【閲覧注意⚠︎】この小説はnmmnです。
nmmnが苦手な方やタグの意味が分からない方は一度ご確認の上、再度閲覧をするかのご検討をお願いします。
又、
この小説は作者の妄想・フィクションです。
ご本人様(キャラクター等)には一切の関係・関連はありません。ご迷惑がかからぬよう皆で自衛をしていきましょう!
閲覧は自己責任です。
※その他BL要素有り( 🟦×🏺)
今一度ご確認の上、ご理解ご了承頂ける方のみ本文へお進みください🙌
ご確認ありがとうございます!!!
それではどうぞ〜🫶✨
🏺『』その他「」無線「”○○○”」
『アオセン頼む!、この通りだッ!』
「いやどの通り??」
ジリジリとアスファルトから熱を感じるこの季節、まさにザ・サマーという言葉が良く似合う暑さがここ一ヶ月…いや、もっと前から続いていたのかも知れない。
そんな暑さに耐えかねて、つぼ浦匠はドサリと膝を着いた。
そのままズルズルと身体が溶けて、つぼ浦はうつ伏せのままチラリと顔だけを上げる。
両手の平を地面にくっつけて、さながら一人組体操のようであった。
「アザラシ…?、」
『違ぇぜアオセン。アンタも熱でやられちまったんじゃねぇのか?』
青井はつぼ浦を見下ろしながら、仕方なしに本題を話せと促す。
「で?、何を頼むって?」
『あぁ。それなんだが本当に良いのか?』
「お前から言ってきたのに?、てか要件を言ってくれる?」
青井とて暇じゃない。
昼を過ぎてだいぶ涼しくなった方ではあるが、外にいればそれだけで体力が自然と奪われる。
ぶっちゃけ暇なのは良いが外に居続けるのが嫌なのだ。
『じゃあ言うぜ。アオセン、俺を家に泊めてくれ』
「はい??」
『夜がクソ暑すぎて耐えられねぇ』
「……あ〜、あれだっけ。なんか街中で困り果ててる歪みのやつだっけ?」
『その通りだ』
青井の頭の中には、以前から問題視されていた”電気供給のアンバランスさについて”のアナウンスがふわりと過ぎる。
「民間人の家に優先的に電気通して、大型の建物にはソーラーパネルとかつけて…、確かそれでしばらく補ってくれとかなんとか、」
『そのパネルっつーやつが全く働かなくてなァ、勤務中はギリ稼働してるっぽいんだが、、仕事終わりの本署はガチでやばいぞ』
「やばいんだぁ…、え、蒸し焼き?」
『石焼き芋だぜ』
「もはや焼けてる(笑)」
クスクスと笑う青井にムッとした表情を浮かべて、つぼ浦は言葉を続ける。
『アンタらには家があるかもしれんが、生憎俺にはアパートの一室もねぇからな。この恩は後で必ず返すから、俺をあのバーベキューコンロの上からすくい上げてくれ』
「え、アパート無くなったの?」
『使わな過ぎて退去されてたぜ』
これはロスサントスあるあるの1つで、新規住民が多くやって来るこの街では色々と消失するものが多々存在するのだ。
食べ物だって、一時期は思い出と共に仕方なく抹消されたものが数多く存在する。
『だから頼むアオセン、俺を家に泊めてくれ』
「えぇ〜、、…。俺けっこう部屋の中ゴチャついてるけど。…あぁ、じゃあ泊めてあげるからさ、お前が掃除してよ」
『俺がか??』
「うん(笑)、お前が」
よいしょと重い腰を下ろして、青井はつぼ浦を間近で見つめる。
「ついでにメイドにでもなる?」
『ぜってぇ嫌だが?』
「鍵渡す。勝手にスタッシュの飯を食ってよし。追加購入も可とする。領収書はちゃんと貰ってね?」
『ぐッ…、……、いや、まだ足りねぇな』
「風呂も使っていいよ。マジで掃除してくれるなら、それに見合った報酬を渡します」
クルクルと人差し指で空を転がして、そのままビシッとつぼ浦に向けて指を差す。
「何かとお金がかかる特殊刑事課さん。どうなんですかぁ?、この条件」
『ッ、っ…、好条件、だが…、メイド、冥土、冥土の土産…?』
「なんか違う意味になってるし(笑)」
夏の暑さでクラクラとする頭をフル回転させて、つぼ浦は青井の姿を見つめる。
「悪いようにはしないよ。だから…ね(笑)?」
ゆるい声色で言い放たれたその言葉に、つぼ浦は思わずコクリと喉を鳴らす。
