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「あの日,私たちは力を持たない人間に負けた。どうして魔族が負けたのか。それは,人間たちが作り出した対魔族用の魔素無効化が使われたから。魔素がなければ魔法は使えないのはわかっているわね。」
俺も確かにあの日,魔法が使えなくなった。そしてあの女は言った。
『あなた達魔族が人間界を滅ぼそうと侵略したから,だからその罰として魔素をなくしてあげたの。』と。俺がここで過ごした数年間はそんな騒動無かったのに。人間界を滅ぼそうとしたのは一種の革命派閥が起こしたものなのだろうか。もしも,革命派がやったのなら,王族の俺たちはそいつらを取り締まらないといけない。
「…母上は黒髪の,気味の悪い女を見ましたか?」
「えぇ,見たわ。この魔王城にも乗り込んできた。けど私は人間だったから何もされなかった。」
どうやらあの人達は魔族だけを襲っているようだ。俺も,聖來も魔族の血が入っている。魔族の父の血を多く持った俺が襲われるのはわかる。けど,母の血が多く含まれた聖來が襲われるのはおかしい。見た目でわかるはずがないのだ。回復魔法を使っていたとしても人間が使う杖を使っての魔法使用だから本当に謎だ。
「聖來は,父上はどこですか。」
「ルシファーは,残っている街の人たちに食事を配っているわ。聖來は…。」
母の顔を察するに聖來はココには居ないのだろう。あの二人組が言っていたことを今は信じるしかない。もし本当にそうならうずうずできない。
「紫鬼,戻ってたのか。」
父が帰ってきた。案外平然としていて,俺を見つめて微笑んだ後,前と変わらない書斎に入っていった。
「…俺は,どうすればよかったんでしょうか。」
「紫鬼,貴方が悔やむことなんて何もないのよ。悪いのは話を聞こうとしないもの。誰かの話をきちんと聞かないということは自分勝手で,人からは決して好かれない。」
「…。」
あの女の人は何だったのか。聖來が生きているというのならどこにいて,どうして生きているのか。もしかしたらどこかに監禁されているのかもしれないし。
「…紫鬼,貴方は愛する人の為ならなんだってしようとするかしら。」
「…勿論。」
どうして母はそんなことを聞いたのだろうか。
「じゃぁ,もし,聖來が生きていると聞いたら?」
「!?」
本当にあの二人が言っていたことは本当だったんだ。母が少しためらったりしているのには疑問だが,本当だったのだとしたら今からでも飛んでいきたい。もう二度と離れたくはないから。このチャンスを逃すわけにはいかない。
「待って。お母さんの話を最後まで聞いて。」
今からでも駆けていこうとすると母は俺の腕を優しくつかんだ。
「あなたの望むような結果にはならないかもしれない。それでも,運命を信じる?」
「うん。」
俺がどうなっても,聖來が幸せになってくれればそれでいいんだ。昔みたいな終わり方にならなければ,それで。
「それじゃ,紫鬼,貴方にはKING高等学校魔法科というところに入学してもらわないといけない。そこに聖來はいるわ。だいじょうぶ,入学とか,めんどくさいことはお母さんに任せて!」
にっこりと笑う母が羨ましく思えた。母は幼い頃からずっと、こうやって笑って生きてきたのだろう。聖來が居なくなるまでずっと、俺たちのことを叱ったりせず、ただ優しく笑っていたから。
「分かった。」
「そうなりゃ!っと、俺たちの出番だな!」
上から母と父の使い魔?的な四天王たちが降りてきた。