「え、貴仁さんって、経験があって……」
言ってしまった後で、ハッとして口を押さえる。
「経験が? ああもしかして、それを気にしていたのか?」
私に問い返して、彼がクッと短く喉元で笑う。
「……さすがに初めてではないかな。女性との付き合いは以前話したようにさほどないが、経験済みだ。ただ、あまり慣れてはいないかもしれないが……」
彼が言いながら、私の頬にひたりと手の平で触れる。
それだけで、肌がぞわっと粟立つのを感じる。
「ではさっき目を閉じたのは、眠いのではなく誘いかけていたのか?」
熱っぽい眼差しに捕われ、視線を逸らすことさえままならない。
「……誘いかけたわけでも……」
ぼそぼそと口にしながら、だけどそのつもりだったことも否定はし切れなくてとも思う。
「いいんだ。私の方が、気づくべきだった。ただ、もしそうだったのなら、私にキスを許してくれるということだろうか?」
低く甘ったるく囁やきかけられて、私は返事の代わりに再び瞼を伏せた……。
柔らかく口づけられた唇に、熱が灯る。
「……もう少し、先に進んでもいいか?」
唇を外し問いかけられ、応える余裕すらなく「……ん」とだけ発する。
一旦は離れた唇が、再び合わさり、顎を辿り、濡れそぼった感触がつと首筋を這い下りる。
慣れてないだなんて、嘘……。だってこんなにも身体が翻弄される感覚を、味わったことがない……。
彼の指が、舌が、露な素肌をなぞり上げる。
それは、壊れものを扱うようないたわりにあふれて、だけど抑え切れない情熱が直に伝わるようでもあって……。
「……あんまりなんて、嘘、ですよね……だって、こんな……」
「……嘘じゃない、ただ君を愛したいだけだ……」
耳元を捕らえる密やかな声とともに、唇を割り温かな舌が入り込んだ。
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なんか、私もドキドキ💓してしまう〜