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「それでは自己紹介をしましょう!出席番号順でやろうと思うので、1番の一ノ瀬さんからお願いします。」
1番ってこういう時に損なんだよなあ…
「一ノ瀬羽菜です!えっと、音楽が好きです!一年間よろしくお願いします!」
ぱらぱらと拍手が起こる。
「ありがとう。次、2番の大森さん。」
「大森元貴です!音楽が好きで、2年の若井滉斗と3年の藤澤涼架とバンドやってます!よろしくお願いします!」
さっきよりも大きな拍手が起こる。
「大森さんは有名なバンドで芸能活動していますので、そんなことする人はいないと思いますが、うちの高校に通っていることを拡散したりはしないようお願いします。次、3番の神田さん。」
「次、4番の木下さん」
そんな感じでホームルームが終わり、下校時刻になった。
「元貴〜!帰ろ!」
滉斗くんと涼ちゃんがやって来た。
「元貴くんバイバイ!また
明日ね!」
リュックを背負おうとすると、
「え?羽菜ちゃんも一緒に帰ろ?」
ん?私の聞き間違いで無ければ、確かに「一緒に帰ろ」と聞こえた気がするよ…?
男子と一緒に帰るってことは付き合ってるとか、つまりそういうわけで、いや、私と元貴くんは友達だけど!
「え、いいの…?」
思わずそう問いかけてしまった。
「当たり前じゃん!」
元貴くんにそう言われ、満面の笑みを向けられると、もうそれ以上何も言えなくなった。
「じゃあ、帰ろっか。」
橙に染まったの下を、四人で他愛もない会話を交わしながら歩く。
「ねぇねぇ、LINE交換しよう!」
「うんっ!」
「俺も!」
「僕も!」
通知 motokiが友達になりました
通知 滉斗が友達になりました
通知 Ryoが友達になりました
「OK!」
「涼ちゃんってLINEの名前Ryoなんだね。」
「最初はRyokaにしてたんだけど、女子と間違われるからやめた笑」
「ね、羽菜ちゃんの家ってどの辺?」
「そこ右に曲がって、進んだ先にあるマンション!」
「え、まじで?もしかしてその裏にもういっこマンションある?」
「あるけど…?」
「そこ元貴ん家だよ」
「そうなの?!」
「あ、俺と涼ちゃんこっちだから」
「滉斗、涼ちゃん、ばいばーい」
「バイバイ!」
「また明日ねー!」
滉斗くんと涼ちゃんが帰って、元貴くんと二人きり。
教室でも二人で話してたはずなのに、なぜかドキドキして、何話せばいいかわからないよ…
「羽菜ちゃんってJAM’Sなの?」
そんなことを考えているとふと降ってきた質問に慌てながら答える。
「そっ、そうだよ!」
「嬉しいな。好きな曲とかある?」
「んーと、我逢人とフロリジナルとキコリ時計とPart of meと…」
「多っ、笑 キコリ時計とか我逢人知ってるんだ!」
「うん!どの曲も大好き!」
「じゃあ1番好きな曲は?」
1番かぁ…、どの曲も大好きで選べないな…、でも今1番聴いてる曲は…!
「Speaking!」
「わかった」
「♪ねえ聞かせて 君の好きな歌はなに?」
「♪ねえ例えば このままどこかへ抜け出して」
大好きな歌声が私のすぐ隣で響いている。
画面越しでみるより、隣にいる元貴くんはもっとかっこよくて。
ずっと聴いていたい。一曲がとても短く感じた。
「♪僕には教えてよ」
観客は私だけ。私だけのために歌ってくれた元貴くんへ、精一杯拍手を送る。
「羽菜ちゃん家ここだよね?また明日ね、バイバイ!」
「うん、バイバイ!」