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私はずっと、この男が大嫌いだった。
なんの面白みもないことを突然言い出したと思ったら高らかに笑い出しては止まらなくなる、周りの冷厳な視線と駆け巡った寂寞なんてないみたいに彼は笑い転げた
かと思えばふとした拍子に急に顔付きが大人へと豹変する、そして物悲しい表情で虚空を見つめては静寂を噛み締めるのだ。
「……なんであいつはあんなに呑気で居られるんだ。下手したら死ぬのに、死ぬのが怖くないのだろうか…」
「そんな人間、いませんよ。」
それが変わったのは、つい最近。とある作戦中のことだった。無機質なモニターが映し出したのは計画に邪魔な組織を殲滅中のゴーゴリ
ただ、いつもと変わらず乾いた笑い声を放っては弾丸を振りまいて真っ赤な花を咲かせる。それだけの光景だ
しかし、ドストエフスキーの発言が何か引っかかった
「………え、」
「彼、躁鬱病ですよ」
「鬱病の一種で短絡的な行動を取り活発になる躁と鬱状態の2つが繰り返す、1型です」
頭を殴られたような衝撃だった。ただの変な奴、と思っていたがそれが病気によるものだとしたら途轍もなく居た堪れない気持ちになった。
彼は本当に笑いたかったのだろうか
薄っぺらな同情擬きだが、彼の事がどうしようもなくほおっておけなくなった
彼がドストエフスキーを殺そうとするのも、破滅願望と具現化できない感情の濁流のせいな気がして夢を語る彼を直視出来なくなった
「シグマ君、君がお菓子まで用意するのは珍しいね。そんなに私の事を待っていてくれたのかい?」
「嗚呼、」
君が愛するドストエフスキーに私はなってあげられないから、救うだなんて大層なことは言えない。
だからこうして彼の居場所になるのが私のやるべきことだと思う
「何時でも来ていいからな、待ってる」
硬直する彼の体を強く抱き締めた。跳ね上がる鼓動は生の香りを強く放っていて、彼は瞳孔を剝いて私を見つめていた