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#年の差
水無月 京
836
鷹槻れん

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鷹槻れん

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#強引
いくら二人きりと言えど露天風呂の中でするのはいかがなものか、それに昴には今回の旅行にある目的を持っていて、それを遂行する為にも理性は保ちたいと思っていたのだけれど、目の前の羽衣子があまりにも魅惑的で欲情してしまう自分に抗えず、昴は羽衣子の咥内へ強引に舌を割り入れると更に深い口付けを与えていく。
「……ん……っ、ふぁ、……んん、」
舌を絡め取られて息継ぎすら上手く出来ない羽衣子の身体からは力が抜けていき、昴はその身体を支えるように抱き締めた。
「……すばる、……さんっ、」
ようやく唇を解放された羽衣子が息を整えながら名前を呼ぶと、昴はハッと我に返る。
「……悪い……」
正直今ここで止めるのは辛いけれど、このまま続けてしまえば歯止めが効かなくなることを理解している昴は羽衣子から離れる。
「このままだと逆上せちまうな。そろそろ出るか」
「……え、……」
出る提案をされた羽衣子もこのまま続けてしまいたい思いが頭の片隅にあるものの、温泉の中でする訳にもいかないだろうと思いとどまり、
「……そう、……ですね」
再び顔を背けながら頷いた。
「俺は先に上がるから、少しゆっくりして来い」
「は、はい……ありがとう、ございます……」
昴は立ち上がると湯から上がって先に戻っていってしまう。
「…………このまましちゃうのかと思った……」
扉が閉まり、一人になった羽衣子は乱れた呼吸を整えながら無意識にポツリと呟くと、期待している自分がもの凄くはしたなく思えて恥ずかしくなった。
先に温泉から上がった昴はシャワーで頭から冷たい水を浴びていた。
「……ったく、何やってんだ。しっかりしろよ……」
先程の自分の行動を思い返せば返す程、理性を保てなかったことを悔やんだ昴。
昂った気持ちをゆっくりと鎮めていく。
暫くして、ようやく落ち着きを取り戻した昴は身体を拭いて浴衣を身につけると部屋へと戻っていく。
そして、羽衣子の様子を窺いながら自身の荷物の前へやって来た昴はバッグの中から何かを取り出すと、それを手にしたままベッドへ近づき脇に置かれたチェストの引き出しを開けてそっとしまった。
一方その頃、身体に残った火照りを落ち着かせるように羽衣子が温めのシャワーを浴びていた。
(部屋に戻ったら……どんな顔すれば良いんだろ……)
そんなことを思いながらシャワーを浴び終えた羽衣子は身体を拭くと用意していた下着へ手を伸ばした。
(……昴さん、これを見たら、どう思うんだろう……)
羽衣子はこの日の為に用意した黒い下着を前に動きを止める。
いつも淡い色ばかり身につけていたからこそ、手に取るだけでもドキドキしてしまう。
(っていうか……ちゃんと気づいてくれるかな?)
