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「ん……んんっ」
ベッドの上で目を覚ます。暖かな空気を全身で感じながら。
横になったまま背筋を伸ばすと朦朧としていた意識が少しずつ覚醒していった。見ていた夢の記憶を忘れてしまう程に。
「……昼前か」
ケータイで時間を確認すると12時前と判明。今日は土曜日。学校が休みの日はいつも怠けた生活を送っていた。
「う、うわあぁあぁぁっ!?」
部屋を出た後は階段を下りる。しかしまたしても途中で転落。壁に激突するまで何度も体を回転させた。
「いつつ……はよ」
「おはよ~。大丈夫だった?」
「ま、まぁね。まったく朝から派手なパフォーマンスを披露しちゃったかな」
「誰も見てないけどね」
リビングへとやって来るとテレビを鑑賞中の妹を発見。珍しく先に起きていたらしい。
「母さん達は?」
「さっき出かけたよ。華恋さんの転校の手続きだって」
「あぁ、そっか」
土曜日に学校に行くと言っていた事を思い出す。父親は部屋で寝ているのか彼女1人しかいない。挨拶を交わすと顔を洗う為に洗面所へと移動した。
「いっつぅ…」
一部が黒ずんだ左手に小さな衝撃が走る。昨日に比べたらマシになったがダメージはまだ存在。
「……ん」
このアザを見ると嫌でも思い出さずにはいられなかった。昨日の豹変した女の子の姿を。
「もうご飯食べた?」
「まだだよ~。お母さんがサンドイッチ作ってくれてる」
「お? 本当だ」
キッチンのテーブルに三角形の物体がラップされた状態で置かれているのを発見。そのうちの1つを摘んで口に入れる事に。食べ終えるとソファに寝転がっていた妹の上に腰を降ろした。
「ちょっと、どいてよっ!」
「この番組面白い?」
「重いってば、邪魔!」
「うおっ!?」
落とされそうになったので横に場所を移動する。直後に容赦ない蹴りが腕に命中した。
「痛いな。何するんだよ」
「セクハラ~」
「いやいや、背中に座っただけじゃないか」
「セクハラ、セクハラ~」
妹とじゃれあいを開始する。最近は華恋さんのせいで家の中でも緊張しっ放しの状態。なのでこういうやり取りが久しぶりに感じられた。
「ふぃ~」
落ち着いた後は左手に新しい絆創膏を貼る。ソッと触れれば痛みを感じない程度には和らいでいた。
「女の子を助けた俺、超カッコいぃ~とか思ってんでしょ」
「……思ってないって」
「やだわ、この人照れちゃって。可愛い」
「香織は全然可愛くないけどね」
「ひ、酷い…」
実際は助けたりなんかしていない。落ちてきた荷物の話云々は全部ウソ。ただ隣にいる彼女には本当の事を打ち明けられなかった。
「ねぇ、香織は華恋さんの事どう思う?」
「え? 何々、もしかして惚れちゃった?」
「そうじゃなくてさ。あの人の印象というかイメージというか」
「それ前に私が聞いた事じゃん」
「あれ、そうだっけ?」
数日前の記憶を思い出す。家族が1人追加された日のやり取りを。ただあの時と今とではその印象は正反対。自分の中での同居人のイメージは最悪女へと変わっていた。