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凛音がイザナギさんと一対一で話をしたいと言ったので、凛音の好きなようにさせたら、イザナギさんから「神にならない?」という、衝撃的な誘いを受けた。
「…え?」
やっぱり琳寧ちゃん驚いてる。そりゃそうだよね。急すぎるもん。
「ほら。さっき言ったでしょ?私の妻を助けてって。」
「はい、言いましたけど…」
「その為には神になって貰わないと助けれないからさ?どうだい?」
とは言ったものの、琳寧ちゃんは話を理解できていないね。もう少し詳しく言おうか。
「もし君が神に成り、妻を救ってくれるのならば、君が居て良い居場所を作る。さぁ、どうする?」
私も鬼じゃない。琳寧ちゃんの意見は尊重するし、凛音くんとの約束で居場所を与えることは確定していることではあるんだけど…
「私、やります!」
お!!
「正直、まだ状況も掴めていないし、なんで私なんかが神に成れるのか、どうするのが正解なのかさえも分かっていませんが…それでも…」
「イザナギさんの役に立てるのならば、やります!!むしろやらせてください!!」
なるほど。彼女は私が思っていたよりも心優しい子だったよ。
すると、どこからか笑い声が聞こえてきた。
「よく考えずに即答かよ!ま、そうゆうところも愛おしく感じるんだがな。」
この品のない口調、琳寧ちゃんに似ているけど低い声…容易に何者かが想像できる。
すると、琳寧ちゃんの影がモゾモゾと動いている。するとソレは人の形を作っていった。
「さて、俺の出番はなかったみたいだな!」
「えっと…誰?私と似ている気がするけど…」
と琳寧ちゃんが戸惑っていると
「俺だよ俺!凛音だよ!!」
「…ん?凛音…?」
「声だけで分かってほしかったな…」
と少し落ち込む凛音。私は元々知っていたから、そう驚きはしないけど…。こうして反応を見るのも面白いな。
「というか、どうして凛音が出てこれているの?」
「あ〜、えっと…それはだな…」
…なるほど。凛音は“この状況”を隠したいのか。
「琳寧ちゃん、それはね、この空間のお陰なんだよ」
「そうそう!!」
と凛音は全力で頭を縦に振る。でもこれ、誤魔化すのは無理があるんじゃ…?
「そうなんだ…神様って、やっぱり凄いな…」
いや通用するんかーい。
すると凛音がこっちを見て親指をあげた。冷や汗ダラダラじゃないか。そこまで焦ることなのか…?
「まぁまぁ、神に成るって決まったし、これから琳寧ちゃんはいろんなことを知れるよ!それより…行こっか!」
「え?行くって…どこにですか?」
「…おいおい琳寧。流石に鈍感すぎるぞ。この流れで行くって言われたら、そりゃ…
新しい情報が多すぎて、なかなか頭の整理が追いつかない。取り敢えずイザナギさんからの提案を受けて、神様に成るのは決まったけど…これから早速、天界に行こう?え?
「琳寧、天界については分かるよな?」
「確か…『神様と天使、神獣が住むところ』だったよね?」
「その知識も、琳寧ちゃんのお母さんが教えてくれたのかい?」
「はい」
私がそう答えると、イザナギさんは少し黙って、何か考え事をしていた。
「まぁいいか。」と呟くと、
「琳寧ちゃんも神に成るんだったら覚えておいてね。」
と、説明を始めた。
「天界に行くには、『神門』という場所を通らないといけないんだ。それは人間界と天界を分ける大事な門なんだけど、特に『ここ!』っていう場所にある訳じゃないんだよね。だからこうやって…」
と言って、イザナギさんは何もないただの空間に、ノックのように軽く叩くような仕草をした。すると、何もなかったはずの空間に、波紋が生まれた。それと同時に、向こう側が見えない鳥居が出てきた。
「これが神門。この先はもう天界だよ。ほら、ついておいで」
と言いながら、イザナギさんは神門に入っていった。私たちも、それに続いて入っていった。
神門の先には、和風の街並みがあった。天気もよく、たくさんの人?で賑わっていた。
するとイザナギさんは咳払いをして、私たちの方に向き直った。
「ようこそ天界へ!!ここは神々が住まう世界。本来ならば、君らのような者が立ち入ることは許されない。しかし、私は君らを歓迎しよう。」
…急にどうしたんだろう。そう思い、私は黙ってしまった。
「…ちょっと。何か反応してくれないと恥ずかしいでしょ〜?」
あ、ここは何か言わないといけない場面だったんだ。
「…あ、今のは一体なんだったんですか?」
「今のは、ここにいるヒトたちに琳寧ちゃんの存在を知らせるしきたりだよ」
「しきたり…?」
「そう。さっき言った通り、ここには人間は入ってきちゃダメなんだよ。でも、『神が連れてきた人間』であれば大丈夫なんだ〜。『この子は私が連れてきた人間だよ。だから意地悪しないでね〜』ってことを、ある程度の者に伝えたんだよ」
ある程度…。つまり、知らないヒトも何人かいるってことか。
そう考えていたら、街にいたヒトたちが一斉に整列して、こちらに振り向いた。そして
1人かと思うくらい、みんな一斉に言った。
「えっと…この方たちは誰ですか?」
「このコらはみんな『天使』。神の世話だったり、手伝いだったり、人間と関わったりとか、いろんな仕事をしているコだよ〜」
神からのお告げを人間に届けるのは天使の役割だって聞いたことがあるけど…お世話もやってるんだ。忙しいんだな…。というか、この並んでるヒト全員天使なんだ…。
「神自身に付いている天使の出来と数は、その神の力を示すことにも繋がる。だから、丁寧に扱わないといけないってこと、覚えておいてね」
「はい!…あの、額に赤い模様が付いている天使は?」
「あぁ、あれは『天使長』。天使を束ねる者だよ。天使は仕える神によって、仕事の内容とかが全く違うんだ。だからそこでグループ分けがされる。そのグループの長が天使長だから、天使長は神と同じ数いるってことだね!」
「他にもいろんなヒトがいるんだけど…って、あれは…。」
と言いかけて、イザナギさんは一点を見つめたまま立ち止まった。その視線の先を見てみると、かなり高身長の男のヒトがいた。両手に大荷物を持ってるけど…誰なんだろ?