額には汗がじんわりと浮き出て、そろそろ本気で限界だった。
「はやくはやく。俺も暇じゃないんだから」
差し出されたその手を軽く掴めば、青井はその手をぎゅっと握り返して立ち上がる。
『ぁ、』
「え?」
その瞬間に、つぼ浦の意識はプツリとどこかへ飛んで行った。
『……、…ン、…、っ…、……ふぁ…、…、?、』
ひんやりとした空気が肺に取り込まれ、つぼ浦は心地よく目を覚ます。
静かに目を開いて、きょろりと見える範囲の景色を眺めてから…本当の本当に、今世紀最大に上半身をゆっくりと起き上がらせた。
『ッ……、スゥーー…、ぁー…どこだ、ここ…』
ボソリと小声でそう呟いて、つぼ浦はもう一度部屋の様子を眺める。
『…いや……、やばいだろ、これ』
見える範囲にごちゃりと広がる物モノもの。
自分がいま居るところが寝室のベッドなのであれば、そこから見えるローテーブルには資料の山。
そのローテーブルの下には飲みきって放置された缶コーヒー。
それから灰色の絨毯に広がる見開き放置の参考本、衣服、その他諸々。
『全部仕事に必要なもんに見えるが…、それにしてもだなァ…、』
真面目な人間が疲労困憊になると出来上がる魔の巣窟といったところだろうか。
一周まわって思い浮かぶ言葉は”綺麗に汚い…”その一言に尽きる。
『……、』
ベッドの上だけは事前に頑張って整えたのか、つぼ浦は知らぬ間にそれはそれは心地よく眠りを提供して貰っていた。
『はぁ〜…、仕方ねぇなァ、』
しばらく無言で悩んでから、肌触りの良い毛布をグッとひっぺがして立ち上がる。
コキリと首を鳴らしてしゃがみ込めば、つぼ浦はまた無言でまずはプリントの山に手を伸ばした。
まとめてまとめて、トントンッと卓上で整えて、次いでにローテーブルの下にある缶類たちをゴミ袋に入れ込む。
ガサゴソとしばらく部屋の物を整理して、それから“よしっ”と満足気に言葉を漏らした。
『まぁまぁ綺麗になったんじゃないか?』
足の踏み場がしっかりと確保された部屋を眺めていれば、そのタイミングでガチャりと扉が開かれる。
「つぼ浦〜、お。さっそく掃除してくれたの?」
『ん。アオセ…、?、アオセン?…、誰だテメェ』
「青井らだおで合ってるよ(笑)。これが俺の素顔だからね?、さすがに覚えてるよね??」
少々困惑気味の青井が一瞬だけヘルメットを被り、またパッと素顔をつぼ浦に晒す。
『あぁ。じゃあやっぱしアオセンだな』
「アオセンだよ。お前こわぁ(笑)…」
『それほどでもねぇぜ』
「別に褒めてないよ」
軽くツッコミを入れてから、青井はゆるゆるとつぼ浦に近づく。
「それで?、熱中症患者のつぼ浦匠くん。体調はいかがですか?」
『体も軽いし。随分と良くなったみてぇァだッ、』
悠々とそう述べるつぼ浦にピシッとデコピンをかまして、青井は子どもに言い聞かせるかのように呟いた。
「体調悪いなら最初からそう言いなさい。無理して職場に入り浸るな。お前は特殊刑事課だろ?」
『゙ん、そうだけどよ…、』
「だけどじゃないよ全くもう…。まぁ、これだけ部屋を綺麗にできるなら、もう動けるってことね?」
『あぁ、世話をかけたぜ』
弾かれたおでこを軽く自身の手でさすりながら、つぼ浦はぺこりと会釈する。
「本当にね。……ふぅ。じゃあ建前はこれくらいにして、本題に移ろうか」
『゙あ?』
真面目な上司モードだったその声色がスっと抜け落ちて、青井の口調は心做しか軽くなる。
「てことで、今日から家で寝泊まりをしてもらいます。その為にはお掃除をする事が絶対条件ね?、それ相応の対価も払うよ。それでこれはお前の制服ね?」
『制服だァ?』
ガサゴソと紙袋を漁る青井を訝しげに見つめて、それでも青井は言葉を続ける。
「そう。お前の服を埃まみれにさせる訳にもいかないし…、制服…っと。はい、これね」
『゙ンッ、?、……おいおい、冗談きついぜアオセン』
「冗談じゃないから(笑)。さっさと着替えな?、つぼ浦」
押し付けられた制服という名のメイド服をギュッと握りしめて、青井とつぼ浦の視線はバチりと絡み合う。
『俺は着ねぇぞ』
