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らび
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いつき@アカウント入れん
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左に飛び、相手の大きな剣をギリギリのところでかわす。なびく長い髪の先端が裂かれ、空に待った。羽織ったマントのフードを片手で持ち、ずれないようにしながらひらりとかわしていく。何も武器を所持していない。
彼は怯む様子もなく、己の体格よりも何倍も大きな相手に向かって、強く地面を蹴る。地面と平行に素早く移動し、まるで、瞬間移動のようにあっという間に目の前にたどり着いた。
◯「こいつッ、ちょこまかとォ゙ッ…!!」
相手は目が充血していて、恐ろしい姿をしていた。鎧の隙間から見える視線は、隠す気もない殺意で曇っている。おそらく、主人側が何か盛ったのだろう。
それでも、彼は動きを止めず相手を翻弄していく。思考の鈍った巨体は、彼にとって格好の的だ。大きな体を、見つめる。彼は、絶対に相手から目を離さない。背けない。
◯「ぐふっ………!?」
相手の体、お腹に一撃。死角から攻撃を食らい、意識が回っていなかったのか少し驚いた表情を浮かべている。
がしかし、軟弱な彼では相手に思うほどのダメージを与えられない。ビクともしない相手に、唇をかみしめ思考を巡らせている。その時、相手はまた、大きな横ぶりで大剣を振り回してくる。
彼は小さな身体で、軽々避けてみせた。
(…やっぱ、アイツだけじゃ厳しいか。)
口元を隠すように顎に手を当て、それでも俺は彼から目を話さない。少ししたあと、小さく呟くようにそれを詠唱した。
?「…✕◁ ❖✓♂。」
すると、彼の瞳が赤くともった。次の瞬間、先ほどのように死角をつき、懐にもぐりこむ。一撃、今度は横からいれるような蹴り。細くて軟弱な足。しかし、巨体は回転しながら壁にふっとばされめり込んだ。
俺が彼にかけたのは、筋力の強化魔法だ。彼の元の素早さを生かし、最後のピースとして攻撃の手段を与えた。彼は、それを受け取った瞬間察知し、瞬時に対応し圧倒した。
咆哮を上げ、苦しむ相手の巨体。動こうにも瓦礫に挟まったのか動けず、彼はまたも勝利した。
相手の主人は小さくつぶやき、柵をいかりのまま殴った。しかし、巨体のような力はなく軟弱な拳は何もなし得ない。
俺は、どこか不満げで嫌そうな顔で彼が勝利したところを、一番近くで見ながら小さく拍手した。俺は、彼の主人。という立場に現在なっている。
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彼…アイツとの出会いは、偶然だった。俺はたまたまつよい種族、『狼』でアイツは『ただの人間』。
奴隷市場というのか、闘技場というのか。はたまた、サーカス会場とでも言うのか。アイツを拾ったのは、そんなろくでもない場所だ。
過保護な父親に誘われ、俺はここで自分の護衛奴隷を選べと言われた。狼のくせに、俺は昔から戦うことができない。だから、いつもは魔術で応戦していたが、最近そんな俺を嫌う連中からよく絡まれてボコボコにされる。
臆病で、相手を殴る感覚になれなくて。二度と、そんなことをしたくないから。俺は、いつも殴られても返さない。そのせいでつけあがる連中が、また次へと沸くのだ。
💜「お疲れ、悪いなまた戦わせて…。」
❤️「ん?別に、仕方ねぇだろ。」
💜「……本当は、弱い人間…御前を俺は守るべきだ。つよい種族なんだから…当然…」
❤️「生活するには仕方ねぇ。俺は、結構御前のこと好きだし…感謝してんだぜ?笑 戦闘、嫌いじゃねぇし。御前のこと守れるから、笑」
ふっと笑みを浮かべるこいつ。顔がすごく整っていて、美形だ。だからこそ、こういう場ではフードをかぶって顔を隠す。美形なだけで、相手の殺意や闘争心がさらに沸き、本来の力以上を発揮してくる場合もある。恨みというやつだ。
まあ、俺としてもこいつの顔に勝手に傷をつけられたくない。気に入っているからだ。
こいつの名前は『なつ』。元【フォニァサーカス】の一員で、ボロボロになるまで働かされていた奴隷。
まだ体の小さなガキなのに、これまでいくつもの死線をかいくぐり生きてきた。
並の大人や獣人なら、魔法なしに殴り合えば直ぐに倒してしまうほど強い。…けど、本人は見栄を張るが、あまり痛みに強くないらしい。
人間だから、脆いのは当たり前だ。俺みたいな異世界人じゃなければ、魔法も使えない。怪我も、癒えるのが遅い。
だから、俺はコイツを守らないといけない…そのはずなのに…。
…俺は『いるま』。戦闘ができない、出来損ないの狼の獣人。【シルヴァ・ルプス家】の一人だが、家の人に見放され一人で生きていた。
なつに出会い、俺の仕事だけじゃ生活していけなくなってしまう。
…そんなとき、なつをこの闘技場に出しすこし稼いでもらっている。けれど、俺はあまり賛成していない。
魔法の腕はそこらの人を圧倒するほどで。俺は主人席から、魔法で密かにサポートはしているが…それでも、なつが怖がることをあまりさせたくはない。
ゆっくりと木製の扉を開く。もう、ずいぶん古臭くなっていて、今にも扉が落下してしまいそうだ。
そんな扉を、ゆっくりと開きながら中へ入っていく。
ブーツの音が響き、そのたびに木屑が舞っている。早めに引っ越さないとな…なんて考えながら、そんな余裕もない。
💜「…すまんな、俺のせいで。」
❤️「またそればっか。…いい加減にしろ。」
💜「だって、」
❤️「俺は平気だって言ってんじゃん!…寧ろ、ここくらいでしか御前の役に立てないんだから。やらせてよ。」
💜「……。」
まだ少しだけ新しい椅子に座って、俺は頭を抱えていた。自分の不甲斐なさに、少し嫌気が差しているのだ。