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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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◇出張


それは夫と部下の男性1人と馬場真莉愛そして水谷あかねとの4人で

出張に2泊3日で行った時のことだという。


話が拗れた場合は宿泊を延長してでも、というほどの大口の取引だった。


そんな中、その日の為にいろいろ準備していたことが実を結び、

予想以上の効果があって2日目で仕事が取れた。



成果があったことと、翌日は会社に行かず各自家に帰っていいという

予定を組んでいたのとで、最後の夜はみんな無礼講でお酒に舌鼓をうち、

24時近くになってお開きになりそれぞれホテルの部屋に戻ったのだそうだ。



ただ岸谷という男子社員だけは家から緊急の連絡が入り

途中で帰って行ったのだとか。




「その夜、私途中、トイレで目が覚めたんです。

そしたら横で寝ているはずの馬場さんがどこにもいなかったんです。


大倉係長の部屋は岸谷さんが一足先に帰っていて、その日の夜大倉係長は

部屋におひとりだったので……まさかと思いながらも気になりました。


日頃から馬場さんは大倉係長のファンを公言してましたので。


女子社員の間では馬場さんが大倉係長のファンだということは

知れ渡っています。


あっ、でも大倉さんはいつもささっと上手くかわされていたので

問題はないのです……と言いたいところなのですが」



4-2



「問題が起きたんですか? その日……」


こんな質問したくはなかったけれど、彼女の話を促すには

そんな風に聞くしかなくて、問いかけながら少し凹んだ。



「トイレから戻ってベッドに入って10分ぐらいした頃でしょうか、

彼女が部屋に戻ってきました。


私は寝た振りをしました。


彼女も一度は自分のベッドに入り布団も掛けてそのまま寝たようでしたので

それを確認して私は再度眠りにつきました。


飲み慣れていないお酒でお腹の調子を悪くしていたのでしょう、

明け方5時少し前にまたトイレに行きたくて私は目が覚めてしまいました。


そしたらまた隣に寝ていたはずの馬場さんがいなくて本当に驚きました。

その後、彼女が部屋に戻って来たのは結局8時頃になってからでした。


いくらなんでも直截的に大倉さんの部屋にいたのとも追求できなくて

『いままでどこにいたの? あなた夜通しこの部屋にいなかったみたいだけど

……』と聞きました。


彼女の返事にもう私ぶったまげました。


臆するでなし、隠すでなし、ああいう女性ひとっているんですね。

もうほんと、信じられない」




じらさないで、早くその先を……と思いつつ、何も言わず水谷さんの

次の言葉を待った。


信じられないその女は何と?


聞きたくないことを聞かされるのではないかという怖さ、不安を

抱えながら、それでもやっぱり早くその続きを……と私は思ってしまった。



◇ ◇ ◇ ◇




「実は大倉さんに夜這いしてたんですぅ。ふふっ。


だけどぅ、『お前ここで何やってんだぁ、自分の部屋に戻れ!』って

追い出されたんですよね。


んでぇ、一度はこの部屋に戻って寝ようとしたんですけど

私ぃ、あきらめらんなくてぇ。


だってこんな同じホテルにお泊りできるチャンスはまたあるかもぉ

だけど、大倉さんがひとりっていうチャンスはもう来ないじゃ

ないですか。


最後のチャンスなのにこんなに簡単に引き下がれないって思って

もう一回部屋に入ったんですよ。


そしたら大倉さん可愛い顔して爆睡中でした。


もう嬉しすぎて……大倉さんの横に入って朝まで一緒の布団で寝てました。


あ~、あたし めっちゃ幸せ~」(はーと)



「って馬場さん悪びれもせず、そう言ったんです」



5-2



「『朝起きた時、大倉係長は何て言ったの、あなたに……』

って彼女に聞きました」



「あははっ、むちゃくちゃ驚いてましたけど……こういうの

後の祭り? っていうの?


あはは、思い出したらまたおかしくなってきたぁ。

『早く自分の部屋に戻れ』って言われました。


ちょっと焦ってたかもぉ。

まぁ、一緒に寝ただけでなんもありませんでしたけどね。


でも、大満足」



「馬場さんの話に私もう、すごく脱力しました。


何もなかったようなので逆に私も奥さんにあの日のことを

こうやってお話できるんですけどね」



「そんなことがあったんですかぁ~」



何もなかったようだと言われてもなんだかなぁ~、すごく嫌な気持ち。



それはその馬場という人にもだけどあまりにも無防備な夫に対しても。

夫は確かに悪くないと思う。


据え膳に手も出さなかったわけだし、水谷さんの解釈通りならね。


だけど……だけど、何か釈然としないよ。

もやもや感が半端ない。




「まだお話に続きがあるんですけど、大丈夫でしょうか?」




へっ、まだ続きがあるンかい?

思わず心の中で突っ込んじゃったよ。



そう声をかけてくれた彼女は話の続きを語り始めた。

『パラレル』― One Way ―

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