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#二次創作
よんがつ
126
#夢小説
しらすのお部屋
567
つばさ
204
――1週間後。CR。
静かな医局。
飛彩は端末を見つめていた。
隣では貴利矢が椅子に座り、長い沈黙を破る。
「……まだ起きないね」
「……ああ」
飛彩は短く返した。
貴利矢は少しだけ表情を曇らせる。
その時。
小さな物音。
二人が振り返る。
ベッドの上。
パラドの指がわずかに動いた。
「……!」
飛彩が立ち上がる。
「パラド」
呼びかける。
ゆっくり。
パラドが目を開けた。
「……」
「分かるか」
少し間。
パラドは飛彩を見る。
そして。
「……永夢」
小さく呟いた。
貴利矢が息を吐く。
「やっぱり」
「一番最初にそれか」
少し笑う。
いつものように。
パラドはベッドから降りる。
「おい、まだ――」
飛彩が止めようとする。
だが。
パラドはすぐに歩き出した。
「永夢のところか?」
その言葉に。
パラドは一瞬だけ止まる。
そして。
小さく頷いた。
「……ああ」
その反応に。
飛彩と貴利矢は顔を見合わせる。
悪い様子ではない。
ただ。
「……急だな」
貴利矢が呟く。
「まあ、あいつらしいけど」
飛彩もため息をつく。
「まだ身体は戻っていない」
「無理はするな」
そう言った。
しかし。
次の瞬間。
パラドは廊下へ出る。
思ったより速い。
「……」
飛彩が少し眉を動かす。
「回復が早すぎる気もするが」
貴利矢が苦笑する。
「まああの調子なら止めても無駄だろ」
「……」
飛彩は一瞬考える。
だが。
「追うぞ」
そう言って歩き出した。
――病室
永夢はベッドの横で立っていた。
もう無菌室ではない。
身体も少しずつ戻ってきている。
自由に生活することは難しい。
だが。
自分の足で歩ける。
腕にも少し力が戻った。
鏡を見る。
髪はまだ戻っていない。
ニット帽を被った姿。
頬は少し痩せている。
顔色もまだ完全ではない。
それでも。
あの日。
ベッドの上でただ耐えるだけだった自分とは違った。
「……少しずつだけど、戻ってきた」
小さく呟く。
その時。
コンコン。
扉が鳴る。
「はい」
返事をすると。
扉が開いた。
「永夢」
聞き慣れた声。
「……パラド?」
永夢の顔が明るくなる。
「起きたんだ……!」
駆け寄ろうとして。
少しだけふらつく。
「っ……」
すると。
パラドがすぐに支える。
「無理すんな」
その言葉。
いつものようだった。
「まだ病み上がりだろ」
永夢は苦笑する。
「お前こそ」
「起きたばっかだろ」
少し不満そうな顔。
それも。
いつものパラドに見えた。
「……ほんとに心配した」
永夢が言う。
「ずっと起きなかったから」
パラドは少し目を逸らす。
「悪かったな」
「でも」
一拍。
「約束は守る」
永夢を見る。
「俺は戻ってくる」
その言葉に。
永夢は少し笑った。
「うん」
「信じてた」
――そのはずだった。
けれど。
何かが。
ほんの少しだけ違う。
永夢は首を傾げる。
「……パラド?」
「なんだ?」
「なんか……」
言葉に詰まる。
違和感。
でも。
説明できない。
「……いや」
パラドを見る。
「何でもない」
パラドは笑った。
「そうか」
その笑い方も。
声も。
姿も。
全部同じ。
なのに。
永夢の中の何かが引っかかった。
「……」
気のせいか。
そう思った瞬間。
パラドの表情が変わる。
ほんの一瞬。
知らない顔。
「……?」
永夢が眉を寄せた。
「パラド?」
その瞬間。
――ドンッ。
鈍い衝撃が身体を襲った。
「……っ!?」
何が起きたのか理解できない。
