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視点🐼
「次は何処へ行こうかなぁ」
「んぇ?まだ決まってなかったの?」
新たな仲間を探すため、色々な所に向かいたいのだが…
如何せん数が多すぎる。第一セクターから第十八セクターまであって?さらにそこの中でも分かれてる?もう無理だって!
「じゃあ第四区画行ってみる?用があるから連れてけるよ?」
「行く!」
そんなこんなで第四区画へ向かうことに。
第四区画へ向かう連絡通路は、他の区画よりも静かだった。
人の声が少なく、代わりに聞こえるのは靴音と、遠くで響く機械音だけ。
「……なんか、空気違くない?」
俺がそう言うと、隣を歩く瑠久が肩をすくめた。
「そりゃそうでしょ。ここ、病院しかない区画だし」
見えてきたのは、巨大な建物。
白くて、無機質で、やけに“整いすぎている”外観。
第四区画大病院。
区画丸ごとひとつの施設、なんて聞いてはいたけど、
実際に見ると圧がすごい。
「……ここに住んでる人、いるの?」
「いるよ。
正確には“住んでる”っていうか……隔離されてる、かな」
その言葉に、胸の奥が少しだけ冷えた。
中へ入ると、消毒液の匂いが鼻につく。
足音がやけに響く廊下。
窓は少なく、天井の魔導灯だけが一定の明るさを保っている。
「第四区画はね」
瑠久が、少しだけ声を落とした。
「魔力が多すぎる奴とか、制御できない奴が集められる場所でもあるんだよ」
「……集められる?」
「表面上は大病院って言ってるけど実際には手に負えない欠陥品の集まりって噂。」
「放っておくと、周りが危ないから」
俺は無意識に拳を握った。
危ないから。
制御できないから。
だから、ここにいる。
「ってかなんでそんな事しってんの?」
「なんでって……僕、優等生だから☆」
__________________
第四区画大病院のエントランスホールは、連絡通路の静けさとは打って変わり、妙な緊張感に満ちていた。
案内窓口の職員は無表情で、行き交う人影も白い制服ばかり。徹底された清潔感と、それに反する重苦しい空気が混じり合っている。
「……重症患者エリアは奥だよ」
瑠久がスマホで映したマップを見せてきた。俺たちは指定されたエレベーターに向かう。
階を上がるごとに、消毒液の匂いが濃くなり、静寂が増していった。
目的の階に降り立つと、そこはフロア全体が特別な区画だと分かった。
通路には監視カメラがやけに多く、扉も通常の病棟とは違う、厳重なロックがついている。
「ね、ねぇBroooock!こんなとこ来ていいの?」
「大丈夫!僕のお祖母ちゃんが病気で入院してるんだ。お見舞いってことで何とかなる!」
しれっと大事なことを言う瑠久に驚きつつ、深掘りはしなかった。
その目には不安も混じっていたから。
「あっ、そういえば特別管理室って書いてあるところがたしか……」
その時、角を曲がった先の小部屋から、ひそひそとした話し声が漏れてきた。
「ねぇ、例の玲央って患者、まだ退院できないの?」
「無理でしょ。あんな魔力溜まり。外に出したら大惨事よ」
思わず、足が止まる。小部屋の扉は少し開いていて、中にいるのは休憩中の看護師らしき二人だった。
「ほんと、迷惑よね。私らの仕事増やすだけ」
「表向きは治療だけどさ。実際はただの隔離なんだから。あんな欠陥品、いなければいいのに」
欠陥品。
その言葉が、耳の奥で鋭く響いた。
胸の奥が冷えるどころか、一気に熱くなるのを感じる。
無意識に強く握りしめた拳のせいで、手のひらの爪が食い込んだ。
「……行くぞ、Broooock」
低い声で隣に告げ、俺は何も聞かなかったふりをして、看護師たちの小部屋を通り過ぎた。
瑠久は何も言わなかったが、その表情は少し強張っていた。
突き当りの、最も奥まった場所。
二重の扉に守られたその一室には特別管理室と札がかけられていた。
「で、特別管理室がなんだったけ?」
「あぁ、えっと、特別管理室は魔力暴走しても平気なように常に呪いがかかって、魔力が吸い取られるからあんまり近づかないでね。………ってnakamu?なんでドアノブを?」
重い扉を開けて中へ入る。
そこは、小さな個室だったが、病室というよりは研究室に近い雰囲気だ。
ベッドの周りには魔力計測器や抑制装置らしき機械が並び、窓は分厚い防護ガラスで覆われている。
真ん中にはベッドに座り、外を眺める少年がいた。
こっちに気がついたようで翡翠のような目を 向けていた。
「あんた達……誰?」
彼の声は小さく、明確な拒絶の響きがあった。
「俺は、nakamu。こいつはBroooock」
俺が単刀直入に名乗る。彼は怪訝そうな目で俺たち二人を交互に見た。
「ごめんね!nakamuが勝手に入っちゃって!プライベートをお邪魔してごめん!ほら行くよ」
その瞬間、彼の瞳がわずかに揺れた。
「……まって!Broooock!」
俺は咄嗟に、病室を出ようと踵を返した瑠久の腕を振りほどいた。
瑠久は驚いた顔で俺を振り返る。
彼の瞳の揺れ――警戒と拒絶の中に、微かに見えた期待のようなものを見逃すことができなかった。
「nakamu?どうしたの(汗)?」
「……」
俺は何も言わず、ただ彼を見た。
一瞬、こちらから目を逸らしたが、すぐに鋭い視線を戻す。
「なんのつもりだ。あんたとは関係ない。出ていけ」
彼の拒絶の言葉は強い。
「……明日も来るから!」
彼の顔が強張った。ぎゅっとシーツを握りしめ、何かを言いかけようと口を開いた。
その時、瑠久が俺の背中を掴み、有無を言わさず俺をドアの外へ押し出した。
「ごめんね!本当にごめん!僕のお祖母ちゃんのお見舞いなのに、nakamuが勝手に!すぐ行くよ!」
瑠久は矢継ぎ早に謝罪の言葉を述べながら、俺の腕を強く引っ張り、二重の扉を素早く閉めてしまった。
ガチャリ、と厳重なロックが掛かる音が、病室の静寂を際立たせた。
__________________
エレベーターに向かう道すがら、俺は瑠久に引っ張られたまま、ほとんど無言だった。
「nakamu!何やってるんだよ!お見舞いって言えば何とかなるって言ったけど、見舞うフリして、情報収集するって意味でしょ!」
瑠久は俺の行動の一つ一つを取り上げ説教する。
「あんな特別管理室にいきなり入ってさ!もし監視カメラで怪しまれたらどうするの!看護師さんの会話聞いちゃったから?感情的になりすぎ!」
俺は反論しなかった。瑠久の言う通り、俺は感情的になりすぎた。
「欠陥品」という言葉が、頭の中で反響していた。
そして、玲央の目に見たあの微かな光が、俺の衝動を突き動かした。
「……悪かった。でも、あいつ……」
「わかってる。わかってるけど、準備なしに突撃するのはダメ。僕たちの目的は情報収集と、安全な仲間探しでしょ?今日はおしまい!帰るよ!」
瑠久は珍しく怒っていた(まだ日は浅いけど)。俺たちはそのまま病院を後にし、その日は瑠久の家で、彼の長々とした説教を聞くことになった。
彼の説教はもっともで、俺は何も言い返せなかった。