※こちらは過去話となっております。
夜の輝きを消した、くだらない月のお話。
―――――――――――――――――――――――――――
時々、手袋をしている右手が痛くなる。
理由は分かっている。
ずっと右手には傷があるから。
鋭い刃物___ナイフ、いや、鉈ですかね。
凄く痛くなって、過去を恨む。
傷が鋭利な刃物となり、僕を傷つける。
そして思い出させる。
あの過去の事を
彼女の事を
彼女の存在を。
―――――――――――――――――――――――――――
此れは最近知ったのですが、
僕と妹はとある学会の「最高傑作 」であり
実験的にある古い里へと送られたそうです。
妹は元気で、太陽が刺繍で縫ってある手袋を左手に、僕は妹とは反対で、月が刺繍で縫ってある手袋を右手に付けていました。
性格と好きなものが反対だけど波長が合う、不思議な兄弟でした。
最初の1年間、里では神の様に接されてきました 。
僕達を可愛がってくれていたのです。
ですが段々と其れは恐怖へと変化しました。
何故ならば妹は強かった
強すぎたのです。
何十年周期で起こる「天災」
此れは「混沌神」の分身が襲って来るといったところでしょうか。
混沌神は強かったのです。
ですが妹は混沌神をもろともせず果敢に立ち向かい、混沌神を殺しました。
(※あくまでも分身です)
妹は「神殺し 」となったのです。
ああ、里の人々は喜んで妹を学会から引き取っていたそうです。
ですが強くなりすぎた妹に逆らってはいけないと恐怖し、恐れました。
其れ故に、
里の人々は妹を殺しました。
ある日の事でした、
僕は元々体が弱く、定期的の里の診療所に行っていたのですが其の日 「新しい薬を製作したので今飲んでくれませんか?」と聞かれたのです。
僕は何も怪しまずその薬を飲みました。
瞬時に心臓が苦しくなりまし た。
自分で呼吸が荒くなっているのが分かりました。
そのまま僕は眠りに落ちました。
この現象が起こったのは「魔力不足での心拍悪化」と言ったところでしょう。
詳しいことは分かりませんので、今度カレラお嬢様に聞いてみるのもありかもしれませんね。
目が覚めると僕の右手の魔晶石に鉈が向けられていました。
目の前には顔面蒼白の妹が、周りには里の人々が。
呼吸は苦しいままでした。
妹は里の人々に囲まれ、
燃やされました。
僕は混乱しました。
慌てて妹の近くに寄ろうとすると激痛が走りました。其れはそうです、魔晶石が砕かれたのですから。苦しかったのですが、鉈の刃が手に刺さっていましたがどうでも良かった。そんな些細な事。
妹は枯れそうな声で何かを呟きましたが僕には聞こえませんでした。
そして彼女は
死んでしまった。
僕はその後里の人々の 「目 」を切りつけ
行く当てもなくふらふらと歩き続けました。
そこで出会ったのが「カレラ·ウェルト」様でした。
―――――――――――――――――――――――――――
おや、長話が過ぎてしまいましたね。
申し訳ありません。
生憎自分自身については語ったことがありません故、許してください。
こうなるならお嬢様に語ってもらえば良かったですね。
おかしな事を聞きますが、僕は彼女と 共にまた輝く事が出来るのでしょうか?
あんな事をした者にそんな赦しをして良いのでしょうか?
くだらない質問をしてしまい申し訳ありません。では、さようなら。
次は月が輝く夜にお逢い出来ることを祈って。
―――――――――――――――――――――――――――
※魔晶石とは
魔晶石とは今回の「語り 」の内容に出てきた少年共々、学会で作られた、改造された少年少女の体内何処かに埋まっている宝石。
(※付いていない子もいます)
心臓です。
彼は右腕にひし形の赤色の宝石が表面が露出した状態で出ています。
露出していると魔力を供給する体内にある「魔力管」私達人間で言えば血管のようなものの 魔力管が魔力を供給する事が困難になる故に彼は体が弱いかったのです。
魔力の供給方法は別の魔晶石(人体についていないバージョンの奴ですね)を人体についている魔晶石に当てて供給します。
一応供給時に味はしますが苦くて不味いです。
Thanks you!!
コメント
3件
此れは最近知ったのですが アラスカのイヌイットの人々の言い伝えで兄と妹が追いかけっこに夢中になり妹がはしごをのぼり天に昇り太陽に、兄は後を追いかけて月に。 食料を忘れた月はお腹が空いて気を失い太陽が食料を与え、月が気を失い太陽が食料を与え…を繰り返している。 というものがあるそうです。
神作感謝 輝きを忘れた月っていう語彙がまず天才です