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「__ちゃん!いつか___」
『うん、約束…』
『…』
又、この夢。
最近よく見るな。
もう何年も前の約束なのに、それが頭から離れない。
ずっと…会えてないな。
元気かな?
彼のことだから、きっと大丈夫だよね…
又…会いたい。
____私がまだ幼い頃の記憶。
両親の仕事柄、引っ越しばかりの生活だった。
別の土地に移り、それぞれの家に3年もいた事はなかった。
まあ、友達もいなかったしその家に特別な感情があった訳でもない。
「ゴメンな、ずっと同じ家に居させてやれなくて…」
父はいつも、苦しそうな顔をして謝ってくる。
私は子供だから仕方がない。
そう思わずにはいられなかった。
次第に母は、引っ越しばかりの生活に嫌気が差して仕事を辞めた。
そうすれば私の生活を壊さずに済む、そう思ったみたい。
「__、最後にあとたったの一回だけ土地が変わる。それのあとは、やりたいことを精一杯やりなさい。」
父はそう言った。
「やっと…やっと普通の暮らしをさせてやれる、ごめんね。ずっと、ずっと我慢させてしまって。」
泣きながら母も言った。
最後の引っ越しになるらしい。
父は私の為に部署を移動してもらったと後から聞いた。
今までのって、普通の生活じゃなかったんだ。
嬉しいよりも先に疑問に思っていた答えを見つけ、なんだ。と呆れた。
それと同時に何か特別なことが起こるのではないかとドキドキしている自分もいた。
引っ越し生活がなくなってから、もう数年たつ。
残念ながら特別なことも、生活に変化も感じられなかった。
「…別に、一緒じゃん。」いつもそう呟いてしまう。
相変わらず、両親は楽しそうだ。
家族の時間が増えたからだろう、「よかったね」私からはその言葉しか出てこない。
全てどうでもいいんだと思う。
おかげで学校にも馴染むことができた。
…と言っても、仲のいい友人はいないし只会話を交わすだけ。
私の居場所が見つからない。
行事も、会話も授業もそれなりに楽しんでいる。
けど、いつも心は満たされない。
「…特別なこと、か」
私に訪れるだろうか?
ただただそう考えることしか出来ない。
又、窓の外を眺めて空を見ている。
『今日も綺麗。』
空は変わらず綺麗で、心が洗われた。
ある日の空は青く、鳥が気持ち良さそうに空を飛んでいる。
変わり映えのない、日常。
そんな日に、彼が現れた。
別に普通の男の子だったし、関わることも最初はなかった。
彼は、たまたま同じクラスになった同級生。
何気ない会話が少し好きだった。
話し始めたのは、行事が終わったあとのこと。
そのあとも、私に笑顔で話しかけてくれた。
なぜだろう。
彼が笑うと癒やされて胸がドキッとしてしまう。
名前を呼ばれるたびに、変に意識してしまって…
「__ちゃん?」
『…えっ?ごめんどうしたの…』
だめだ、また変な感じ。
「今度の休み○○公園でお祭りやってるんだって!一緒に行こうよ!」
お祭りか、浴衣…着たら喜ぶかな。
『うん、いいよ行こ う。』
「やったー!」と喜ぶ彼が愛おしい。
ずっと一緒にいれたらな。
そう考えない日はなかった。
私はやっとこれが特別なことだと気づいた。
人生で最初で最後の恋。
この感情は、私だけが知っていればいい。
彼が大好きだ。