい、お願いします。
えぇっと、ちょっと納品に行ってくるので二人は待っていてもらえますか?」
「はーい♪」
「分かりました」
「あ、それなら私が二人のお相手をさせて頂きますね!」
「おい、テレーゼ! お前はちゃんと受付の仕事をしてろよ!」
「ぐふぅ……。す、すいません。お相手ができなくなりました……」
心底悔しそうにするテレーゼさんに、ルークとエミリアさんは苦笑いをした。
それじゃ早く戻って来るから、それまではしっかりお仕事をしていてくださいねー、っと。
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