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#完全オリジナルストーリー
𝐀𝐘𝐀_

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𝐀𝐘𝐀_

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特別編
第一章 どこか様子のおかしい千弥
ある日の朝。
結城家。
「ちーちゃん、朝だよ。」
千景がいつものように部屋のドアを開ける。
「……。」
返事がない。
「ちーちゃん?」
ベッドを覗き込むと、千弥はくぅちゃんを抱きしめたまま起きていた。
起きてはいる。
でも、いつもなら「にぃに、おはよぉ」と眠そうに笑ってくれるのに、今日はぼんやりと窓の外を眺めているだけだった。
「おはよう。」
千景が優しく声を掛ける。
「……おはよう。」
返事は返ってきた。
だけど、笑顔がない。
(……あれ?)
千景は少しだけ違和感を覚えた。
「熱、測ろうか。」
「うん。」
毎朝の健康チェック。
体温は三十六・六度。
喉も赤くない。
脈も正常。
呼吸も落ち着いている。
「体調は大丈夫そうだね。」
「うん。」
「どこか痛いところは?」
「ない。」
「苦しくない?」
「うん。」
「気持ち悪くない?」
「だいじょうぶ。」
どれだけ診ても異常は見つからない。
それなのに。
千景の胸の中の違和感だけは消えなかった。
リビング。
「おはよう、ちーちゃん。」
遥が朝食を並べながら笑う。
「おはよう。」
千弥はいつもの席へ座った。
「いただきます。」
「いただきます。」
今日の朝食は、
・野菜スープ
・鮭
・卵焼き
・ご飯
・ヨーグルト
全部、千弥の好きなものだった。
なのに。
「……。」
箸が進まない。
「ちーちゃん?」
遥が優しく声を掛ける。
「おいしくない?」
「ちがう。」
「じゃあ?」
「……。」
少し考えてから、小さく首を横へ振る。
「わかんない。」
その言葉に、千景と遥は顔を見合わせた。
大学へ向かう車の中。
いつもなら、
「今日ね。」
「大学でね。」
と楽しそうに話す千弥。
しかし今日は。
「……。」
静かだった。
くぅちゃんを抱いたまま窓の外を眺めている。
「ちーちゃん。」
「ん?」
「眠い?」
「ううん。」
「大学、行きたくない?」
「ちがう。」
「何かあった?」
「……。」
答えられない。
「ごめんなさい。」
ぽつりとそう言った。
「謝らなくていい。」
千景は信号待ちで車を止めると、そっと頭を撫でた。
「話せるようになったらでいいからね。」
「うん……。」
その返事も、いつもより小さかった。
大学。
講義中。
教授が説明をしている。
千弥はノートを開いている。
でも。
ペンはほとんど動いていなかった。
「結城くん。」
「はい。」
「体調悪い?」
「……だいじょうぶです。」
教授は少し心配そうな顔をする。
「無理だけはしないようにね。」
「はい。」
友人たちも、いつもとの違いに気付いていた。
「結城くん、元気ないね。」
「風邪かな。」
「昨日まで普通だったのに。」
誰も理由は分からなかった。
午後四時半。
いつものように会社へ向かう。
カードキーで扉を開ける。
「こんにちは。」
受付の社員たちは笑顔になる。
「あっ、ちーちゃん!」
「こんにちは。」
返事はする。
でも。
笑顔が少ない。
「……?」
受付の女性社員も小さく首を傾げた。
「今日は静かだね。」
「うん。」
その一言だけだった。
社長室。
「おかえり。」
「ただいま。」
千景はすぐに気付いた。
「ちーちゃん。」
「ん?」
「大学どうだった?」
「……たのしかった。」
そう答える。
だけど。
“楽しかった人の顔”ではない。
遥も隣へ座る。
「何か困ったことあった?」
「ない。」
「本当に?」
「うん。」
「友達と何かあった?」
「ない。」
「先生は?」
「ない。」
「じゃあ……。」
千弥は困ったように笑った。
「ちぃも、わかんない。」
その言葉に、二人はそれ以上聞けなくなってしまった。
夜。
家へ帰っても様子は変わらない。
夕食も半分ほどしか食べず、
「ごちそうさま。」
いつもより早く部屋へ戻ってしまった。
「ちか。」
遥が小さく呼ぶ。
「うん。」
「ちーちゃん。」
「分かってる。」
千景は心配そうに二階を見上げた。
「熱もない。」
「体調も悪くない。」
「でも。」
「笑わない。」
遥も静かに頷く。
「僕も初めて見る。」
千景は立ち上がった。
「少し様子を見てくる。」
「うん。」
コンコン。
「ちーちゃん。」
返事はない。
ゆっくり部屋へ入る。
ベッドの上。
千弥はくぅちゃんを抱いたまま、小さく丸くなっていた。
「……にぃに。」
「眠れない?」
「うん。」
「隣、座っていい?」
「うん。」
千景はベッドへ腰掛ける。
何も聞かない。
ただ隣にいる。
しばらくすると、千弥が小さく手を伸ばした。
ぎゅっ。
千景の服を握る。
「ここにいて。」
「もちろん。」
その声は少し震えていた。
何かがある。
でも。
まだ千弥自身も、その”何か”を言葉にできないでいる。
千景は優しく頭を撫で続けた。
その頃、部屋の外では遥も静かに立っていた。
二人とも同じことを考えていた。
(どうしたんだろう、ちーちゃん。)
その答えは、まだ誰にも分からなかった。
特別編 第一章おわり。
特別編 第二章へ続く。
コメント
1件
千弥ちゃんの元気がないのがすごく気になります。いつもと違う「わかんない」って言葉とか、理由が自分でもわからない感じがリアルで胸が苦しくなりました。千景くんが無理に聞き出さずにただ隣にいてあげる優しさ、すごく沁みます。続きが気になります!