「いーや。着てもらう。てか着ろ」
『断る』
「断るな」
しばらく無言で見つめあって、最初に行動を起こしたのはつぼ浦だった。
『……。、゙ッ、なッ?!、』
「甘いあまい(笑)、お前の行動なんてお見通しだよ」
正面突破で逃げ出そうとしたつぼ浦の身体をガシリと捕まえて、青井はその身体に腕をまわす。
ドサリとベッドに落とされて、つぼ浦は目をまん丸にしたまま息を飲んだ。
「お着替えも出来ない赤ちゃんなら、俺が着替えさせてあげようか?」
『はぁッ?!、っ、ちょ、脱がすな脱がすな!、』
「脱がなきゃ着れないでしょ〜(笑)」
“はいはい、いい子だねぇ〜”と棒読みで呟いて、青井は派手なアロハシャツを剥ぎ取る。
『マジでテメェっ、ぐッ…、、』
ジタバタとするつぼ浦の腹回りを軽く撫でて、そのままスルりとオレンジ色のシャツの下に手を差し込んだ。
「お〜。鍛えてんねぇお前。さすが特殊刑事課」
力こそ全てのはずのつぼ浦匠が、今は一回り小さい青井らだおに組みほどかれている。
「シックスパックってやつ?」
『ッ、っ…、さ、触んな、クソが。、こりゃ何の罪で切符切っても許されるよな゙ぁ?、ッ…、』
指先でゆるゆると凹凸をなぞられて、つぼ浦の口調が若干弱まる。
それでも尚、強気な言葉は健在で…減らず口なつぼ浦の言葉に耳を傾けつつも、青井はゆるりと笑みを浮かべてその服を捲り上げた。
『っ、』
ピクリと身体が震えて、青井は胸下の辺りでその手を止める。
「…ねぇ、自分で着替える?。それとも、俺が手伝う?」
最後の質問だとでも言うかのように、青井は軽く口角を上げてそう述べた。
「どうしよっか(笑)?」
『ッ……、くっそ…、鬼が、、』
果たしてつぼ浦の答えは……?
ガチャりと扉が開く音が聞こえ、つぼ浦はチラリとそちらに目を向けた。
「ただいま〜。っ、たははっ(笑)、似合ってんじゃんつぼ浦。いやぁ、いつ見ても面白いねぇお前は」
『見せもんじゃねぇぞ。さっさと風呂入れジジイ』
「死にたいの?」
『ッスー…、まぁ、先に風呂か飯かを選ぶ権利はあるぜ。どっちにする?』
「じゃあご飯食べる。もしかして作ってくれた?」
『あぁ。今日は非番だったからな』
そう言って、慣れた手つきでご飯の支度を始めるメイド服の男。
そう、つぼ浦匠は青井の言葉に抗えず、結局はメイド服に渋々腕を通したのだった。
膝下まであるゆるふわなスカートに、ふくらはぎを覆うのは白いソックス。
へそから首元まで連なっている白いボタンはシックに雰囲気を固めてくれて、要は落ち着きのあるヴィクトリアン調のメイド服を着ているのであった。
「しばらく経つけど、その制服どう?。慣れた?」
『慣れるわけ無いじゃないっすか。マジできちぃ』
「サイズが?」
『アホぬかせ。さっさと手ぇ洗え』
「は〜い(笑)」
テキパキと準備を整えて、二人はゆっくりと席に着く。
「いただきまーす」
『おう。いっぱい食え』
メイド服のつぼ浦と素顔の青井。
どう考えても異常な状況のはずなのに、何故だかストンと落ち着いてしまっている空間が二人を優しく包み込む。
しばらくカチャカチャと静かに食事をして、それからなんとはなしに青井が呟いた。
「ん。そういえばさ、」
『おう』
「俺の部屋着のさ、えっとー…あれだよ、無地のグレーのシャツ。どこにあるか知ってる?」
“さっき着ようとしたら無かったんだよね”と青井は付け加える。
『場所は分からんが…、無いなら多分洗濯にでも出してるんじゃないか?』
「床に置いといたのに?」
『第一前提に床に置くものじゃねぇし。そうなら100%俺が洗濯機にぶち込んだぜ。多分な』
「そっかぁ、割と厳しい」
『アンタの”床に置く”っつー定義は、ぐちゃぐちゃに落とすってのが当たり前だからな』
「だって着れればいいし。別に綺麗だし」
『俺が床を掃除してやってるからだろ』
「そうそう。ありがとね」
調子の良い青井の言葉にため息を漏らして、つぼ浦はご飯をおかわりする。
「さっきの山どこ行った?、」
『全部俺の胃の中だぜ』
「はぇ〜、まぁよく食べる子は育つか…。じゃあいいか」
