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「……なんでだよ」
呟いた声は、自分でも驚くくらい弱かった。
廊下に沈む夕焼け。
目の前には神代。
でも頭の中は、それどころじゃない。
展開が違う
完全に、崩れてる
「おい」
低い声。
「聞いてんのか」
はっとして顔を上げる。
神代が、すぐ近くにいた。
「なにしてる」
「いや、その……」
言葉に詰まる。
説明できるわけないだろ……
「ちょっと、考え事」
無難な答え。
でも神代はじっと見てくる。
「……変なやつ」
ぽつりと呟く。
それだけ言って、背を向けた。
足音が遠ざかっていく。
取り残される。
「……はあ」
その場にしゃがみ込む。
頭を抱える。
ダメだ、全然わかんねえ
一致してたはずの展開が、急にズレた。
それも、かなり大きく。
俺がいるからか?
その可能性が浮かぶ。
すぐに否定できない。
「……いい線いってると思うよ」
「っ!?」
反射的に顔を上げる。
声のした方向。
廊下の奥。
窓際に、一人立っていた。
……誰だ
見覚えがあるようで、ない。
でも――
「……白瀬」
自然と名前が口から出る。
白瀬 玲。
自分が描いたキャラ。
でも他の連中と違って、
“物語の外側にいるような存在”だったやつ。
「名前、知ってるんだ」
静かな声。
感情が読めない。
「そりゃ、同じクラスだし」
とっさに誤魔化す。
でも内心は冷や汗だった。
なんで今こいつが出てくるんだよ……
このタイミング、予定にないぞ
白瀬はゆっくり歩いてくる。
足音がほとんどしない。
「さっきの、見てた」
「え」
「神代と話してたでしょ」
「あー……まあ」
適当に返す。
でもその視線が、やけに刺さる。
「ねえ」
ぴたりと足が止まる。
目の前。
距離が近い。
「君、変だよね」
うわ、きた
「いや、そんなことーー」
「あるよ」
即答。
「最初からずっと、違和感ある」
言葉が止まる。
なんでだよ
そんな設定、こいつに持たせてないぞ…
「……何が」
なんとか絞り出す。
白瀬は少しだけ首を傾ける。
「説明するの難しいけど」
「“ここにいないはずの人”って感じ」
心臓が止まったみたいに静かになる。
バレてる……?
いや、そんなはずない。
そんな設定、描いてない。
「はは、何それ」
無理やり笑う。
「意味わかんねーよ」
でも、白瀬は笑わない。
「うん、わからなくていいよ」
「ただーー」
一歩、近づく。
「気になる」
目が合う。
逃げられない。
「君のこと」
……は?
一瞬、思考が止まる。
いや、ちょっと待て
それは展開的におかしい
お前、そんなポジションじゃないだろ!?
頭の中でツッコミが暴れる。
でも現実は止まらない。
「……なんで」
思わず聞いていた。
白瀬は少しだけ考えて、
「さあ」
とだけ言った。
「でも」
視線が外れる。
夕焼けを見る。
「こういうの、嫌いじゃない」
「何が」
「予定外」
ぞくっとする。
やっぱりこいつ、おかしい
他のキャラとは違う。
明らかに。
「……ねえ」
また視線が戻る。
「君、何か知ってるでしょ」
終わった
「知らねえよ」
即答。
ちょっと強めに。
「ふーん」
疑ってる顔じゃない。
でも納得もしてない。
「まあいいや」
あっさり引く。
「そのうちわかるでしょ」
「何がだよ」
「全部」
意味深に笑う。
そして、そのまま通り過ぎていく。
足音が遠ざかる。
一人になる。
「……なんなんだよ、あいつ」
でも、わかってる。
あいつだけだ
この世界の中で、
“何かに気づいてる可能性がある”のは。
ゆっくり立ち上がる。
展開は崩れてる
原因もわからない
でも一つだけ、はっきりした。
無視できない
白瀬 玲。
あいつ…
『絶対鍵だ』
夕焼けが、やけに赤く見えた。
〈登場人物紹介〉
白瀬 玲(しらせ れれい)→漫画にもあまり中心的に出てきていなかった、謎の多いキャラ