コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
※こちらに出てくるモブは【キスの意味(短編集)】の第2話『爪先(モブのみ)』に出てくるモブです(宣伝)
「藤澤さん!お疲れ様です。」
声をかけてきたスタッフを見て、僕は驚いた。
「お、お疲れ、様です・・・。」
以前他のスタッフと一緒に陰で僕の事を言っていたスタッフが笑顔で挨拶してきたから。
少しの間うちのチームのスタッフだったが、陰口言ってたスタッフ共々いつの間にかいなくなっていた。会社を辞めたのかと思っていたがそうではなかったようだ。
「あの、藤澤さん。少しよろしいでしょうか?」
「え?!」
今度は正面から何か言われるの・・・?怖い・・・。
「これ、お納めください!」
「へ?」
差し出されたのは、僕が以前どこかで欲しいと話したヘアトリートメントのボトル。
アメリカのもので現地でも入手困難なため、日本ではまず手に入らない。
仕事でアメリカ行った時に探したが見つけられなかった。
「これって・・・?」
「藤澤さん欲しいって昨年〇〇〇って雑誌のインタビューで話されてましたよね?」
「は、はい・・・。」
「それ以降入手したって話聞かなかったのですが、もしかしてもう入手済みでしたか・・・?」
「い、いえ。全然どこに行っても買えなくて!でもなんで・・・?」
「学生時代にアメリカに留学していたことがあったんですが、その時の知り合いがたまたまこのトリートメント会社の関係者で、一本だけ入手できたんです。なので、是非藤澤さんにと思いまして。」
「僕に・・・?」
「はい!」
「折角手に入ったんだから、自分で使った方がいいんじゃないですか?えっと・・・。」
やばい、名前覚えてない。
「藻部といいます。」
「すみません、僕人の名前覚えるの苦手で・・・。」
「全然!私の名前など覚えなくても大丈夫です。ただのスタッフですので。」
「いや、僕らはスタッフさん達に支えられてますからそういうわけにはいきません!」
「ありがとうございます。しかし、こちらの商品はやはり藤澤さんに献上したく存じます。藤澤さんの美髪の維持を一瞬でもお手伝いできればこの上ない幸せでありますっ。」
ここまで言われて拒否するのは逆に良くないよね・・・?ってかもう違う意味で怖い。
「ありがとうございます。」
差し出されたものを受け取ろうとした時
「何やってんの?」
元貴がボトルを手に取った。
「お疲れー、涼ちゃん。」
「元貴もお疲れ様。どうしたの?」
「もうすぐ打ち合わせだよ。行こう。」
そのまま腰に手を回され強制連行される。
何とか首をひねってスタッフさんにお礼を言う。
「あ、あの、ありがとうございます。」
スタッフさんは何故か涙を流して合掌していた。
「あんな奴にお礼なんて言わなくていいよ、涼ちゃん。」
「あんな奴って・・・。でも僕が欲しがってたトリートメントくれたし・・・。」
「あんなひどい事言われたのに、欲しかったものくれたから許すの?!知らない人からモノ貰っちゃダメって習わなかったの?」
「知らない人じゃないでしょ。名前覚えてなかったけど、少しだけでもうちのチームスタッフだった人じゃん。それに・・・。」
『大森さんと若井さんだけでよくない?』
『まぁ藤澤さんも人気あるけど、二人と比べるとどうしてもなぁ』
『そもそもキーボードって必要?』
『全部藤澤さん一人がやってるわけじゃないしね。ライブとかはサポートいるし。』
『ぶっちゃけいなくても変わらないよな』
「ひどい事っていっても、まぁ本当のことだし・・・。」
「怒るよ?」
「ごめんなさい。でもさ、なんか雰囲気変わってたよね。なんかあったのかな?」
「辞めると思ったけど、あいつだけ残ったな。」
「他の人は辞めたの?元貴何かしたの?」
「知らない。」
藻部「はぁ・・・今日も神(大森)が尊い・・・。」
【おわり】