すると、そのヒトはこちらに気付き、近くの天使に大荷物を持たせ、近付いてきた。
「あれ、ナギくんじゃ〜ん!久しぶり!!」
「やぁ、久しぶりだね。おや?サングラス新調したのかい?」
「そうそう!いいでしょ〜?」
そのヒトとイザナギさんは仲がいいみたい。
「…あれ、そういえば凛音はどこに?」
「俺はいつも通り、お前の中にいるぜ」
「あれ、さっきは出てきてたのに。」
「それはあの空間だけな。あ〜でも、神の力を借りれば出て来れるぞ」
そうなんだ。やっぱり神様は凄いな。
「そんなことより琳寧。思いっきり息を吸って止めろ。」
そう言われたので、私は息を吸って止めた。
「…よし、もう息していいぞ」
「何かあったの?」
「う〜ん、秘密。」
え…そんな…。
「おジョーさん、なんて名前なの?」
いつの間にか、さっきまでイザナギさんと話していたヒトが私の目の前でしゃがんでいた。
私と目線を合わせるためにしゃがんでいるんだろうけど…私は背が低いし、このヒトはすごく背が高いから、これでもまだ目線が合わない。…ちょっと申し訳ない。
「えっと…私は琳寧といいます」
「琳寧…ねぇ…」
と言いながら、このヒトはサングラスを少し下げ、上目遣いをするように私を見た。…このヒト、ずっと見てる…。私の顔に何かついてるのかな…?
「…ちょっと?そんなに見たら琳寧ちゃんが怖がる。そろそろいいかい?」
とイザナギさんが言ってくれた。
「ん?あ、ごめんごめん。」
そう言ってそのヒトは立ち上がった。その時、「気のせいか」とボソッと呟いたのが聞こえた。なんのことだろ?
「さて…オレは『釈迦』。よろ〜」
釈迦…?えっと、仏教の開祖のはず。慈悲とか、諸行無常とか、因果応報とかの教えを広めた人ってのは知ってる。だからもっと落ち着いたヒトだと思ってた…。なんというか…すごくチャラい。
「琳寧チャン、甘いものは好き〜?」
「甘いもの…砂糖ですか?味はとても好きなんですけど、そんなに…。」
と、私が答えると、なんだか周りのヒトたちは私の方を見て固まってしまった。…え、変な事を言ってしまったのかな…
「あのね、琳寧ちゃん」
しばらくの沈黙の後、イザナギさんが口を開いた。
「世の中には砂糖の他にも甘いものはいっぱいあるんだよ…?」
衝撃の事実を知った。
「琳寧チャン、これ食べてみなよ」
と言いながら、釈迦さんは棒の先に雲が刺さっている物を差し出した。…え?これを食べるの?というか、食べれるの…? 取り敢えず私は口を開け、雲を食べてみた。
「おや、感情表現が苦手だと聞いていたけど…これはよく分かりやすい反応だね」
「ね〜!すっげぇ目ぇ見開いてんじゃん !…どう?美味しい?」
釈迦さんがそう聞いた。
「雲って、甘い食べ物なんですね…!」
そう言うと、凛音が吹き出した。何か面白いことでもあったのかな?
あれ、釈迦さんは後ろを向いて震えてる…どうしたのかな?
「琳寧ちゃん、それは雲じゃなくて、『綿あめ』って言うお菓子なんだよ」
とイザナギさんが教えてくれた。
「綿あめ…!なるほど、雲じゃなかったんだ…。なんだかこれを食べると、ほっぺが痛くなりますね。食べてはいけなかったのでしょうか?」
そう聞くと、イザナギさんは凄くニコニコした顔で、
「それを、『ほっぺが落ちた』って言うんだよ」と言った。
お母さんが昔言っていた気がするけど、こうゆうことを指してたんだ…!
すると釈迦さんがやっとで振り向いて、
「そっか〜、琳寧チャンは綿あめが気に入ったみたいだね〜。なら、それ全部あげちゃう!!ほら、食べて食べて〜!!」
と言ってくれた。お言葉に甘えて、私はその綿あめを全部食べてしまった。口に入れた途端に消えてしまうその感触も楽しいし、何よりも甘い。
私が食べる様子を、釈迦さんとイザナギさんはずっと嬉しそうな顔をしながら見ていた。理由はわからないけどね。