設定は大学生です
3人は同い年
大森元貴(19)
若井滉斗(19)
藤澤涼架(19)
死ネタ注意⚠️
それはいつも通る横断歩道で、いつも通り3人での大学からの帰り道に起きた
鼓膜を刺激するような大きな音と共に彼の体は宙を舞い、数メートル先に転がる
その光景に僕は、
息を飲んだ
「わ、かい……?」
「元貴っ!大丈夫!?けがは!?」
状況を理解しきれていない僕の元に涼ちゃんが駆け寄ってくる
「僕は……大丈夫…でも若井…若井がぁ…」
「大丈夫…すぐに救急車来るから」
僕の肩を支えて擦りながら安心できるような言葉をかけてくれる
でも恐怖で震えと涙が止まらない
それに目の前の状況を理解出来ていない…というよりも理解をしたくない
僕が大好きな若井は、変わり果てた姿で真っ赤な血の花を咲かせ道路に横たわる
その近くには、
バランスを崩して横転したトラック
そのトラックから出てきたであろう男性
通報したりトラックの男性を介抱する人達
ザワザワと集まり出す野次馬
そして遠くからは救急車とパトカーのサイレンも聞こえてくるけど、だんだん聞こえなくなっていく
僕はそこで意識が途切れた
次に目が覚めたのは白い天井の部屋
多分病院だろうけど
「元貴っ!起きた?」
横を見ると僕の手を握りながら涙目になっている涼ちゃんがいた
「涼…ちゃん…、若井…は?」
酸素マスクが邪魔で上手く喋れない
「あ…若井はね…」
涼ちゃんがそう言いかけた時に病室にお医者さんがやってきた
「大森さん、目が覚めましたか」
「はい……あの…若井滉斗は…?」
「若井さんは…即死でした…」
「……は?」
即死…そくし?なんで?あの直前まで一緒に笑顔で歩いてたじゃん
「事故の原因はトラックの運転手の居眠り運転だそうです」
お医者さんは淡々と説明を続ける
「大森さんも丸2日ほど眠ったままでしたよ」
「そうだよ元貴、!目が覚めて良かった…」
涼ちゃんが泣きながら言う
でも僕は正直生きてたくなんかなかった
若井が居ないこの世界でどう生きろって言うの?涼ちゃんと二人だけで、どうやって生きてくの?
でも、考えても埒が明かなくて、大人しく病院で治療を受けてたら1ヶ月で退院出来た
退院しても僕の心は空いたまま
涼ちゃんと2人でも十分楽しいし幸せだけどやっぱり…若井が必要だなぁ
それから1ヶ月くらい経った頃
涼ちゃんにあることを相談した
「ねぇ涼ちゃん」
「なぁに元貴?」
「僕さ、もう…」
『疲れちゃった』
「元貴……」
「ごめんね涼ちゃん、せっかく退院できたのに」
「…ううん、大丈夫だよ?正直言うと僕もね、」
『疲れちゃったんだ』
涼ちゃんも考えていることは同じで
若井が居ない生活に疲れてきたみたい
「ねぇ、涼ちゃん?」
「うん」
「このままさ、夜に呑まれようよ」
「…そうだね、2人で生を呑んじゃおうか」
「ふふっ、それ、久しぶりに聞いたよ」
『生を呑む』
というのは中学の頃3人で国語の授業の時に創った造語
大した意味は特に創ってないけど、「死」と関係のある言葉だと思っている
「生きるのをやめて死んでしまおうか」という感じの言葉
実際、今こうして使っているんだから間違っては無いと思う
「涼ちゃんと生を呑むなら、怖くないね」
僕は少し笑いながら応える
「今日で、いい?」
「僕はもうその覚悟があって涼ちゃんに相談したんだよ、だから今日がいい」
「ふふっ、じゃあ、逝こうか」
僕が住んでるマンションの屋上へ向かう
階段を上る間は2人で手を繋いで、絶対に離さない
「怖い?」
「ううん、怖くないよ、元貴がいるから」
「若井に怒られちゃうかなぁ?」
「ははっ、そうかも」
そんな冗談を言いながら屋上へ着いた
時刻は深夜0時
人がいる訳もなく、風だけが強く吹いている
フェンスを超え、手を繋いだまま縁のギリギリに立つ
「ありがとうね、涼ちゃん」
「ん?なにが?」
「…こんなになっちゃった僕に、1ヶ月も寄り添ってくれて」
病院は退院できたが、体は痩せ細り精神科に通う日々だった
涼ちゃんはそんな僕に文句一つ言わず1ヶ月間も寄り添ってくれた
「僕がやりたくてやってたんだから、いいんだよぉ」
「…ありがとう、じゃあ、準備はいい?」
「もちろん、いつでもいいよ」
「涼ちゃん、向こうで会おうね」
「元貴と若井と僕と、3人で会おう」
「「じゃあね」」
2人は手を繋いだまま
固く固く繋いだまま
マンションの下へ堕ちていった
まるで、真っ暗な夜に呑まれるように
大地に身を投げた
誰よりも幸せそうな顔をして
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