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#二次創作
よんがつ
126
#夢小説
しらすのお部屋
568
つばさ
206
飛彩の目がさらに鋭くなる。
「……レウコイドだと」
貴利矢も息を呑んだ。
「そんな……」
「でも、レウコイド因子も、ウイルスも消えたはずだろ……」
病室に重苦しい沈黙が落ちる。
飛彩は目の前の存在から視線を逸らさなかった。
「……完全には」
小さく呟く。
「消滅していなかったということか」
その言葉に、永夢の表情が揺れる。
「……」
貴利矢の脳裏に、一つの光景が蘇る。
パラドが倒れる直前。
完成したガシャット。
あの時。
何かを隠していたような。
そんな小さな違和感があった。
空気が静まる。
その沈黙を楽しむように、”パラド”が口角を上げた。
すると、目の前の存在が笑った。
「そうだ」
「奴は最後まで足掻いた」
「この身体を守るために」
「お前を救うためにな」
レウコイドはゆっくりと永夢を見る。
「貴様の身体に潜伏させておいたウイルス」
「それを消滅させるために」
「奴は抗体を作り出そうとした…」
飛彩は黙って聞いていた。
レウコイドは続ける。
「そして」
「抗体は完成し、 貴様の中から」
「俺の因子を排除することには成功したようだな」
一瞬。
その言葉だけなら、誇らしい結末にも聞こえた。
しかし――
「だが」
「惜しかったな」
「奴自身は」
「完全には順応できなかった」
「……!」
飛彩の目が見開かれる。
「順応……?」
その一言が引っ掛かった。
何かを。
ずっと見落としていた。
飛彩の脳裏に、ガシャット完成時の解析画面が蘇る。
数値。
完成率。
「……まさか」
貴利矢が振り返る。
「大先生?」
飛彩の表情が険しくなる。
「あの時……」
「順応率が100%に達する前に」
「ガシャットは完成した」
永夢が目を見開く。
飛彩は拳を握る。
「だからか」
「抗体そのものは完成した」
「だが」
「パラドの身体との完全な適合には」
「至っていなかった」
レウコイドが満足そうに笑う。
「さすが理解が早いな」
「その通りだ」
「奴は俺のウイルスを抑え込んだ」
「だが」
「完全には適応しきれなかった」
病室に沈黙が落ちる。
永夢はただ、パラドの姿をした存在を見つめた。
「……だから」
「起きなかったのか」
小さな声が零れる。
「身体に異常がなかったのに」
「ずっと……」
レウコイドが静かに答える。
「そうだ」
「奴は眠っていたわけではない」
「戦っていた」
その言葉に、永夢の表情が大きく揺れる。
「……パラド」
レウコイドは静かに笑った。
「だが」
「もう限界が来たようだな」
「なかなかしぶとかったぞ」
その言葉に、永夢の表情が歪む。
レウコイドは続けた。
「さすがは――」
一拍。
「宝生永夢に感染していた」
「世界で初めてのバグスターだ」
「……っ」
その言葉に。
貴利矢の顔が険しくなる。
「お前……」
「パラドのことを、そんな風に言うな」
しかし。
レウコイドは気にも留めない。
白く光る瞳の奥に、愉悦を滲ませる。
「事実だろう」
「奴は最初から特殊だった」
永夢の表情がわずかに強張る。
「貴様の中で生まれ」
「貴様と共に何年もかけて成長した」
まるで、自慢げに語るようだった。
その身体がどれほど価値のあるものなのかを、見せつけるかのように。
「宝生永夢の消滅による完全体への進化は叶わなかった。」
一瞬だけ、口元が歪む。
だが、それすら些細な誤算だと言わんばかりに続けた。
「だが」
「この器を完全に支配すれば、結果は同じこと。」
飛彩の目が鋭く細まる。
貴利矢も拳を握り締めた。
パラドを、”器”としか見ていない。
その事実が、二人の怒りに火をつける。
レウコイドはゆっくりと両腕を広げた。
まるで、自らの勝利を確信しているかのように。
「今度こそ……完全体となる。」
その白い瞳が、不気味な光を放つ。
「そして」
「全世界の人間を病と絶望に染め上げる。」
一歩。
前へ出る。
「お前は何も分かっていない」
低い声。
「パラドは」
「ただのウイルスじゃない」
「人々の命を守る」
「一人の存在だ」
レウコイドは鼻で笑う。
「現実を見ろ」
「奴はもう動けない」
「意思もない」
「……何だと」
低く漏れた永夢の声。
その瞬間だった。
永夢は弾かれたように駆け出す。
「永夢!」
貴利矢の声が響く。
「待て!」
飛彩が叫ぶ。
だが、永夢の足は止まらなかった。
「パラドを返せ!」
一直線にレウコイドへ向かう。
レウコイドはゆっくりと永夢へ視線を向ける。
その瞬間。
パラドの瞳が――白く光った。
「愚かな」
次の瞬間。
片腕を軽く振り払った。
「っ――!」
身体が宙に浮く。
そのまま勢いよく病室のベッドへ叩きつけられた。
「永夢!」
貴利矢が駆け寄る。
「がはっ……!」
息が詰まり、永夢は激しく咳き込む。
飛彩はすぐに永夢の前へ立つ。
その視線は、白く光る瞳の”パラド”を鋭く見据えていた。
病室の空気が、一気に張り詰めた。
病室に沈黙が落ちる。
永夢はベッドに手をつきながら、ゆっくりと顔を上げた。
目の前にいるのは。
間違いなくパラドの姿。
なのに。
そこにいるのは、パラドではない。
「……」
レウコイドは何も言わず、腕を上げた。
その手には。
バグバイザー。
「っ!」
飛彩が目を見開く。
「伏せろ!!」
次の瞬間。
銃口から光弾が放たれた。
轟音とともに、一直線に永夢たちへ迫る。
「永夢!」
貴利矢は反射的に永夢の腕を掴み、そのまま床へ引き倒した。
光弾は二人の頭上をかすめ、そのまま病室の壁へ直撃する。
――ドォンッ!!