気づいてほしいけれど、あまりに意識されるのも恥ずかしい。
(気づかれないのは悲しいけど……張り切りすぎって思われたり、引かれたりしたらどうしよう……)
更にはそんな不安まで頭を過ぎる。
それでも羽衣子は意を決して下着を身に着けていき、その上から浴衣を羽織ると乱れていないか鏡で確認する。
「……よし」
そして身支度を整えた羽衣子は覚悟を決めるように小さく頷くと脱衣場の扉を開けて部屋へ戻って行った。
ベッドの上に腰を下ろしていた昴の元へ羽衣子はゆっくりと歩いて行くと、その隣にちょこんと腰を下ろす。
「さっきは……悪かったな」
「いえ……」
それ以上の言葉は続かず、二人の間に気まずい沈黙が落ちる。
そんな中、昴がふっと息を吐いてから口を開いた。
「今日はこうしてお前と旅行に来られて良かった。慶太さんと香恵さんにもお前を紹介出来たしな」
「私も……良かったです。昴さんと希海くんの大切な方にご挨拶が出来たし、こんなに素敵な旅館に泊まれたので」
「…………羽衣子」
「はい?」
名前を呼ばれて羽衣子が顔を向けると、昴は真剣な眼差しで彼女を見つめた。
「俺は今日、お前に言いたいことがある」
「……私に?」
「ああ。聞いてくれるか?」
いつになく真剣な声音に羽衣子の胸が小さく高鳴った。
「……はい」
羽衣子が頷くと昴はゆっくりと言葉を紡いでいく。
「俺は希海を引き取ると決めてから、ずっと希海を幸せにすることだけを考えてきた。異性に興味を持つこともなかったから、一生独りでもいいと思ってた。だけど……お前と出逢ってから、その考えは徐々に変わっていった」
「…………」
「羽衣子が近くに居るだけで不思議と暖かい気持ちになった。もっと一緒にいたい、離れたくない……離したくないって、そう思うようになった。だからこそ、お前のことを抱いたし、この先も傍にいることを選んだ」
昴の言葉に羽衣子の胸がトクンと大きく鳴った。
「ただ……希海のことをお前にまで背負わせるのは違うんじゃないかって思っていたのも事実だ」
「昴……さん?」
「だけど、お前は希海のことを、どんな時でも大切に思ってくれているし、希海もお前のことが大好きだ……。そして……俺も、同じ気持ちだ」
昴はそこで言葉を区切ると、ベッド脇に置かれたチェストへ手を伸ばして小箱を取り出した。
それを手にした瞬間、昴の表情が更に真剣なものになる。
「羽衣子」
「……はい」
「俺はこれからも、お前と一緒にいたい」
そう言って昴は小箱の蓋に手をかけた。
「どんなことがあっても必ずお前を守るし、誰よりもお前を幸せにする」
そしてゆっくりと蓋が開かれた瞬間、羽衣子の瞳が大きく見開かれた。
「羽衣子――俺と結婚して欲しい。そして、これから先も共に希海の成長を見届けて欲しいんだ」
静かな部屋にその言葉だけがはっきりと響く中、羽衣子は目の前の昴と小箱の中で光輝くモノを潤んだ瞳で見つめていた。
「……っ、昴さん……私……」
突然のプロポーズに羽衣子はひどく動揺していた。
頭の中は真っ白なのに胸の奥から込み上げてくる感情だけは止められず、気づけば頬を涙が伝っていた。
「……私……っ」
懸命に言葉を探そうとするものの声にならない羽衣子を見つめながら昴は少しだけ困ったように眉を下げた。
「驚かせて悪かった。ただ……俺は、この旅行でお前にプロポーズするって決めてたんだ」
「…………っ」
「だからこそ、ここへ来る前に慶太さんたちの墓へ行った……二人にこのことを報告する為に」
その言葉を聞いた羽衣子は昴がこの日の為に何を考え、どんな思いでここまで来たのかが伝わって胸が熱くなる。
羽衣子は涙を拭いながら震える声で問いかけた。
「……本当に……私で、いいんですか?」
「いいに決まってるだろ。寧ろ、お前以外なんて考えられねぇよ。羽衣子……返事を聞かせてくれ」
「…………私で良ければ……お願いします……」
その言葉を聞いた瞬間昴の表情が緩み、羽衣子の身体は強く抱きしめられた。
「……一生、大切にするから」
耳元で囁かれた言葉に羽衣子の瞳から再び涙が零れ落ちていく。
「……はい」
震える声で答えながら羽衣子もそっと昴の背中へ腕を回した。
コメント
1件
やっと来たか!という感じでしたね。露天風呂のシーンで一旦冷静になった後のプロポーズ、昴さんの真剣さと誠実さがひしひしと伝わってきて泣けました。それに、羽衣子が黒い下着を選んで内心ドキドキしている描写とか、そういう細かい心の機微が本当に愛おしい。ふたりの想いがようやく重なって、読んでいてこちらまで胸が温かくなりました。