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「ねえてか保湿した?」
冬のある日、リビングでソファに座る勇斗がテレビを見ながら、ふと隣にいる仁人の腕をつついて言った。
仁人はぼんやり目をこすりながら、「え?…したした」と返す。
したしたってなんだよ!曖昧だな!と勇斗は心の中で叫ぶ。
「てかお前さ、俺ばっかにうるさいけど自分はやってんの?」
「今俺の話はいいから!話変えんな」
自分はほとんど保湿とかしないくせに、仁人の肌に関しては異常なまでに神経質な勇斗。
白くてもちもち、つるつる、すべすべ、赤ちゃんみたいな肌を冬の乾燥から絶対に守りたい勇斗だった。
「ファンも絶対好きなだろ!仁人のもちもちおはだ♡乾燥なんてさせるものか」
心の中で拳を握りつつ、勇斗はそっと仁人の手を握ってみる。その手は保湿に力を入れているおかげかもちもちだった。
仁人は眠そうに目を細めて「…も〜うるさいってぇ〜、夜なんだから」と、力の抜けた声を出していた。
__________
ある日の夜。
仁人は超眠そうな顔でお風呂から上がり、髪を乾かし終わったのかゆっくり立ち上がって寝室の方へと向かった。
その後ろ姿を見て、勇斗はすぐに反応した。
「ねえ保湿したのー?!」
仁人はへにょへにょと肩を落として小声で答える。
「もう…むり…ねむいねむい、ねかせてくれ」
「えー!ダメだ!!乾燥しちゃう!俺がやるから、寝転がってろ!はやく!」
勇斗は、手にクリームを取り、仁人を抱え込むようにベッドまで連れて行く。
布団の上に仁人を寝かせると、ズボンの裾をまくり、腕もまくってクリームを塗り始める。
ふくらはぎも腕も、指で優しくマッサージしながら塗ってやると、仁人は力の抜けた声で小さくため息をつき、すやすやと寝てしまった。
ふー、今日も乾燥から仁人を守ってやったぜ
そんなことを考えながら、勇斗は満足そうにベッドの横に座り込み、仁人の寝顔を見下ろす。
ほっぺはほんのり赤く、さらさらな髪の毛が重力通りに落ちている。
「…本当に、俺が守ってるやんなきゃな…」
そうつぶやきながら、勇斗はそっと布団をかけ直し、また明日もこのもちもち肌を守るぞ、と心に誓った。