青井はもう一回り大きくなったご飯の山を見つめて呟く。
『、アンタいっつもそうだよな。俺のことガキ扱いしやがって』
「ン。だって子どもでしょうよ。お前は」
『二十四歳成人男性だが?』
「はいはいカチンとしない。そういうところがガキなのよ。…あ、チーズ入ってる」
野菜の肉巻きにとろりと広がるチーズの甘さ。
『お、そりゃ当たりだぜ』
「えぇ(笑)、そんなドキドキワクワク要素も入れてんの?」
『普通に作ったらつまんねぇだろ』
真面目なのか不真面目なのか、つぼ浦の料理は大前提で美味しい。
そして時々ロシアンルーレットのような要素を取り入れてくる。
「ふは(笑)、じゃあこれは今日のご褒美ね?」
そう言ってつぼ浦の顔に当たり付きの肉巻きを箸で寄せる。
『っ、アンタが食えばいいじゃねぇか』
「いいから食べなよ。ほら、あーん」
童顔な顔がパカりと口を開いて、さっさと食べろと催促をする。
その様子につぼ浦は目をぱちぱちとさせ、ぎこちなく首を傾げてからキュッと口を結ぶ。
「ね、早くしてくれる?」
『、ッ…、…、ぁー…、゙ん、』
控えめに開かれたその口元に食べ物を押し込んで、青井は満足気に目を細めてはクスクスと肩を揺らした。
「おいしい?」
『ン…、。当たり前だろ、俺が作ったんだからな』
「それもそっかぁ」
『…おう。そうだぜ』
素直に納得する青井にまた困惑しながらも、つぼ浦はもぐもぐと咀嚼を繰り返す。
デザートはコーヒーゼリーで、ミルクをくるりと垂らしてから今日も美味しく頂いた。
「コーヒーゼリーの期限って3日〜5日らしいよ」
『へぇー……。なぁアオセン、これ手作りだったよな?』
「うん。そうだけど」
『俺が此処に寝泊まりしてからちょうど5日目だぜ?』
「うん。じゃあ今日中に食べきらないとね」
割と大きめなタッパーに残っているゼリーを眺めて、二人は苦い顔を浮かべた。
『無理じゃないすか?、アオセン』
「あー……でもさ、この街で作った食べ物とかは腐らないし…。大丈夫、、なんじゃない?」
『…てことに、しときますか』
「うん。そうしよう」
次に食べる時はジャンケンをして、勝ったら漢気で毒味をするという約束を交わした二人であった。
グレーのTシャツが無い。
愛用している靴下が片方無い。
使用済みのタオルがどこかへ消えた。
『まさかとは思ったが…、やっぱし此処にあったか』
バサりとひっペがした毛布と枕のその下に、ついに見つけたワンピース。
疲れきってところ構わずぽいぽいと置いてしまう癖は未だに治っておらず、青井のベッドには“ないなぁ…”とボヤいていたそれらがしっかりとある。
『ここにあるっつー事は、タオルとTシャツ以外は未使用だな』
乾燥機でカラッカラに乾かした後、つぼ浦は必ずチェストに衣服を戻していた。
相棒の靴下はもちろん片方しか無かった為に使用は出来ず、その他で見つけた物たちも古着屋のような強い柔軟剤の香りが鼻を抜ける。
床に散りばめられていた衣服類を一斉に洗った時の残り香が、未だに薄れること無く残っているようだった。
『初日の洗濯機のフル稼働具合はやばかったもんなァ…、分量間違えて脱衣所の床を泡まみれにしたっけか』
“そりゃぁ匂いも強く残るわ…”と少しだけ反省して、つぼ浦はテキパキと整理を始める。
青井の寝室は意外と広く、意外とオシャレで、そして予想以上にごちゃりとしていた。
まるでつぼ浦が掃除を諦めないで行える程度のごちゃつき具合、掃除のしがいがあるシンプルな汚部屋だった。
『まぁカビが生えてたり、飲み水放置とか…、そういうガチでやべぇ感じじゃねぇからいいけどよ』
後に気がついた事であるが、初日に置かれていた大量の空っぽ缶コーヒーの行く末は…コーヒーゼリーを作るための材料だったらしい。
そうなってしまえば残りの掃除など、洗濯や整理、拭き掃除や次いでに飯作りで貢献ポイントを稼ぐ程度しか行動パターンは限られてくる。
『こいつとこいつを片付けて…、よし』
いつもの日常となり始めたお片付けをしっかりと行い、つぼ浦は使用済みのTシャツとタオルを両手に抱え込んだ。
