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「なに?」「温泉小屋の裏山に避難用の洞窟があるんだよ。魔獣や敵国から身を隠すための。そこに食料や必要な物を運ぶのを手伝って」
「わかった…。アトラスも魔獣の所へ行くの?」
皆が行くなら、俺も行きたい。一人だけ安全な所に隠れてるなんて嫌だ。ギデオンと約束したけど、やっぱり嫌だ。
リオの考えてることが顔にも出ていたようで、アトラスが「俺もそう思う」と困惑した表情をする。
「俺は、リオの傍にいるよう命じられたんだ。だからここにいる。だけど本心は、皆と一緒に戦いたい」
「なら行っていいよ。俺も行く」
「ダメだよ。リオは安全な場所にいなきゃ。ギデオン様は、絶対にリオを守りたいはずだから」
違う、誤解している。ギデオンは、俺が騎士ではないから、連れて行けないだけ。領主として民を守ろうとしているだけ。俺に対してすごく優しいけど、俺のおかげで安眠できることを感謝してるだけ。もし俺に何かあっても、悲しんでくれるだろうけど、すぐに立ち直れるよ。だから…。
リオは、顔を上げてアトラスの瞳をまっすぐに見つめる。
「アトラス、ギデオンや皆のこと、心配だろ?ここに残るのは嫌だろ?だから俺を置いて皆の所に行っていいよ。俺はちゃんと避難する。それにアンもいるから大丈夫。でもさ、絶対に無事に戻ってくると約束して」
アトラスは、しばらく黙ってリオを見つめていたが、遠くの魔獣とリオを交互に見て、長い息を吐き出した。
「…わかった。だけどリオも、絶対に洞窟から出ないでくれよ。または屋敷から離れるなよ」
リオは、|曖昧《あいまい》に笑って誤魔化す。
そんな約束は守れない。皆に危険が迫ったら、すぐに魔獣の所へ向かう。皆を助けるために魔法を使う。誰一人として死なせたくない。
「とりあえず、荷物を運ぼうよ。洞窟って寒そうだから、毛布がたくさんいるな」
リオはそう言うと、部屋へ向かう。
後ろを歩きながら、アトラスが「そんなに毛布はいらないと思うよ」と笑う。
「洞窟だけど、しっかりと空気が抜ける構造になってるから、薪を|焚《た》けるんだ。だから寒くはないよ、たぶん」
「たぶんって何だよ。余裕があるくらい準備してた方が安心だろ?」
「まあそうだけど。じゃあ俺は食料を準備するから、リオは寝具とか日用品を準備して」
「わかった」
リオは頷くと、アトラスと別れ、アンを抱いて部屋へと戻った。