テラーノベル
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死にたい夜も仕方がないでしょう?
その気持ちがぼんやりわかる夜、僕はなかなか眠れないで暗い部屋でぼーっと天井を見つめていた。
今年はたくさんのフェスに参加させて貰ってその中で彼があの曲を歌うからどうにも耳に残って仕方ない。
お揃いのスーツにサングラス、暑さがすごくて珍しく汗を流しながら歌うあの姿に僕は終始欲情が止まらなかった。忘れようとした気持ちは奥で燻っていたらしい。
「眠れない···」
眠れないだけじゃない。
その憂鬱さの原因は彼が他の人を好きだと痛いくらいわかっているから。
彼はあいつが好きで、僕は彼が好き。
あげく
あいつが僕を好きだときたら
それは
永遠に終わらない堂々巡りだ。
「涼ちゃん最近眠れてないの?」
前髪をすい、とあげて元貴は僕の顔を見つめるその黒い瞳はいつだって光をためて輝いている。
「んー、暑いからかな···寝付けなくて」
「これだけ暑いとね···無理しないようにしなきゃ、疲れが残る30代、ね」
いたずらっ子みたいに笑ってたった2歳差の僕の頭を撫でる。
「そんなに変わらないですから···まぁ、無理はいけないけどね」
「···ほんとに無理すると倒れるよ、寝不足はお肌にも悪いし」
そう言って覗き込む若井は心底心配そうな顔で僕を見つめる。
そんな若井を見つめる元貴を感じながら僕はありがとう、と笑ってみせる。
元貴は知らない、僕が君を思って眠れないことを。
いやらしい姿を想像しているなんてことを。
「若井も無理するなよ、おまえがいないと困るんだから」
「それをいうなら元貴も、涼ちゃんもでしょ···体調管理しながら夏を走り切るよ」
あぁ、いいなぁ。
元貴が若井を見る目は愛しい人に向けるそれだ。
鈍感そうな僕でもわかるくらいの好意に彼が気づかないのはずっと与えられるそれに慣れきっているからか。
それとも気づかないフリをしているだけなんだろうか。
そこまでは読み取れないけど、若井が僕に好意を持ってくれていることはなんとなくわかっている。
いつだって影で僕が落ち込まないようにフォローしてくれているのは彼だし、2人きりの時にスキンシップが多くなるのを感じていた。
そして僕が元貴を好きなことは
一体誰が気づいていて
誰が気づかないフリをしているんだろう
「さぁ、今日も頑張ろうねぇ」
「「うんっ」」
可愛い年下2人の声を聞きながら僕もしっかり仕事に取り組むことにした。
コメント
2件
いきなり綺麗な三角関係ですと!?Σ(`・ω・´)ナヌッ!?