『…、……。゙ン〜…。』
心地の良い感触のタオルとグレーのTシャツ。
手元にあるその布たちが妙に気になって、ほんの少しの出来心でおずおずと自身の顔に寄せてみる。
低く唸ってから“すぅ…”と臭いを嗅いでみれば、爽やかな柔軟剤の香りと煙草の匂いが鼻をついた。
『……すぅ、、…。っは…、…゙あ?、…何やってんだマジで…、』
ジクジクと胸の奥を刺激してくるその香りに、つぼ浦は酷くその行動に対して驚きと後悔の念を抱く。
中毒性のあるドラッグの様に、その匂いは自分にとって落ち着きをもたらしてくれるものだと気がついてしまった。
『……。いや、洗濯だ洗濯、そう。洗濯するぜ』
ふわりと一瞬だけ手持ちに収めるかどうかを悩んだが、ここで踏みとどまらなければ人としての何かを欠損してしまうと直感で感じる。
チラリと時計を見てみれば、まだ警察勤務をしているであろう青井の帰宅とは程遠い時間であった。
『、……、まぁ、どうせ洗うなら…、別に…、』
犯罪級にグレーな甘い思考が、つぼ浦の脳をぐるぐると駆け巡る。
“どうせ帰って来ないから、どうせ直ぐに洗うから”そんな都合の良い言い訳ばかりがつぼ浦の思考を嫌に安心させた。
『……少しだけ、…。休憩、するだけ、』
言い訳まがいの言葉を並べて、つぼ浦がドサリと青井のベッドに座り込む。
そのままくたりと身体を横に倒して、しばらくはずっと緩い呼吸音がその部屋に広がりを見せていた。
吸っては吐いて、少しタオルを鼻先に寄せて、なんだか堪らない気持ちになって…ぎゅっと身体を縮める。
『すぅ……、はぁ…、…、俺、熱でもあんの か?、……なんかあちぃな…』
ボソリとそう呟いて、首元の白ボタンを上から3つほど取り外す。
『すぅ…、はぁ…、、。…アオセンの、匂い、』
変態じみた事をしているのは重々承知の上だったが、肺に取り込まれるその香りが麻酔のように眠気を誘った。
ここで目を瞑っては危険だと分かっていても、トロンとした目元は次第にうつらうつらと瞼を閉じていく。
『すぅ…、っ…、……、、すぅ…、、』
もぞりもぞりと身を捩って、つぼ浦はそのままこくりと意識を微睡みに委ねてしまった。
…………
……
…
「つぼ浦〜、…ねぇつぼ浦ー…、そろそろ起きてくれる?」
『ン、ん……、゙ンぅ……、、』
ゆさゆさと身体に響く柔らかい振動。
肩に置かれているその手を情景反射で緩く掴めば、青井が困ったような笑みを浮かべて口を開く。
「夢でも見てるの?、まだ眠い?」
『ン…、アオセ…、…゙ンー…、、』
寝ぼけ眼な瞳が一瞬だけ青井を捉え、しかし眠気には抗えないのかまた目を瞑ってしまう。
鼻から抜けていく呼吸音を聞き届け、青井はいくら声を掛けても無駄だという事を理解した。
「疲れちゃったのかな…。…ぁ、というかこのTシャツとタオル、…あ〜、ベッドにあったのか。なるほどね…、」
ないないと言っていたものは灯台もと暗しで、部屋の掃除をしていたつぼ浦が見つけてくれたのだろう。
「…でもなぁ、…お前それ…、、持ち方はどうにかならなかったか?」
胸にぎゅっとそれらを抱え込んで、なんなら顔に半分埋めてスヤスヤと眠り続けるメイド服の男。
最近はもう服のことなど気にする素振りもなく、堂々とシックなメイド服を着こなして普通に家事掃除をしてくれている。
「……まぁそもそも俺が悪いんですけどね?、でもお前もお前だよ?、それは枕じゃないからね。はぁ…、洗濯機にぶち込んでおくからさ。それ離してくれる?」
自由な片手でそーっとTシャツ諸々を引き抜けば、途端に現れたゆるゆるな胸元。
寝ずらさで緩めたのか、ぱかりと開かれたシャツの中から鍛えられた胸筋がちらりと覗く。
「………いや、いや別に。……、」
男の身体になどミリも興味は湧かないが…、気になる相手の身体となれば、また話は別だ。
「………、スーッ…、、んーん。だめだめ、俺はそこまで馬鹿じゃないよ。うん、……まぁでも、添い寝くらいなら良いか。俺のベッドだし」
ストンと心を落ち着かせて、青井はつぼ浦の横へと寝転がる。
