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後半グロ注意です
それからしばらくたち、ここに慣れてきた頃だ
「あっ」
目があった。その人物は、ずっと探していた旧友だった
「久しぶり、ずっと会いたかった」
「本当だよ、ひ…」
「言わないで」
僕の旧友は僕に詰め寄るようにして制止した
「名前を言うのはダメなのかい?」
「ここでの名前があるんだよ」
僕は呆れる。ここには幾つルールがあるのかと。ここのルールは本当に多い。楽譜を100枚覚える方が楽なくらいだった
「ここに来る時、色々貰わなかった? 」
「あー何かもらったな」
「それにここでの名前が書いてあるんだよ、ちゃんと読まないと」
「ごめんごめん」
「あとね、ここの人はこれを羽織っておくんだよ、聞かなかった?」
特に言われた覚えはない。まあ簡単にわかりやすく言えばいじめみたいなものだろうけど、気にはならないと言ったところだな
「んと…エストリール?変なのだな」
「僕気づいたんだけど、これって薬の名前なんだよね」
「そうなんだ。コードネーム、という認識でいいんだね?」
「僕はイグザレルトだった。何で薬の名前なんだろうね」
不思議に思いながらも、特に気になるほどではない
数年後の事
もうだいぶ慣れたが不便なことといえば周りが色々ごちゃごちゃうるさいことかな
旧友とも仲良くしている
その裏で僕はこの楽園から抜け出そうと企んでいた
「ここはかなり高い外壁で覆われているし、抜け道もないな…」
そしていつも通り調べていたのだが、その過程で衝撃の事実を知る
「誰か話してるな」
指導者のドアの前で話し声が聞こえ、僕はつい盗み聞きをする
「あの結界も、維持がそろそろ限界になってきました」
「天からの贈り物がこないからか」
指導者はカップを音を立てて置いた。お怒りのご様子だ
その時、誰かの足音が聞こえ、僕は隠れた
「偉大なる指導者様、天から贈り物が」
「おお、良かった」
指導者は機嫌を直し、どこかに向かった
「(どこにいくんだ…?)」
「おっと」
「(まずい、バレた )」
「エストリール、お前も来るか?」
「す、すみません、何にですか?」
「聞いてただろう。大丈夫だ、怒ってない。天からの贈り物をいただく儀式でもしないか」
「はい、構いませんが…」
「(天からの贈り物…?何だろうか)」
「嫌だ!助けて!」
「こいつだ」
そこには、一見、人間に見える人物が縛り付けられていた
「えっと…人間…?」
「エストリール、聞いて驚け、こいつは人間じゃない。魔法が使える」
「魔法…?」
そんなことはありえないだろうと流石に僕は思った
「冗談でしょう」
「いいや、こいつを食すと魔法が使えるようになる。それが証拠だ」
「これからこいつを食すんだ」
僕は絶句する。逃げたいが、食われる側ではないのにあまりの恐怖で硬直してしまう
気がつくとナイフを持たされていた
「それでこいつをやれ。どこでもいい 」
僕は思い切って一歩進む
縛られた人物は涙目でこちらを見る
僕は一歩ずつ進む。出来るだけその「贈り物」をみないようにした
「ごめんなさ…ごめんなさい…逃して…」
あまりに贈り物が動き、危うく蹴られかけたのでやむをえず贈り物の肩を抑える
贈り物は酷く震えていた。抱きしめてあげたいほどだった
「ごめん」
僕は贈り物が出来るだけ楽に逝けるように首元を狙った
一瞬自分が何をしたか分からなかった
白い正装が血で汚れていく
ひどく長い時間だった
贈り物の息が弱くなっていく。もう少し強くやってあげれば良かったかもしれない
「よくやった」
「指導者様…」
これ以上口が聞けそうにない。僕は前を見ないように部屋へ戻った