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「…なんで?」
「だって、明日香との距離すげぇ近いじゃん」
晃河のその言葉に明日香はふふっと笑う。
「何。また嫉妬?もう、晃河は可愛いな〜」
そう言う明日香に晃河は真剣な顔で言う。
「真剣な話なの。颯人とは距離置いてよ」
「ちょっと晃河。いくら嫉妬したからってそんな事言わないでよ」
「なんで?俺が嫌って言ってんだからやめてよ」
「晃河、落ち着いてよ。颯人は大事な友達なの。そんな事言わないで」
「言うよ。だって颯人、明日香の事好きかもしれないでしょ?明日香のこと狙ってるんだよ。距離詰めて、なんかあったら庇って、好感度上げてんじゃん」
「晃河。颯人は俺の事、友達としか思ってないよ。俺の大事な友達にそんな言い方しないで」
「なにそれ。俺より颯人の肩持つの?」
「肩持つって…晃河が颯人のこと悪く言うからでしょ」
「悪くなんて言ってないよ。本当のこと言ってるだけじゃん」
晃河のその言葉に明日香は怒鳴るように言う。
「晃河。いい加減にしろよ。それ以上颯人のこと悪く言わないで」
「…もういいよ!そんなに颯人の事が好きなら颯人と付き合えばいいじゃん!」
晃河は怒鳴るようにそう言った後、歩き出す。そんな晃河の手を明日香は咄嗟に掴む。
「待ってよ!」
「離せよ」
「嫌だ。ちゃんと話さないと…」
そう言いかける明日香の言葉に被せるように晃河が言う。
「しばらく明日香の顔見たくないから。話しかけないで」
晃河のその言葉で明日香はそっと手を離す。手を離された晃河は、無言で歩き出した。明日香はそんな晃河の後ろ姿をただ見つめることしか出来なかった。
次の日、明日香は学校に登校すると、晃河の元へ行く。だが、目が会った瞬間、晃河は目を逸らした。いつもとは違う、冷めたような目だった。そんな晃河を見て、明日香は何も言わずに席に座る。そんな明日香に颯人が話しかける。
「おはよう。明日香」
「うん。おはよう」
「なんか、元気ないね。なに。晃河と喧嘩?」
「…そう」
暗い顔をしてそう言う明日香を颯人は不思議そうに見る。
「何があったの?」
颯人のその問いに明日香は少し黙り込んでから返す。
「…ごめん。ちょっと今は話しかけないで欲しい」
「あ、うん。わかった。ごめんね」
それから明日香は1日中暗い顔のままだった。そして帰りの時間になり、明日香は晃河の元へ行く。
「晃河…」
「莉久、行こ」
そう言って晃河は逃げるように教室を出ていった。明日香は、そのまま晃河を見送った後、一人で教室を出た。
それから晃河は、明日香とは目も合わせることなく避けるような日々が続いた。そんなある日。颯人はみんなが帰る中教室に残り、同じく教室に残り机に突っ伏している明日香を眺める。
(もっと貪欲に…)
颯人はそう思いながら明日香に話しかける。
「明日香」
その呼びかけで明日香は顔を起こす。
「なに?」
「いや…最近元気ないから。心配でさ」
「あぁ…ちょっと喧嘩しちゃってさ」
明日香はそう言って俯いた後、続けて言う。
「まぁ、ちょっとじゃないんだけど」
そう言って明日香は苦笑いした。
(話聞いて、寄り添ってあげればもしかしたら…)
そう考えた颯人は心配そうに明日香に聞く。
「大丈夫?俺で良かったら話聞くよ?」
颯人のその言葉に少し沈黙が走った後、明日香が言う。
「…晃河にしばらく俺の顔みたくないって。話しかけないで欲しいって言われちゃってさ」
「何かあったの?」
「その…颯人は悪く思わないで欲しいんだけど、颯人と仲良くしすぎって思ったみたいで、颯人と話すなって言われてさ」
「うん」
「俺、もちろん晃河の事も大事なんだけどさ、颯人も同じくらい大切で。颯人の事悪く言ったりもしてたからなんかムカついちゃってさ。ちょっと怒っちゃったの。そしたら晃河、もっと怒っちゃって。口聞いてくれなくなっちゃった」
明日香はそう言って悲しそうな顔をする。
(寄り添う…)
「そっか。大変だったね」
颯人はそう言って明日香の頭を撫でる。
「…もしこのまま、一生仲直りできなかったらどうしよう」
「もしそうだったら俺が…」
颯人はそこで言葉を止めた。明日香の目から泪が出ていたから。
「明日香…」
「あ、ごめんっ…なんか、泣けてきちゃって…」
明日香は泣きながらそう言う。そんな明日香を見て、颯人は我に返る。
(何してんだ、俺)
だが、不意に莉久の言葉を思い出す。
″ もっと貪欲にならないと。何してでも手に入れるって思わないと一生このままだよ?″
(ダメだ。もっと貪欲になるんだ。何してでも、明日香を手に入れるんだ…)
「明日香。大丈夫だよ。明日香には俺がついてるから」
そう言った颯人の心がズキっと痛む。どれだけ頑張って心を鬼にしても、颯人の心には罪悪感が消えなかった。明日香の涙を見れば見るほど、颯人の心はズキズキ痛む。
「晃河っ…」
明日香は泣きながらそう言う。そんな明日香を見て、颯人は再び我に返った。
(ほんと何してんだ。俺はただ、明日香と一緒にいたかっただけなのに…泣くほど傷つけて…)
「…ごめん」
「なんで颯人が謝るの。颯人は悪くないよ」
「ううん。俺が悪いの。全部」
「…颯人はほんとに優しいね。いつも俺を庇ってくれる」
(…違う。俺は全然優しくなんてない)
「…俺は優しくなんてないよ」
「ううん。颯人は優しいよ」
「もしその優しさが嘘だったら?」
「もしそうだとしても、俺はその颯人の優しさに救われてるよ」
(やめて…そんな事言われたらもっと…)
「明日香ってほんと…」
颯人はそこで口を噤み、黙り込む。そんな颯人を見て、明日香は不思議そうな顔をする。
「なに?」
「ううん。なんでもない。俺、そろそろ帰るね。じゃあ、また明日」
颯人はそう言って席を立つ。
「あ、うん。また明日」
明日香はそう言って颯人に手を振った。
その日の夜、颯人はベッドに入ってから考える。
(俺はこれからどうしたらいいんだろう…)
颯人はそう思いながら目を瞑る。
(こんな気持ちが揺らいでたらダメだ。本気で明日香を取りに行くのか、明日香の恋を応援するのかちゃんと覚悟決めないと)
颯人はしばらく考えた後、目を開く。
「よし。決めた」