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つづきです!
日帝視点
結局、小屋で夕方から朝方まで過ごしてしまった日帝は焦っていた。
日帝「修道院が私を探しているはず…行かなくては」
寝ている恐竜の身体から起こさないように離れると、土を払って服装を整えた。(と言っても、泥まみれの服に獣臭い身体は整えようがないが…)起きてしまったのか、恐竜が名残惜しそうに尾を身体に巻き付けてくる。
日帝がそっと尾をどける。
日帝「私は戻らなくては。ここには罠が沢山ある。もう来ない方がいい」
恐竜はグルル、と低く唸る。
日帝「また、会えたら会いましょう…さよなら。あなたに会えて良かった」
日帝は駆け足で小屋を出ていった。恐竜は追いかけてこなかった。
シスター「日帝!!ごめんなさい…ごめんなさい…」
日帝「顔を上げて下さい、シスター。私は無事ですから」
1日帰ってこなかった日帝は熊に食べられてしまったと言われていたが、自力で無事帰ってきたので修道院は騒然としていた。遂には司祭も出てきて、「貴女がいなくなったらこの修道院全体の損失だわ!」と泣きつかれて大変な騒ぎとなってしまった。日帝の「神器」は崇められ、修道会の間ではちょっとした有名人であったので、教皇から予算が多めに支払われていたのだ。日帝がいなくなれば予算は減額されてしまう恐れがあったため、司祭は焦っていたのであろう。身体を清め、いつも通りの課業に勤しむ毎日が始まる。また、日帝の心境にも少し変化が起こった。森が以前より怖くなくなったことであった。
数日が過ぎ、日帝は修道院の病舎に勤めていた。病舎には病人も多いが、怪我人も多い。
日帝「マインツさん、また大工仕事中に屋根から落ちたんですか!」
マインツ「ハハ…すみません、修道女様。あなた様の「神器」があると思うとちょっとした無茶もしちゃうんですよ」
日帝「もっとご自分の身体を大切にしなければ。神は見ておられますよ」
マインツ「!それもそうだなあ…」
日帝が話していると、病舎の扉が静かに開いた。
日帝「…!」
そこには、金のブロンドに細身だが筋肉の付いた、図書館の書庫で出会った青年が立っていた。
シスター「え、日帝!あんたの知り合い!?」
日帝「あ…いや…」
美青年の登場にシスター達はちょっとした騒ぎになっていた。それを老齢のシスターが睨むと一気に静まり返った。老齢のシスターが青年に尋ねた。
日帝「どうなされたのですか?お怪我ですか?」
???「俺の怪我じゃない…。我が愛馬の怪我だ」
日帝「…馬?」
シスター達には今度は困惑の色が広がり、老齢のシスターも困ってしまった。
日帝「それなら、私が診ましょう」
シスター「!日帝!」
日帝「私も馬を飼っているので…。診れますわ」
シスター「おお…!それならば診て差し上げなさい」
老齢のシスターは明らかに安堵の表情となった。青年に案内されて病舎の裏に行くと馬が繋がれていた。
???「フレデリック・ザ・グレート。3才のオスだ」
日帝「見事な馬ですね…よく手入れがされていますわ」
???「当たり前だ。この傷を診てくれ」
青年が指差す場所を診ると、馬のわき腹に枝で深く切った傷があった。
???「森を走っているときにやってしまった。辛そうなんだ、治してくれ」
日帝「分かりました」
患部に花弁を吹きかけると、肉が繋がって傷口がみるみる塞がれていった。
「これで大丈夫ですよ」
振り向くと、青年はじっと日帝の顔を見つめていた。
日帝「…?終わりましたよ」
???「ああ…すまないな。助かった」
お金を渡し、青年は素早く馬に乗ると駆けだしていってしまった。