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ここでも発動ド天然涼ちゃん
涼ちゃんがんば!
お礼参りを期待してしまう私がいます……🤤
「若井、この後何かある?」
涼ちゃんと二人でバラエティ収録に参加した後、帰る準備をしながら涼ちゃんが聞いてきた。
「特にないよ。飯でも行く?」
「ちょっと聞きたいことあってさ。うち来れる?」
「うちって、阿部さんとのところ?」
今涼ちゃんは阿部さんと一緒に住んでいる。そんな愛の巣に単身乗り込む勇気俺にはないんだけど。
「ううん。前住んでたところを荷物置きとして残してて、亮平君いない時はたまにそっちに帰ったりしてるんだ。だから今日はそっち。」
「阿部さんは大丈夫なの?」
「今日明日は泊りでロケだから大丈夫。連絡もしてるし。」
「そっか。分かった。」
阿部さんがいいなら大丈夫だろう。
マネージャーに送ってもらい、前の涼ちゃん家に来た。
「ごめん、若井。生活の主軸をあっちにしてるからお菓子と水くらいしかないや。」
「いいよ、別に。」
「コンビニで買って来ればよかった。なんか出前頼む?」
「それより、家に呼んでまで聞きたいことって何?大体想像つくけど。」
「想像つくんだ?」
「夜の営みのことじゃないの?」
あっけらかんというと、涼ちゃんは驚いた表情をした。
「まぁ、そうなんだけどね…。」
「何が聞きたいの?」
「若井と元貴はどっちが、その、受けなの…?」
「うーん…大体7:3で俺かな。」
「若井なんだ。てか、役割変わるんだ?」
「俺としてはどっちでもよかったんだけど、なんか気づいたら俺が抱かれるばっかりだったから、俺も抱いてみたいって言ったの。そしたらさ、元貴って好奇心の塊みたいな奴じゃん?すぐ逆を試してみようってなって、そこからたまに入れ替わってる。」
「へぇ…。」
「涼ちゃんは?やっぱり受け?」
阿部さんがあっちのチーム内で、うちで言うところの涼ちゃん的ポジション(姫ポジ)に居ることはなんとなく知っていた。けど、俺の中ではやっぱり涼ちゃんの方が受けっぽい印象があるんだよなぁ。
「….。」
「涼ちゃん?」
「まだです。」
「え?」
「一切そういうことはありません。」
「嘘でしょ?!あんだけ溺愛されてんのに?!」
衝撃の事実に驚きを隠せない。
「…僕色気ないのかな…。」
「ストップ。その思考は止めた方がいい。変な方向に暴走する予感がする。」
「へ?」
「ポンコツなんだから下手なことせず、阿部さんに直接”抱いて”って言えばいいじゃん。」
「なっ?!」
涼ちゃんの顔が真っ赤になった。
「無理だよ!そんなストレートな言い方!!」
まぁ言えたらこんなことで悩まないよな。
「んー、じゃあ可愛いパジャマ着て一緒に寝ようって言えば?」
「…後ろから抱きしめられて寝ただけだった。」
「あ、実行済み。しかも失敗…。なら、長湯して火照ったところで”あっつ~”とか言いながら胸元パタパタしてちらりズムとか。」
「『湯冷めしないようにね』って常温の水渡された。ついでに髪乾かしてくれた。」
「理想の彼氏&気遣いの塊!じゃなくて、それも失敗してんだ…。」
「亮平君はさ、僕とそういうことしたいって思ってくれてないってことだよね…。」
「いやぁそれはないんじゃない?」
いつかの阿部さんを思い出す。俺と涼ちゃんが仕事で一緒に居た時にたまたま阿部さんに会って、俺も交えて三人で少し話したことがあった。笑顔だったけどずっと阿部さんからチクチクとした波動を感じていた。
嫉妬と言えば可愛げがあるけど、あれは確実に殺意だった。
実際殺す殺さないというわけじゃもちろんないだろうけど、それほどまでに強い執着…もとい愛情を阿部さんは涼ちゃんに対して持ってる。それに気づかないポンコツ涼ちゃんはある意味幸せなのかもしれない。
