テラーノベル
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「俺と結婚して欲しい」
何年その言葉を待ち望んだことか、有難いことに彼からそう言ってくれた。もちろん俺が出した答えは─────
「ねえ聞いた?一ノ瀬先生結婚したらしいよ!」
「え、嘘でしょ!?私狙ってたのに〜」
廊下でなにかさわいでいると思ったら一ノ瀬先生が結婚したとか。そんなわけないだろ。
「おい、一ノ瀬先生結婚したらしいぞ」
「なんの根拠があって?」
なんの根拠もないのに噂は変な方向に広がる。そういうものだ。
「お前信じてないだろ」
「当たり前だ」
「…指輪、左手の薬指に指輪がついてる」
「…は?」
「あれを見ても結婚したのが嘘だなんて思えるか?」
そう言ってうりが指さした方向は青葉先生と話している一ノ瀬先生だった。指導書を持っていて先生の左手の薬指に指輪がはめてあるのが見えた。
「…なんで…」
「…その人とはずっと付き合ってたんだってよ。今日つけてるってことは土曜日か日曜日にプロポーズされたんだろうな」
「誰情報」
「…言ったら責めそうだから言わん」
「責めない」
「…青葉先生」
「…やっぱりあの先生全部知ってて…」
なのに近づいていたのは俺から先生を遠ざけるためだろう。
「諦めろよ」
「…」
そんなこと言われて尚更諦めきれなかった。そんなやつやめて俺にしてしまえばいいのに。
「じゃぱぱさん」
またもや後ろからそう話しかけられ、でもいつもより優しい声だった。
「なおきりさん!おはようございます」
「ご機嫌ですね笑」
「分かります?笑」
「…ご結婚したんですね、おめでとうございます!」
「ありがとう笑」
「結婚式はあげたんですか?」
彼の言葉に首を振る。
「やっぱり同性だからそういうのはお互い気にしてて、でもあの人が結婚式とか婚約届とか、そんなの儀式の一部でしかないしお互いが結婚してると思ってるならそれでいいって言ってくれたの」
「とても素敵な考えの人ですね笑」
「ほんとに笑」
「授業始めますよ〜席に着いてください」
生徒がこちらを見ながらコソコソと話している。理由はだいたい検討できるがいい気はあまりしない。
「せんせー!」
みんながお前が聞けよ戦争で勇気をだして1人の生徒が俺に聞いてきた。
「先生って、結婚したんですかー?」
「そうだよ」
明らかにゆあんくんの顔が曇る。
「静かにしてね〜」
俺の結婚が要因でクラスの仲が少し良くなった気がしなくもなかった。
「じゃあ号令お願いします」
「チャイムなったんでそこまで」
今日はテストに向けて自習という形をとったため比較的楽だった。数人の生徒が前に向かってくる。
「なんでこんな急に結婚したんですかー?」
「急にって訳じゃないよ、プロポーズ自体は前からされ、じゃなくて!!してたよ」
危ない、ボロを出すところだった。プロポーズは既にされてたってこと自体が嘘だけど。
「奥さん美人ですか?笑笑」
「うん、すごい可愛いよ笑」
まあ事実。奥さんではないが。夜は可愛くない。
「ラブラブっすね〜」
「はいせんせー!」
この前ゆあんくんの隣で一緒に勉強してた佐伯さんが手を挙げて質問してくる。
「なに?笑」
「先生は〜同性と結婚ってありですか?」
「うーん、人それぞれだけど、俺はないよ」
思っきし嘘でもはや心が痛くなったがそんなことは言えずにひたすらに嘘をつきまくる。
「ですよね〜笑笑」
「というか同性同士で結婚とか無理でしょ笑」
「別に否定する訳じゃないけどそんなん受け入れてくれる結婚式場がどこにあんのって話よね笑」
数人が集まってきてそんな話をする。正直聞いててすごくムズムズした。途端、ダンッ、と机を叩く音が教室に響いた。一瞬で空気が凍りつく。彼は何も言わず立ち上がり、そのまま教室を出ていった。
「気にしないでください、彼奴先生のこと好きなんすよ笑」
「そうだったんだ、笑」
もちろんもうとっくの前に好意には気づいているが生徒達にもやはりそういう好意は広がるものなのか。
「ごめんね、俺次の授業あるからもう行くね」
本当は授業などは言っていないがここに居ても俺の心が擦り切られるだけだったから嘘をついた。そうして教室から出てため息を吐く。
「一ノ瀬先生」
何故こうもみんな後ろから話しかけてくるのだろう。不意をつかれ後ろを振り向くとそこにはうりがいた。
「うりか、どうしたの?」
「結婚したの、本当?」
「本当だよ」
何故みんな1度は必ず疑ってくるのか、そんなに俺が結婚するのが違和感あるのか?
「先生はずっと付き合ってるだけかと思ってた」
「え?」
「青葉先生が先週くらいに言ってた」
前言撤回、青葉先生良くない人。最低。生徒に話すのは訳が違う。でも心の底でまあうりだからいいかとも思いながら彼を許すことに。
「そうなんだ…」
「なんで今結婚報告を?」
多分俺があんな大きい声で言ったのにそれでも聞いてくるのは俺に次の授業は入ってないとばれてるからだろう。
「一昨日結婚式を挙げた」
さすがにこの子に同性愛のことは言えない。
「なんで指輪をつけたんですか」
「…もううりなら分かってると思ってた」
「わかってますよ」
「じゃあなんで聞くの?」
「それで彼奴が諦めると思いますか?」
「何言って…」
「彼奴は結婚相手がいようがいまいが関係なしに狙いますよ」
「なんで…なんでゆあんくんは叶わない恋だと分かっていながら俺を…」
「先生が希望を与えたから」
「希望…?」
「守れもしない約束をしないでください。これ以上彼奴を苦しめないで」
「…先生には期待してたのに」
「残念です、こんなことになって」
彼の言ってる意味が俺には理解することが出来なかった。
コメント
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初コメ失礼します! 最近知って一気読みさせて貰いました。まじで何でもっと前に知ってなかったのか…書き方とかストーリーめっちゃ好みです!これからも応援してます!