握りしめられた左手はそのままに、小さな欠伸を漏らして身を寄せた。
「…つぼ浦、おやすみ」
これが許されるかは分からないが、静かに静かに目を瞑った。
「ねぇつぼ浦〜」
『゙ッ!、゙あ?、なんだ?』
「めちゃくちゃびっくりするじゃん(笑)、どうしたの?」
『俺はいいからアンタの要件を言ってくれ』
「ン、そう?。実はさぁ…」
『強制休暇か?』
「え?、なんで分かったの??」
不思議そうに首を傾げる青井の様子にため息を漏らして、つぼ浦はソファにもたれかかる。
『普段ならこのニュースが始まる時間にアンタはもう居ないだろ。ノロノロ動いてっからそうだと思ったぜ』
「え〜…、よく見てるねぇ…、、」
警察業務の事務作業がだいぶ落ち着き、大型対応への参加をしようと思った途端にドクターストップがかかった。
青井にとっては良くあることなのだが、人に休めと言われなければ休まない…いや、休めない。
結局は努力次第でなんでもこなせてしまう人間だから、それならば自分が激務をこなして少しでも身内に楽をさせてやりたいと思ってしまう。
『どうせとんでもねぇ量の缶コーヒー机に並べて、それ見た後輩たちに運ばれたんだろ?』
「そうそう(笑)。俺さぁ全然元気なのに、救急隊に運ばれた瞬間“あぁそうか、じゃあ3日は自宅待機で”ってましろさんがねぇ…、、」
一瞬の目視で診察ができたとは思えないが、専門知識が皆無のつぼ浦から見ても…青井らだおは確かに疲れていた。
うっすらと隈ができているし、限界突破した人間特有のテンション高めな雰囲気が滲み出ている。
「家で休むのも良いんだけどさぁ、結局は出勤日と同じ時間帯に起きてきちゃってる訳だし…、うーん、つぼ浦どっか行く?」
『俺も今日は非番だが、どっかに行く気はないぜ』
「え〜意外。てっきり休日も飲食店巡りとかするのかと思った」
緩く笑みを浮かべる青井にチラリと視線だけを寄越して、つぼ浦は仕方なさげに”ポンポンッ”と自身の横の空白を叩く。
「?、どうしたの?」
『…、はぁー…、、…外出はすんな。休めと言われたら休むべきだと俺は思うぜ。……だから、…隣、座れよ』
ソファをポンポンッ…と再度叩き、仕方なさげにコキリと首を鳴らすつぼ浦。
優しさなのかなんなのか、忙しないニュースの事件報道をシャットアウトする為に、つぼ浦はピコピコとテレビのリモコンを操作して某配信サービスを画面に映し出す。
「朝から映画観る気?」
『ぐーたらすんならBGMは必要だろ?』
「まぁ確かに…、贅沢な使い方ではあるか」
常に何かしらの音を耳に通しておくのが好きらしい現代っ子の感覚に、青井はまぁそれならばと首を縦に振る。
隣にドサリと腰掛けて、適当に選んだB級のSF映画を流し見る。
「ふは(笑)、ねぇなんか初っ端からおかしくない?」
『特殊効果がチープなのも、B級映画の醍醐味だからな。…つかアオセン、真面目に鑑賞してないでさっさと寝たらどうっすか』
「あ、これ寝落ちの為のやつ(笑)??」
青井がへらりと笑って問いかければ、つぼ浦は眉を片方吊り上げて不服そうな顔をする。
「ごめんて。寝るよねる。ありがとねぇつぼ浦、お前はいい子だねぇ〜」
グリグリとつぼ浦の頭を撫でてからボスりとつぼ浦の太ももに頭を置いて、そのまま静かに映画を眺める青井。
『ッ、ちょ、なんで寝っ転がってんだよ、』
「ん?、ダメなの?」
『だッ、…、くそ。さっさと寝ろ、労働基準法違反の常習犯が…』
「うわすっごいヤな言い方ァ〜…」
言いたいことが言えて満足気に鼻を鳴らすつぼ浦をよそに、青井はモゾモゾと身をよじらせて寝心地の良い場所を模索する。
『ン、…。』
腹に当たる温かみがじんわりと服越しに伝わって、なんだか胸がソワりとした。
「たは(笑)、この映画割と良作じゃない?」
『゙っ、いいから目を瞑れ。なにか?、頭でも撫でねぇと眠れねぇガキか?』
「ンー…そうかも。じゃあつぼ浦、よろしくね?」
『は?』
チラリと膝にいる青井を眺め、それからしばらくして意を決したかのようにつぼ浦の手が青井の髪に触れる。