壁が大きく抉れ、破片が辺りへ飛び散った。
飛彩も身を翻し、間一髪で直撃を免れる。
「……っ」
貴利矢は永夢を庇うように抱えたまま、ゆっくり顔を上げる。
その視線の先では。
白く光る瞳のパラドが、無表情のままバグバイザーを構えていた。
その姿は、もう仲間として知るパラドではなかった。
永夢は悔しそうに拳を握る。
「僕は……」
「分かってる」
貴利矢が言葉を遮る。
「戦いたいんでしょ」
「でも今は」
「…分かってます」
永夢は真っ直ぐ答える。
飛彩もレウコイドを睨みながら言った。
「永夢」
「今のお前がやるべきことを考えろ」
永夢は一瞬だけ目を伏せる。
拳を握る。
戦いたい。
パラドを助けたい。
でも。
今の自分にできることは、別にある。
「僕は……」
ゆっくり顔を上げる。
真剣な眼差し。
飛彩は何も言わなかった。
ただ、その判断を受け入れるように小さく頷く。
永夢は病室の扉へ向かう。
歩く。
速くはない。
まだ身体は本調子ではない。
それでも。
今の永夢に出せる精一杯の速さで。
病室を出ていく。
しばらくして。
廊下から声が響いた。
『ここは危険です!』
『すぐに避難してください!』
『落ち着いて移動してください!』
その声を聞いて。
貴利矢は小さく笑った。
「……やっぱり永夢だね」
飛彩も視線だけを扉へ向ける。
「……ああ」
そして。
二人は目の前の敵へ向き直る。
「いくぞ」
「ああ」
ガシャットを構える。
その時。
病室の扉が開いた。
「……何の騒ぎだ」
低い声。
飛彩と貴利矢が振り返る。
そこには。
大我が立っていた。
一歩、病室へ入る。
そして。
眉をひそめた。
病室とは思えない光景だった。
壁には破壊された跡。
床には倒れた椅子。
医療機器もいくつかが移動し、静かなはずの個室は戦場のようになっていた。
大我はゆっくりと視線を動かす。
そして。
その先に立つ存在を見る。
パラド。
……いや。
姿は同じでも、何かが違う。
白く光る瞳。
まとわりつく異様な気配。
「……」
大我の表情が険しくなる。
飛彩は短く答えた。
「パラドが」
一拍。
「レウコイドに乗っ取られた」
「詳しい説明は後だ」
大我の目が細くなる。
視線をレウコイドへ向ける。
大我の表情が変わる。
そして。
ガシャットを握る。
「……そういうことか」
大我はガシャットを握る。
飛彩も構え直す。
貴利矢は静かに息を吐き、ガシャットを手に取った。
三人が並ぶ。
目の前にいるのは、仲間の姿をした敵。
それでも。
取り戻すために。
三人は同時にガシャットを構えた。
――戦いが始まる。
コメント
1件
うわあ……重い。心臓がぎゅってなったよ。 パラドの身体なのに、中身がレウコイドになってるの、すごく辛い。永夢くんが「パラドを返せ!」って叫んだところ、もう胸が痛すぎる。 それでも自分にできることを選んで避難誘導に行く永夢くん、本当に強いなって思った。飛彩さんと貴利矢さんと大我さんが並んだラスト、めっちゃ熱かった🔥 つばささんのこういう“奪われた”感じの描写、毎回刺さります。続き、ちゃんと読みますね🤍