6.
◇SNS
私は引き続き大倉係長の奥さんにあの日のことを伝える為に話を続けた。
◇ ◇ ◇ ◇
真莉愛と私は背中合わせで座っている。
広いオフィスの中、メインが内勤の私たちは営業の人たちが出払うと
時々2人きりになるときがある。
2人きりと言っても厳密には違うけれど。
……というのも離れたシマにはパラパラと人がいるから。
ただし内緒話が届かないくらいは離れているので
そういう意味でふたりきりの時があるのだ。
そんな周りに人がいなかった日のこと。
「ねぇねぇ、水谷さんっ、すごいもの見せてあげましょうか」
「すごいもの? なぁ~に?」
この子の言うすごいものって、何だろう。
頭のネジが1本抜けてる子のすごいものって……怖過ぎる。
何って一応聞いては見たけど、見たくないよねぇ~
できるものならば。
前々からちょい変なヤツ認定はしていたけれど、この間の
大倉係長に夜這いをかけた発言以来、さらに私にとって
要注意人物になっている。
正直なところこんなやつと2度と一緒の出張なんてごめんだ。
「わたしぃ、ブログやってるんですけどぉ~もう我慢できなくてぇ~」
我慢出来ないことが多過ぎやしないかいっ……。
「……」
「ついにブログにYoutubeをupしちゃいました」
「それって動画のことよね?」
「ふふっ、今ブログのページ開けてるので見てみませんか。
これこれっ!」
「何これ……この映像あなたが撮ったの?」
「ふふっ、内緒ですよ? シーっ!」
「シーって、シーって……こんなもの公のYoutubeにuoloadするなんて
だめだよ、真莉愛ぁ」
「すぐ消しますってば、水谷さんや親しい人にだけですよ。
見せたらすぐっ消すつもりぃ」
6-2
「それにしてもたくさんよく撮れたわね」
「えへへっ、愛ですよっ……愛Love」
「あなた、こんなに何度も大倉係長が残業してた時に一緒に
いたのね。
それもびっくりだわ。
いつの間に。
ねっ、悪いこと言わないから早く削除しなさい。
あなたは気にしてないけど、大倉さんや奥さんが見たら不快な
ものだよ?
それに周りの見た人たちに誤解を招くと思うわ」
「水谷さんってばぁ、真面目に捉え過ぎですよぉ。
好きな人のこと観察したり撮ってみたり誰だってしたくなりますってば」
「な・り・ま・せんっ」
ンとにもう何言ってるんだか。
「水谷さんはもう結婚しちゃってるから、乙女の恋心が理解できなく
なってるんですね。
それとも年齢的なものなのかなぁ?」
「ンまぁ~、なんですってぇ~ 真莉愛」
私は真莉愛をどつく振りをしてその場はそれでやり過ごした。
もうほんとに何をやってるのか、ただただ呆れるばかりだった。
それと、本当に削除したのかどうか、怪しいもんだわ。
真莉愛のブログにupされていた動画は、大倉さんと真莉愛との
会話入りのもので、ふたりが残業している日のものだった。
真莉愛は信じられない言葉を大倉さんに投げ付けていた。
ふたりはすごくリラックスしている風だった。
内容からして明らかにあの出張の後のモノだ。
「大倉さんってばぁ、酷い人ですね」
「ナンだよ、いきなり。それよりちゃんと仕事しろっ!
そんで早く帰りなさい」
大倉係長ってば、逃げてるぅ。
かわいいっ!
「折角私みたいな若くって可愛い女が夜這いしたのに
何でなんですかっ」
「何だっ、そのわけワカメないきなりの質問と罵倒は。
こっちがわけワカメだよっ」
「まぁ、いいですよ。
朝まで一緒の布団で寝られたし……って
妊娠したから責任とってくださいって言ったらどうします?」
「ブッ。
君の話聞いてると頭痛くなってくるなぁ~もう。
もうね、俺は神や仏の領域に入ってるンだから、妊娠なんて有り得んわ」
「何なんですか、その神仏の領域だんなんだか……っての」
「もうここしばらくSEXしてないし、しなくても済むって話」
「えーっ、ホントですか、それっ」
「なんだっ、えらい喰い付がいいんだな。参ったな」
「だって、まだ大山さん30代でしょ?
信じられないですもん。
それって奥さんとご無沙汰ってことですよねぇ?」
「まぁね」
7-2☑
「それが本当なら奥さん可哀相ぅ~、真莉愛が奥さんだったら泣いちゃう。
……ってだけど大倉さんのところ最近下にお子さんできてません
でしたっけ? おかしいなぁ~」
「下の子は産まれてもう5ヶ月になるけど、妻が下の子を妊娠してからは
嘘じゃない一度もないよ」
「育児に忙しい奥さんに拒まれてるんですか?」
「違うよ。誘ってないんだから拒まれるわけないだろ!」
「えーっ、酷いっ」
「何がだよ。子供もふたり目出度くできた訳だし、仕事も忙しいし
妻も小さいのがふたりいるから忙しいだろうし、あちらも
何も言ってこないから俺と同じ気持ちかもしれない。
もう家族なんだよ俺たち。
家族になるとね、そういう気にはならないもんなんだよ。
君も結婚したらわかるよ、俺の言ってる意味が」
「あのぉ、私はそんなのわかりたくないですぅ。
でも……でも 家族だから出来ないっていうのなら他の女性とは
出来るんですよね?
じゃあやっぱり私立候補しまぁ~す」
「だめだよ、そんなことしたら立派な不倫だろ?
修羅場はごめんだし、社会的信用をなくす訳にはいかないんだよ俺は。
これから更に仕事に邁進して力を試してみたいと思ってるからね。
男なら他を当たってくれ!」
「つまんないのっ。
私は大倉さんがいいのに」
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