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**第2話: 異世界の現実**
異世界「アルビオン」へと転生した相馬智也と篠田啓太。驚きと混乱の中、二人は立ち上がり、まずは近くの町を目指して現状を把握することに決めた。草原の中に一筋の道が続いており、遠くには煙が立ち上るのが見える。それが町の目印であることは明らかだった。
「まずはあの町に行ってみよう。状況を知るには人に聞くのが一番だろう。」
智也がそう提案し、啓太も同意した。二人は少し心細く感じながらも、迷わず歩みを進めた。周囲の景色はまるで中世ヨーロッパのようで、自然と緊張が高まる。
「まさかこんなことになるとはな…。けど、まずは冷静に動こう。」
智也は自分に言い聞かせるように言い、啓太も無言で頷いた。互いに言葉を交わさずとも、二人には共通の目的があった。今いる場所を理解し、元の世界に戻る方法を探ること。それが、まず第一にやるべきことだ。
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町に近づくにつれて、人々の姿が見えてきた。石畳の通りには、簡素な服を着た住民たちが行き交い、商人が声を張り上げて物を売っていた。建物は石造りで、木製の看板が軒先に掛けられている。全体的に静かな町並みだが、どこか活気が感じられた。
「思ったよりも普通の町だな…」
啓太がそう呟くと、智也も同じように感じていた。異世界という言葉から想像していたよりも、生活感があり、人々が普通に暮らしているように見える。
「よし、まずはどこかで情報を集めよう。」
二人は町の中心部に向かい、目立つ建物を探した。少し歩くと、「酒場」という木製の看板が目に入った。異世界に関する情報が得られるとしたら、こういう場所が一番だと考え、二人はその扉を開けた。
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酒場の中は、賑やかな雰囲気に包まれていた。冒険者らしき人物たちがテーブルを囲んで話し合い、カウンターでは店主が忙しそうに飲み物を注いでいる。智也と啓太は少し緊張しながらも、カウンターの端に腰を下ろした。
「いらっしゃい、若いの。何か飲むか?」
店主はにこやかに声をかけてきた。彼は丸い体型に、親しみやすい笑顔を浮かべている。
「すみません、ちょっと話を聞きたいんです。僕たち、この町に来たばかりで、色々と知りたくて。」
智也が遠慮がちに切り出すと、店主は興味深そうに目を細めた。
「なるほど、旅の者か。どこから来たんだ?」
啓太が答えようとしたその時、智也が先に話した。
「…遠いところから来ました。ちょっと説明が難しいんですけど。」
智也はなるべく慎重に言葉を選んだ。異世界から来たと素直に話すのは、まず様子を見てからだと判断したのだ。
店主は少し考え込んだが、深く追及することなく頷いた。
「そうか、まぁ、ここの町はアルヴィルって言うんだ。何でも聞いてくれ。俺で分かることなら何でも教えるよ。」
智也と啓太はひとまず安堵し、さりげなく質問を重ねていった。
「アルヴィル…それって、この国のどこにあるんですか?」
店主は少し驚いたように智也を見た。
「この国はフィアーネ。ここアルヴィルは、国の中央部にある中規模の町だよ。あんたたち、本当に遠くから来たんだな。」
「そうなんです。それで…フィアーネには、どんな人が統治してるんですか?」
「国王陛下だよ。現王はエドワード三世。賢王として知られてるけど、最近は魔族の脅威が増して大変な状況になっている。」
魔族という言葉を聞いた瞬間、二人は互いに視線を交わした。どうやら、この世界はただの異世界ではなく、何か大きな脅威が存在しているようだった。
「魔族…ですか?」
啓太が尋ねると、店主は深刻な表情で頷いた。
「そうだ。魔族は強力な魔法や力を持っていて、国境付近では戦争が起きている。アルヴィルは今のところ安全だが、いつ危険が迫るか分からん。」
智也と啓太は、ただのテニスプレイヤーとしてではなく、この世界で何をするべきかを考え始めた。彼らの運命が大きく変わりつつあることを、二人はひしひしと感じていた。
「ありがとう、色々教えてくれて。」
智也はお礼を言い、啓太も軽く頭を下げた。店主はにっこりと笑い、「困ったことがあったらいつでも来いよ」と言って二人を見送った。
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酒場を出た後、二人は町の広場に向かい、今後どうするかを話し合った。元の世界に戻る手段を探すべきだが、同時にこの世界の脅威と向き合う必要もあることを理解した。
「まずは、この世界での自分たちの立ち位置を確立しないと。じゃないと何も始まらない。」
智也の言葉に啓太も同意した。二人は、テニスラケットを握る手に、異世界での新たな使命を感じていた。テニスの技術がこの世界でどう役立つかは分からないが、彼らの冒険はこれから本格的に始まる。
「次はどうする?」
啓太が尋ねると、智也は少し考えてから、広場の隅にあった掲示板を指差した。
「あの掲示板を見てみよう。何か役立つ情報があるかもしれない。」
二人は新たな決意を胸に、掲示板へと歩みを進めた。そこには、この世界での試練や冒険が待っているに違いなかった。