みぞおちに重い一撃。
息が詰まる。
「がっ……!」
肺の空気が一気に抜ける。
永夢は腹部を押さえ、その場に膝をついた。
「っ……げほ……っ、げほ……」
咳き込みながら、必死に顔を上げる。
目の前にいるのは。
確かにパラドの姿をした存在。
けれど。
違う。
何かが。
決定的に違う。
「……パ…ラ、ド?」
呼びかける。
返事はない。
ただ。
冷たい視線が向けられる。
いつもの悪戯っぽい笑顔も。
楽しそうな光も。
そこにはなかった。
永夢の表情が曇る。
「……違う」
震える声。
「お前……」
ゆっくり立ち上がろうとする。
「パラドじゃない」
静かな病室。
その言葉だけが響く。
「誰だ……」
目の前の存在を睨む。
「お前は……一体誰なんだ…!」
永夢の声が病室に響く。
――その瞬間。
廊下から足音が近づいた。
「小児科医!」
飛彩の声。
勢いよく扉が開く。
「っ……!」
貴利矢も続いて病室へ飛び込んできた。
目に飛び込んできたのは、床に蹲る永夢の姿だった。
「おい、永夢! 大丈夫か!」
貴利矢は駆け寄り、永夢の身体を支えて立ち上がらせる。
「僕は……大丈夫です」
荒い呼吸を整えながら答える。
飛彩は永夢から視線を外さず、低く問う。
「何があった」
永夢は震える手で、部屋の奥を指差した。
「パラドに……気をつけてください」
「今の、あいつは……」
その言葉に、貴利矢は眉をひそめる。
「…なんだと」
「パラドがお前を傷つけるわけねぇ 」
そう言いながら、貴利矢も部屋の奥へ視線を向ける。
そこに立つ”パラド”。
2人の表情が険しく変わった。
「……お前」
低く鋭い声。
パラドはゆっくりと振り返った。
だが――
その瞳には、いつものパラドの光がなかった。
「……」
貴利矢が息を呑む。
「パラド……?」
呼びかける。
しかし、返事はない。
ただ、ゆっくりと首を傾げた。
「……パラド」
その名を、まるで初めて耳にした言葉を確かめるように呟く。
「そうか」
「この身体は、そう呼ばれていたんだったな」
空気が凍りついた。
永夢の表情が強張る。
「……っ」
飛彩が一歩前へ出る。
「誰だ」
鋭い声が病室に響く。
「答えろ」
その瞬間。
パラドの姿をした存在が、口元を歪めて笑った。
「さすがだな」
「お前は気付くのが早い」
同じ声。
だが、その響きはまるで別人だった。
「……」
貴利矢が拳を握り締める。
「おい」
「冗談なら笑えないぞ」
「パラドを返せ」
その言葉に、”パラド”は僅かに目を細めた。
「返す?」
「違うな」
一歩、前へ踏み出す。
「これは、もう俺のものだ」
永夢は苦しげに顔を上げた。
「……パラドは」
「どこだ」
「答えろ!」
永夢の低い声が響く。
その瞬間、相手の表情がわずかに変わる。
「……まだそんなことを気にするのか」
冷え切った声。
「宝生永夢」
永夢は鋭く睨み返す。
――宝生永夢。
その呼び方をする相手は、そう多くない。
黎斗。
そして――。
つい最近、その名で自分を呼んだ存在がいた。
脳裏に、あの日の声が蘇る。
「……お前」
永夢の瞳が見開かれる。
「まさか……」
「レウコイドか」
その名が告げられた瞬間――
病室の空気が止まった。
コメント
1件
あおいです〜! 今回もすごかったです…! パラドが目覚めたところ、一瞬「よかった!」って安心したんですけど、まさか永夢をいきなり襲うなんて…息が止まりました。しかも「この身体はそう呼ばれていたんだったな」って、中身が別人になってる感がひしひしと伝わってきて怖かったです…。最後の「レウコイド」の名前が出たところ、本当に続きが気になります。飛彩と貴利矢のコンビも渋くて好きです〜! 次話も楽しみにしてますね🌷