『ッ、っ…、…はぁ…、、これでいいか?』
「うん(笑)。いい感じ〜」
整えられたその髪を手ぐしでゆるく梳いて、つぼ浦は無言で青井の頭を撫で続ける。
「人に頭撫でられるのって、結構気持ちいいんだね」
『…まぁ、そうなんじゃねぇか?』
「あ、てか今の見た?。あの男絶対死ぬよ、フラグ回収過ぎるもん。愛の言葉キザすぎ(笑)」
『おう、そうか』
「ぇ?、え?、ここでやるの?、わは(笑)…。え〜…?、どうするつぼ浦、めちゃくちゃえっちな展開になっちゃった」
『ン、そうか。…、…は?』
青井の頭を撫でるという現実に意識が持ってかれていたつぼ浦は、青井のココイチできゃっきゃとする言葉を聞いてやっと画面に目を向ける。
「ほらほらめっちゃえっち、え、やばいねこの映画」
映画の題名と今流れている物語があまりにもミスマッチ過ぎて、青井はケラケラ、つぼ浦はとっさに目を瞑った。
「あれ?…、あぁ。やっぱりダメだったかぁ、お前は本当にこの手の話題が苦手だね」
もぞりと青井が仰向きになって、俯くつぼ浦の頬を軽く撫でる。
『ッ、っ、』
「そのまま目を開けて?。そしたらきっと俺のことしか見えないから」
青井の言葉に恐る恐る目を開いて、その瞬間にオレンジ色の瞳と青色の瞳がぱちりと対峙する。
「怖かったねぇ、びっくりした?」
『…、いや、怖くねぇし、びびってねぇし』
「あっそう?。でもお前、冷や汗すごいよ(笑)?」
じんわりと汗が滲む頬を撫でて、おでこを撫でて、それから首筋にスルりと指を滑らせる。
『ンッ、…、。てめぇ、今わざと変な風に触ったな?』
「え〜(笑)?。それってどんな風?」
『なんかこうやって、くび、ッ……、』
同じ目に合わせてやろうとつぼ浦が青井の首に手を置けば、その瞬間に青井の方からつぼ浦の手に擦り寄って来てクスクスと笑う。
「ふは(笑)、ンー…お前の手はあったかいね」
『ッ…、っ、だまれ、』
「ぇ〜(笑)。辛辣すぎる(笑)…、あと、顔が真っ赤だよ?。つぼ浦」
ゆるく目を細めて笑う青井の姿から、目が離せない。
「ねぇつぼ浦、もしかしてさ…俺のこと好き?」
『、』
「俺は好きだよ。お前のこと」
話の展開が次から次へと流れていくB級映画のように、青井はぺらりと軽く告白をして欠伸を漏らす。
「お前の答えもいつか聞かせて。ッふぁ…、今はきっとキャパオーバーだろうし(笑)…、俺も眠くなって来ちゃったし…、」
うつらうつらとする青井は童顔も相まって本当に子どものようで、つぼ浦は何も言えずにただただその眠りに落ちる瞬間を無言で眺めていた。
『”4024フリーカ銀行強盗、増援を求めます”』
「“はーいヘリで行きま〜す”」
乾いた空気と少しだけ暑さが和らいだ季節の変わり目。
つぼ浦は今日も今日とて特殊刑事課の自由と笑いとはらぺこを満たす為にあっちへ行ったりこっちへ行ったり、時には真面目にインパウンドをしたり、とにかく特殊刑事課らしく一生懸命に働いていた。
『…。ぉ、来たな』
大きなヘリの影がつぼ浦を覆い、綺麗に着地したその人物はよたりと扉を開けて地に足をつける。
『やっぱしアンタだったか』
「俺以外に責任取れるやついないでしょう?」
狂犬の手網を握らされている優秀な警官は、鬼の被り物をパカりと外してふ〜っと息を吐いた。
「ンー…、それにしても暑いね」
『これでもだいぶ涼しくなったけどな。ボンネットの上で目玉焼き作れねぇし』
「はい(笑)?。お前作ったの?、目玉焼き」
『おう。どの車が一番早く焼けるか試してたんだが…、結局は黒いカラーの高級車が良いぜ。特にMOZUの車がおすすめだ。気晴らしにもなる』
「最低すぎ…(笑)」
真面目なトーンでおすすめをしてくるものだから、青井は苦笑しながらクスクスと肩を揺らしてつぼ浦の隣へと歩み寄る。
「はぁ〜(笑)。お前は本当に面白いね。頭良いのに頭悪い」
『゙あ?、そりゃ褒めてんのか?、貶してんのか?』
「ン。…どっちだと思う?」
ゆるく目を細めて青井がつぼ浦を見つめれば、つぼ浦はパチパチと高速で瞬きを繰り返してからすぐに視線を逸らす。
