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一方のサンディ国では、以前のように晴れの日ばかりが続くようになった。
加えてアメリア国が大雨による被害で水の運搬・輸出が不可能となり、サンディ国は以前よりも深刻な水不足に陥っている。
起床したヘリオスはベッドから下りると、上半身が裸のままで窓の前に立つ。カーテンを少し開けると晴天の朝日が眩しくて目を細める。
決して清々しい朝ではない。雨と水が足らずに枯渇した国の王であるヘリオスは、焦りによって心までが枯渇していく。
(兄貴が帰国したから雨が降らないのか? それともレイニルちゃんがいないから?)
やっと王位を手にしたヘリオスは決して自分に原因があるとは疑わない。
水不足を解消する方法を考えた時に、晴れ男のシャインを追放するか、雨女のレイニルを連れ戻すかの二択の考えしか浮かばない。
その時、ふと腕の素肌に温かく触れてくる感触に気付いて横を見る。いつの間にか隣にいたローサが頬を触れさせていた。
「……もう、ヘリオスったら。ちっとも幸せそうな顔をしてませんわ」
ローサは雑に下着を身に着けただけの格好で頬を膨らませている。両思いになって幸せな夜を過ごしても、朝になるとヘリオスの顔が沈むからだ。
まるで夜にも満足してないように感じて、ローサまで気持ちが沈んでしまう。乱れた金色の長い髪をかきあげると、わざとらしく顔を背ける。
「そんな事ないって、オレは幸せだぜ! ほらローサ、こっち向けよ。おはようのキス」
そう言って無理に笑って口付けてくるヘリオスを見るのは余計に辛い。唇を離すと途端にヘリオスの思考も離れて別の所へ向いてしまう。
「なぁ。やっぱりレイニルちゃんを取り戻そう。兄貴が取り戻せないならオレが……」
その言葉を聞いたローサの青い瞳が見開かれる。ヘリオスが国のために雨を降らそうとしている意図は理解している。
本当は優しいヘリオスが、シャインを追放するという選択肢を選ばないという事も。それでもローサの感情がそれを許さない。
「そんな必要はないですわ! ヘリオスはまだ雨女に未練がありますの!?」
気付けば怒声と懇願が混じった声で涙目になっていた。ローサにしてみればヘリオスの提案は屈辱でしかない。
ローサとレイニルの姉妹は容姿が似ている。そっくりな妹と見比べられるのが、ヘリオスがレイニルを必要とするのが悔しいと思ってしまう。
ヘリオスを本気で愛した今だからこそ生まれた嫉妬という辛さ。どうしたらいいのかローサ自身も分からない。
……だからこそ、禁断の言葉を口にしてしまう。
「ヘリオスは私と国のどっちが大切なんですの!?」
ローサの問いかけは、王としてのヘリオスにとっては残酷な選択肢だった。男としてなら確実にローサだと答える。
これに即答できないという事が、ヘリオスの王としての器を示す答え。
間もなく二人は、その残酷な現実を目にする事になる。
着替えを終えたヘリオスとローサが同時に部屋を出ると、廊下では側近の男性が待っていた。
「ヘリオス様! つい先ほど、軍がアメリア国に向けて出兵いたしました」
「なんだと? オレはそんな命令は下してねぇよ!」
「ですが、隊長命令だとか……」
それを聞いたローサが不安げにヘリオスの顔を見る。
「もしかして、それってシャイン様ではなくて?」
「兄貴か! ありえるな、何考えてんだ! アメリア国と戦争でもする気か?」
シャインが軍隊に入隊したとは聞いていたが、王位を退いたシャインの仕事に口出しはせずに放置していた。
このタイミングでの出撃といえばシャインの目的は明確。レイニルを力ずくで奪い取りに行くとしか思えない。
(武力行使とは、兄貴らしくねぇな……)
そんな違和感を覚えるが、国王ではないシャインには背負うものがない。国よりもレイニルを優先して感情のままに動ける。
ある意味、今がシャインにとって一番自由で最強、無双状態と言えるのが恐ろしい。
「追いかければ、まだ間に合いますわ。行きましょう」
「あぁ。国王が誰なのかを思い知らせてやる!」
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ローサに背中を押されたヘリオスは、ついにシャインと衝突する覚悟を決める。
コメント
1件
ヘリオスの自己中さが笑えますね。焦りを感じながらも、決して自分を疑わない徹底ぶりが、王としての器の狭さを物語っていて。一方、“国を捨てて感情のままに動くシャインは最強”という概念は伏線感がすごくあります。ローサの「私と国どっちが大事!?」という問いが、どんな残酷な現実を呼び込むのか。兄弟対決の行方も気になりますが、私はこの身勝手な男たちの選択を見届けたくなりました。