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「どこ向かってんの、これ」
数分たった後、俺は新之丞に問い詰めた。今頃?と思うかもしれないが。
「綺麗な場所があるのです。」
「そう……」
_ 神様の癖にちっとも幸福運んでくれないじゃない。勝手にこの家に住み込んでる癖に……
小さな声で、俺の名前を呼ぶ声が聞こえる。
「ミノル。」
「……」
俺はハッと飛び起きた。俺は気付かないうちに眠っていた
心配そうに、新之丞は俺の顔を見詰めてきた。
嫌な声と新之丞の優しい声が重なってとても気持ち悪い。
_ 貴方になにが分かるっていうの…
_ 結局何も変わらなかったな。
_ 不幸しか運んでくれないじゃない
(あぁ……まじうるせぇ)
「ミノル、着きました。わたくしの神です。ここから少し歩くと川が見えてくるんです」
新之丞は、にっこりと笑って俺の腕を引っ張った。
八つ当たりしたい気持ちは山々だった。こんな優しい奴、絶対裏がある。それを暴きたかった。
でも、たったちっぽけな俺の事情に、コイツを巻き込むのが気がひけた。
(やっぱ辞めとこう)
少しだけ、そう思えた。
手をひくこと、数十分。俺は、もう足が限界だった。かれこれ歩いているが、ちっとも止まりはしない。
しかも少し早歩きで、新之丞のスペースに合わせるのはとてもしんどかった。
俺の目からすると、新之丞は24歳だろうか。24だと言ってもこんなスタスタと走れるもんか?と目を疑った。
「新之丞、俺……」
「ここです。」
休みたいと言おうとしたが、それをいう前に目的地に付いてしまった。
その光景に俺は目を大きく開いた。
大きな綺麗な川と、せっせと何かを移動している人。藁で作ったような家と、何かしらの建物。本当に、昔に戻ったみたいな感覚。
俺が驚いていると、新之丞は口を開いた
「わたくしは、ここの風景をみるのがすきです。とても、落ち着くんです」
頬を緩めて、笑っていた。照れ臭そうにも見えた。
人がすき?風景がすき?新之丞の感情には、正直付いていけない。
……いや、ついて行かない方が良いのかもしれない。
この純粋な心を汚したくなかった。