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すぐに私のそばに来た篤久様が
「策士な真奈美さんもいいね」
と耳元で囁く。
ちょっ……ちょっと近いです……って。
ビックリした……
結局、ここから1時間半ほどのところにある業者提携マンスリーマンションが二部屋空いているというので、遥香たちはそこへの入居を即決した。
「ありがとう……」
「…真奈美、ありがと」
トラックが出たあと、源田さんと遥香が私に言う。
「いえ、では失礼します」
私はもう関係ないと、両開きの玄関ドアを片方だけ閉めてロックする。
篤久様も
「お疲れ様」
と入って来たけれど、ご主人様はドアの外で遥香たちに言葉を掛けた。
「賃貸料も今はカードが使えるでしょうが、引き落とし日までに通帳残高が無ければ支払えないということになりますよ?これまでの残金があればいいですが、そこは私には分からない。なければ今すぐに働いて入金しないと、電気が止まったり、部屋の退去を命じられると覚えておいてください」
そうだよね……今はカードが使えても、引き落とし出来ないとカードも止まるし、何もかも止まる。
ご主人様が入ってくると、入れ違いに運転手さんが出て
「門を閉めますから、出てください」
と二人に言っているのが聞こえたけれど、そのままドアは閉まった。
「ふぅ……外は暑い。篤久、真奈美さんの病院は?」
「知り合いの医者が夜間診療に出るらしいから、18時に総合病院。もしくは本当に打撲だけなら、その時間にオンライン診察をして診断書だけ出せるらしい。真奈美さん、どうする?」
「診断書だけで十分です…それも必要かどうか……」
「うん、それはゆっくりと相談しような」
また私の頭をポンポンとした篤久様は
「じゃあ、オンライン診察で問診だけ受けて。そう連絡しておく」
とスマホを持って操作する。
「失礼します。本日の勤務時間が終了しましたので、私はこれで失礼しますけれど…ひとつ今後のことでご相談がございます。少しだけお時間を頂戴出来ますか?」
田中さんがご主人様にそう尋ねると
「構いませんよ。リビングに冷たいお茶だけ用意してください。君たちの分も用意して、座って話そう。広瀬さんも一緒に」
ご主人様はそう答えながら、私の背中に手を添えてリビングに促した。
リビングに5人が揃うと
「田中さんの帰宅が遅くなるといけないから、まず田中さんの話を聞こうか」
とご主人様がおっしゃる。
「ありがとうございます。今後の弊社から中園邸への勤務形態について、ご希望を伺いたいと思います。ご家族が半分になり、桑名さん…じゃないのね……川辺さんを直接採用されるということですから、住み込みの広瀬さんと平日5日通いの前川さん、北田さん、週2回の私……というままでいいのかどうか」
「まだ、真奈美さんの仕事の相談をしていないからね。どうしようか…」
「あの……私からすみません…言ってもいいですか?」
「広瀬さんにも大いに関係のあることですから、どうぞ」
座ったまま少し頭を下げた広瀬さんは、エプロンの上で手を重ねて口を開いた。
「篤久様と大門様のお見合いの話が出た時のことです……遥香様が、川辺さんが篤久様にちょっかいを出しているって、前川さんと北田さんに話したんです」
「「くだらない……」」
声を揃えたのが篤久様と田中さんというところが、面白い。
「そうなんです、くだらない……けれど、二人は真に受けて川辺さんに嫌味を言ったりしていたので私も腹立たしくって……あ、同僚のことをここで文句言うということではありません。ただ、週明けからまた二人が川辺さんと会うのは…川辺さんは直接雇用だとか言って、また嫌味や嫌がらせ行為の可能性があると…予想ですが……心配ですし…」
広瀬さん……ご心配、ありがとうございます。
コメント
4件
広瀬さんの気配りに👏👏👏真奈美ちゃんのために前川&北田はもう要らないよね! やっと出で行ったー🥳 これから晒されて世間の厳しさを体感だね
うん。前川・北田は要らないね。 もう、くだらない話を聞いたから篤久様は切るでしょう。篤久様から その二人は気分が悪いって言うんじゃない?真奈美ちゃんを守り抜くと思う🥰 フフꉂ🤭また楽しみだわ。😊
篤久様🤭真奈美ちゃんのまだ終わってない復讐に気付いてるとみた。なぜ廃墟じゃなくマンスリーマンションやらをあえて教えたかを😏 ありがとうって言ったよ😳でも終わってないのよ〜お2人さん!!! そう!どこに消えた!って思ってた腹立つ前川、北田の2人!!!そういえば通いだった。来週から来なくていいんじゃないかな?だって篤志様と篤久様だけだし、週2で田中さんいらっしゃるしこの3人で十分かと。別の人入れると例の2人が余計なこと吹き込みそうだしね。