「ねぇ、涼ちゃんさえよければなんだけど、元貴にも相談してみない?」
「元貴に?」
「俺らは花吐き病になるほど片思いを拗らせてたじゃん?だから相手も同じ立場の人の方が気持ち分かるんじゃないかなって。」
「なるほど!若井天才か!」
「はははそれほどでも。」
面倒だから元貴に丸投げしよっと。
「でも、元貴今忙しくないかな…。」
「元貴言ったんでしょ?元貴にとって涼ちゃんも大切な人なんだよって。」
「うん…。」
「ラインしてみて元貴が無理そうなら俺らで解決策考えよう。」
「ありがと、若井。」
元貴に涼ちゃんが悩んでる旨と今涼ちゃんちに二人でいることをラインする。すぐに返事が来た。
『マネージャー向かわせたから今から俺んち二人で来て。』
数分もしないうちに、インターホンが鳴った。出ると涼ちゃんのマネージャーで
『お迎えに上がりました。』
元貴の家
「じゃあ最初っから話してくれる?」
「阿部さんが涼ちゃんに手を出さないから涼ちゃんが不安になってる。以上です。」
「若井?!」
「それ以上でもそれ以下でもないでしょ?」
「そうだけど…。」
「これは…お礼参り案件なのか…?いや、でも大切にしてるってことなんだろうけど…。」
ぶつぶつという元貴。しばらくして”うん”と一つ頷くと、俺と涼ちゃんを見る。
「まぁ大体分かった。とにかく黒幕は拗らせ両片思い。それがすべてを引き起こしたってことだ。」
「どういうこと?」
「涼ちゃんは嫌われたくないから阿部さんに直接的なこと言えないんでしょ?」
「うん…。」
「憶測だけど、阿部さんは涼ちゃんに嫌われたくないから一生懸命好青年演じてるんだと思うよ?」
「え?」
「大切にしたい、嫌われたくない、そういう思いからなかなか手を出せずにいるんじゃないかな。」
「そう…なのかな…?」
不安そうに俯く涼ちゃん。ちょっと茶化しちゃったけど、当の本人は愛されてるか不安にもなるよな。
「阿部さんっていつ帰ってくるの?」
「明日の夕方こっちに帰って来るけど、メンバーと食事してくるから多分帰りは21時くらいだって言ってた。」
「ほぉ~ん。」
元貴はにやりと笑った。これは何か企んでるな。
「涼ちゃん、とりあえず阿部さんから連絡来たら普通に返しておいて。今日のことは秘密でね。」
「でも涼ちゃん、阿部さんには俺と会うって連絡してるよね。」
俺の言葉に、涼ちゃんはキョトンとして
「え?してないよ?」
「でも連絡してるっていってたじゃん。」
「あ、それは僕の元の家に行くって連絡したんだよ。」
元貴は頭を抱え、俺も同じく頭を抱える。これ、バレたらヤバいやつや…。
「…ねぇ、涼ちゃん。俺と若井は多分セーフ…じゃないと仕事にならないから大丈夫だとは思うけど、阿部さん以外の人と会う時はちゃんと阿部さんに連絡するんだよ?特に同性の時は!」
「え、なんで?」
本気でハテナマークを頭の上に浮かべてる涼ちゃん。マジで言ってんの?
「心配するでしょ?多分…。」
当たり障りのない言葉で元貴は伝えるが
「でもあっちからしたらいちいち言われても面倒臭くない?」
伝わってねぇな、これ。元貴は根気よく涼ちゃんに説明する。
「涼ちゃんは阿部さんが遅くなる時とか何も言わないより今回みたいに”メンバーと食事してくるから多分帰りは遅い”って言われたら安心するでしょ?」
「なるほど、たしかに。分かった!」
笑う涼ちゃんは、きっと事の重大さに気づいてない。
「あ、それと、ちょっとお願いがあるんだけど。」
元貴はとあることを涼ちゃんにお願いした。
涼ちゃんだけ帰り、俺はこのまま元貴の家に泊まる。
「元貴何しようとしてんの。」
「涼ちゃんを暴走させたら変な方に行きそうじゃん?ならあっちのケツ叩いた方がいいんじゃないかと思って。」
「うまくいくかなぁ…。」
「後は神のみぞってやつだよ。」
ロマンスの神様、どうかうちのポンコツお姫様をよろしくお願いします。