「なになに(笑)。拗ねたの?、ごめんてつぼ浦。ちゃんと褒めてるよ」
“ガキだなぁ〜”とふざけた調子でつぼ浦の頭をワシワシと荒く撫で、それから自身の額にツーっと滴る汗を服の袖で拭う。
「で?。犯人まだ?、いま取り込み中?」
『残念だったな。瞑想中だ』
「わーお。じゃあまだまだ終わらない感じだね」
それでも蔑ろにせず、ただただ律儀に待つつぼ浦を青井は本当に尊敬していた。
『…。増援呼ぶの早いと思ったろ。瞑想終わってから呼べって絶対思ったよな?』
「ンなこと思ってないよ(笑)。急に悲観的になるのやめて?」
つぼ浦は困ったようにポリポリと軽く頬を引っ掻いて、足元の影に視線を落とす。
『…いや、別にそういう訳でもねぇんだが…。その、…呼んだらアンタが来てくれるって分かってたし。…ちと、話したかったんすよ』
「話?、…え、目玉焼き?」
『んな訳ねぇだろ(笑)、ッ、たく…。そのー、゙あー、なんて言えばいいのか…、゙ンー…、…俺はそろそろ、メイド服を卒業するぜ』
突然のメイド服案件に、青井はポカッと軽く頭を小突かれた心地になった。
「え?、うん。それで?」
『順当に大型施設の電気供給も回復してるみたいでな。ほら、もう死人が出るほどの暑さでもねぇだろ?、だから、俺は本署に戻るっつー話で…、』
「うん、良かったね。…あとは?」
『゙あと、は…、スーッ…、、』
覚悟を決めたはずなのに、何故だか口から言葉が出ない。
『その…、えっと…、っ、゙ッ、ッく…、ッ、だァしゃらくせぇッ!、言えねぇけどそうなんすよ!、アンタなら分かんだろ!、わかるよなァアオセンッ!』
真っ赤な顔で青井の方へ言葉を投げかけ、つぼ浦は殴り掛かる勢いで青井の腕をギュッと掴む。
「え〜(笑)…、言ってくれなきゃそれは分かんないよぉ。…お前もあの時俺がちゃんと伝えてなかったら、ずっと分かんないままだったでしょ?」
同僚や先輩の枠を越えて、青井はつぼ浦を好いているとはっきり言葉としてつぼ浦の胸にその好意を刻んだ。
「俺も欲しいなぁ、そういうの」
『ッ、っ…、鬼が、悪魔が、ッ…、っ、』
じわりと涙ぐむつぼ浦の顔を盗み見て、青井は“(やっぱりだめかぁ)”と仕方なさげに笑みを浮かべてつぼ浦から一歩身を引く。
「まぁまた今度でもいいよ。ずっと待ってるし」
それに先程から無線で大型犯罪対応の上空部隊が足りなくて激困りしているらしいのだ。
つぼ浦には申し訳ないが、人手が足りないなら優先順位的に向かわなければならない立場にある。
『大型か?』
「うん。足りないんだって。行かないと」
悔しそうに離れたその手にコツンとグーパンで“元気だせよ”と合図を送り、青井はまた一歩つぼ浦から離れていく。
『、…、ッ…、。なぁアオセン、』
「ン?、なぁ゙にッ…っ!?、」
もう一度ギュッと握られたその腕は、つぼ浦の馬鹿力で更に二人の距離が縮まる。
青井の耳元にはつぼ浦の息がかかり、つぼ浦はそんな状況の中でボソリと何かを呟いた。
「ッ…、…、っ、っは(笑)、」
青井にしか聞こえない声量で、喉から必死に絞り出したその言葉は…青井の胸にしっかりと“すき”という好意を刻む。
『…、ッ…。冥土の土産だ。行ってきてください』
「ン。わかった。メイドのお土産ね?、帰りに新しいの買ってくる。行ってきます」
『゙ぁ?、なんか違ぇな。冥土だぜ?、メイドじゃねぇからな、ッ、てか、いま買ってくるって言ったか?、゙ぁ、おい、おいまてアオセンッ!、もうぜってぇ着ねぇからな!、゙ッ帰ってくんな゙ァ!、』
嬉しくなった青井の言動に翻弄されて、つぼ浦はアタフタとしながら飛び立つヘリを見上げる。
『ッ、くっそ…、ッ…、っ…、っはぁ…、言っちまった、、…ちゃんと、伝わった、よな、きっと、』
冥土なのかメイドなのか、つぼ浦は青井になんと告げたのか、その後の進展は二人のみぞ知る。
めいどの言葉[完]
コメント
5件

少し前から一気見しました!貴方の書く、甘めにいちゃいちゃしている二人が好きで好きで仕方ない状態です…。毎日の楽しみが更に増えました…!!!大好きです!