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「来週はお泊まりしないから! 今日は一緒に居たい! ね? いいでしょ?」
「……そう言って先週泊まったんだけどな」
「……もういい、帰る! 帰ればいいんでしょ!?」
全ては私の為だと分かってはいるけど、なかなか首を縦に振ってくれない律にちょっとだけイライラした私は頬を膨らませてそっぽを向いた。
「……ったく、これだからお子様は……」
「子供扱いしないで。だって、しょうがないじゃん……離れたく、ないんだもん……」
わがまま言うとやっぱり子供扱い。それは今までと変わらない。
されるのが嫌なら言わなければいいんだけど、律と離れたくないからつい言っちゃうの。
私がシュンとしてると律は、
「……ったく、分かった。今日は特別な。その代わりきちんと連絡しろよ…………いや、やっぱり俺からきちんと言うよ。電話してくれ」
「え? いいよ、私から言うから」
「駄目だ、こういう事はきちんと俺の方から言った方がいいんだよ」
私の気持ちを汲んでくれて泊まる事を許可してくれただけではなくて、私の親に自分から泊めるという事を話してくれるという。
こういう誠実なところも、私は好き。
律が話してくれたおかげでお母さんたちは私が泊まっていく事を納得してくれてほっとする。
「……律、怒ってる?」
「怒ってねぇよ」
「本当に?」
「ああ」
「……キスして?」
「何だよ、いきなり」
「律は、したくないの?」
「……したいに決まってんだろ? いつでもしたいっての」
「……ん……」
深くて大人なキスも好きだけど、触れるだけの軽いキスも好き。
「……琴里、明日は久々に、どこか出掛けるか」
「え? でも、締め切り間に合う?」
「平気だよ、一日くらい」
「無理しなくていいよ? 私は、律と居られればどこでも幸せだもん」
「…………本当、お前は良い女だよ。けど本当に大丈夫だぜ? 明日、どこ行くか考えとけよ」
「うん、分かった!」
「さてと、そしたら今日は早めに寝ようぜ、一緒に、な?」
「……その言い方、絶対寝かせる気ないやつだ……」
「はは、バレたか」
「もう、律ってば」
私が高校を卒業するまで暫くかかるから、まだまだ一緒に過ごせる時間は限られているけど、この先どんな困難が待ち受けていたとしても、私たちは絶対乗り越えられる。
「ねぇ律、好きって言って?」
「何だよ、言葉には拘らねぇんじゃ無かったのか?」
「そうだけど、たまには言われたいの」
「好きじゃ無かったら、一緒に居ねぇしキスだってしねぇだろ?」
「そうだけど、それはそれ!」
「ったく、注文の多いお姫様だよ、お前は」
『好き』って言葉が無くても、もう不安にはならない。
それくらい、私たちの間には言葉なんかでは表せないくらいの深い絆があるから。
だけど、たまには聞きたいから、聞くよ。『好き?』って。
「――好きに決まってんだろ?」
「うん、私も律が大好き!」
―END―