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その日、会社での打ち合わせを終えたのは夜の八時を過ぎていた。
スマートフォンの電源を入れると、留守番電話が十件を超えていた。どれも母からのものだ。嫌な胸騒ぎがした。
「……もしもし、母さん。どうしたの?」
『圭介、ニュースを見なさい。美咲が――美咲が、警察に……!』
母の声は震えていた。息も乱れていて、泣いているのがわかった。
ニュースアプリを開くと、トップに妹の顔写真。白い大学の卒業アルバムの写真が、無機質な「容疑者」という文字の下に並んでいる。
――被害者は同じ大学の学生、男性(22)。
――現場は都内・世田谷区のアパート。
――凶器は現場に残されたナイフ。指紋が検出された。
美咲の名前と指紋。
それだけで、警察は逮捕状を取ったらしい。
俺はすぐに上着を掴み、駅へと走った。
雨はまだ降り続いていた。