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雪乃はことの経緯を説明した。
ムウマの話をし終わると、三人はうーんと首を傾げた。
「俺は聞いたことないなぁ」
クロノアは全く聞いたことが無いらしい。
「うーん、中庭のムウマなぁ…ぺいんと聞いた事ある?」
トラゾーがぺいんとを見るが、ずっと何かを考え込んでいて返事がない。
隣に座るピカチュウも真似をして考え込む素振りをする。
「ぺいんとさん?」
死神が顔を覗き込むと、「そういえば」とぺいんとが口を開いた。
「誰かがそんな話をしてたような…」
え!とみんなが注目する。
「ほんとですか!?だ、誰が…」
「ちょっと待って今思い出すから」
「頑張れ、思い出せぺいんと!」
「そうだ、みんなでぺいんとを応援しよう!」
ソファーに座り考え込むぺいんとの周りを4人が取り囲みぺいんとコールが始まる。
ピカチュウも一緒になって「ぴーか、ぴーか」とコールする。
「………」
「ぺーいんと、ぺーいんと!」
「………」
「ぺーいんと、ぺーいんと!」
「ちょっと静かにしてくんない???」
あまりの騒がしさに全然集中できなくて怒るぺいんとだったが、ちょっと面白かったのか笑いながら怒っている。
「人が集中してるんだからさぁー、そんな楽しそうにコールしないでよ笑っちゃうじゃん。ピカチュウまで真似しちゃってるし」
「ごめんごめん、楽しくなっちゃって」
「同じく」
「ぴかぁ」
トラゾーの言葉に同調する雪乃。
応援の気持ちはあったのだが。
「それで、思い出したのか?」
「うーん、誰かから前に聞いたような気がするんだよなぁー」
「お客さん待たせてるんですから早く思い出してくださいよぺいんとさん」
「ちょ、焦らさないで」
「あれだったら出直しましょうか?また思い出したらその時に…」
「あー、そうして貰おうかなぁ…」
「大丈夫?急ぎじゃないの?」
「まぁ、急ぎっちゃ急ぎですけど…」
「うーん、ちょっと待って頑張るから…」
雪乃の言葉に声を唸らせるぺいんと。
「ぺ、ぺいんとさん大丈夫ですから、また後日で全然…」
「でも、雪乃ちゃんには恩もあるし、協力してあげたいし…」
その姿を見て雪乃はぺいんとの側にしゃがみ込み、唸るぺいんとの顔を見上げて目を合わせる。
「考え過ぎると出てこなかったりしますし、何より大事な部活動の時間を奪ってることが申し訳ないですから。それに、その気持ちだけで十分嬉しいです。また思い出した時に死神くんに伝えてくれたらそれで大丈夫ですよ」
雪乃は優しく言い聞かせるように言う。
ぺいんとはその柔らかい笑みと見上げてくる青い瞳にドキッとし、顔を赤くする。
「あ、え、あの、お……思い出した!!!」
「ええええ、このタイミングでぇ!?」
ソファーから勢いよく立ち上がるぺいんとに、死神がびっくりしてツッコんだ。
「お、思い出しましたか!?」
「思い出した!めちゃくちゃ思い出したわ!加島だ!加島だよ!」
「ぴっっかぁ!」
「え、誰ですか」
「誰だ」
「あー、加島か」
トラゾーだけがその名前に反応する。
「そう、加島!加島が前に言ってた!ムウマによくお菓子を持ってってたって!確か中等部の時に聞いた気がする!」
「おぉ、でかしたぺいんと!よく思い出した!」
クロノアが拍手する。隣にいたニャオニクスも小さく拍手をする。
「その加島さんって人は、今どこにいるかわかりますか?」
雪乃が聞けばぺいんとは窓の方を見る。
「今部活中じゃないかな。あいつ野球部だから今グラウンドにいるかも」
「なるほど、了解です!貴重な情報提供ありがとうございます助かりました!ちょっとグラウンドの方行ってみます!」
雪乃はソファーに座るピカチュウをひと撫でした後、急ぎ足でドアの方へ向かう。
「またお礼は後日致しますので!みなさんお時間いただいてありがとうございました!死神くんも、ありがとね!」
「うん、頑張ってね!」
では!と雪乃は部屋を出ていった。
「あ、行っちゃった…加島に連絡入れてあげようかと思ったけど、大丈夫かな」
「優しいなーぺいんとは」
「いやだって…」
ぺいんとは雪乃が出て行った扉を見つめる。
「加島がどれか、わかるのかなぁ…」
…確かに、と3人もその扉を見つめたのだった。