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「ここに来た理由ですか…他の国に会いたかったからですね」
「そう、でも僕じゃなくてよくない?」
推しだからと今行けそうな国がここだけだったからな…それをひっくるめて返した。
「いえ、ここが良かったんです」
「なにもないのに?意味わかんない」
そう言うと彼はそっぽむいてしまった。それでもそばにいると、話しかけてきた。
「ねぇ、いつまでここにいるの」
「そうですね…船がいつ出るか不明ですからわかりませんね」
「そう」
また黙ってしまった。どうしたものかと考えていると、大変なことを思いだしてしまった。
「どこに泊まるか、考えてませんでした」
「馬鹿なの?」
「酷いですね。でもどうしましょうか、初めてきたので泊まれる場所なんて知りませんし…」
「一緒にいた人に聞いたら?」
「それが、どこにいるかわからないんですよ。適当に歩いてきたせいで戻り方もわかりませんし」
「ふーん」
「それで、もしよければ泊まらせていただけませんか?」
「は?馬鹿なの、初対面の人を泊めるわけないじゃん」
それはそうか。でも寝床は確保したい。何かいい案は…よし、これだ。
「あら…ではこれはどうですか?泊めてくださったら、定期的に物資を運ぶことを約束します。色々なものが伝わって、国にとっていいことだと思いますよ」
「…わかった、約束守ってよ」
「もちろんです、必ず守ります」
約束したはいいが、まだそこまで権限はないからな…聞いた話だと明日に船が出るらしいし、そこで帰って説得かな。うまくいくといいけど…
話が終わると、アイスランドの家に向かうことになった。推しの家に入れるのはとても嬉しいが表情に出さないようにする。それにしても、道が険しくて疲れる。
歩き続けると、小さい小屋が見えてきた。
「ついたよ、早く入って」
「失礼します…」
中は机と布団、キッチンがあるシンプル(悪く言えば家具が少ない)な内装だった。
「なに、人の家をジロジロと見て」
「すみません、気になって…」
「そういえばご飯だけど、野菜はあるから勝手に食べておいて。僕は出かけてくるから」
「わかりました」
家に泊まらせてもらっているんだからご飯くらいは作るか。適当に野菜スープでも作ろっかな。
野菜を切って水の入った鍋の中に入れる。火をつけてじっくり煮込む。そういえば、羊肉をいれるとアイスランドの伝統料理のキョットスーパになるらしい。今は羊肉がないけど。
20分ぐらい煮込んでいると、扉が開いた。帰ってきたようだ。
「ただいま…何作ってるの?」
「野菜のスープです。それは?」
「羊の肉、貰ってきた。使う?」
運が良いな。これでキョットスーパが作れる。
「いいんですか?使わせていただきますね」
アイスランドから羊肉を受け取り、切って鍋に入れる。さらに煮込めば完成だ。
「アイスランドさん、できましたよ」
「…僕、欲しいって言ってないけど」
「泊まらせてもらっているので、ご飯くらいは作りますよ」
「そう…」
皿に盛り付け机に運ぶ。スプーンを渡して一緒に食べる。
「どうですか?」
「べつに、悪くはないよ」
「それはよかったです」
思ったより美味しいな。味も濃くないし薄くもない、ちょうどいい。それ以降、会話はなく無言で食べている。正直に言うと気まずい、でも話せることがない。
「ごちそうさま…おいしかった」
小さい声だったが美味しいと言ってくれたようだ。
「お粗末様でした」