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個室。
誰も冗談を言わない。
〇〇は立ったまま、ゆっくり息を吸う。
〇〇「さっきの電話、廉」
静かに始める。
〇〇「映画、一緒に行ったのも廉。昨日」
慎太郎「昨日!?」
〇〇は頷く。
〇〇「誘ったの、私」
ジェシー「え」
〇〇「一回目の告白から一か月以上経ってる」
空気が変わる。
〇〇「ちゃんと向き合わなきゃって思った」
北斗は黙って聞いている。
視線だけが鋭い。
〇〇「それで映画誘った」
一拍。
〇〇「映画のあと、また告白された」
完全沈黙。
樹「……昨日?」
〇〇「うん」
きょも「返事は?」
〇〇「してない」
〇〇は自分で続ける。
逃げない。
〇〇「帰り道」
喉が少し詰まる。
〇〇「手、繋いだ」
慎太郎「は?」
ジェシーも息を止める。
北斗は動かない。
〇〇「告白されたあと」
自分で補足する。
〇〇「私、嫌じゃなかった」
その一言で空気が凍る。
北斗の視線がわずかに落ちる。
〇〇「正直、ドキドキしてる自分がいる」
声は震えてない。
ちゃんと前を向いてる。
〇〇「仲間だと思ってた。ずっと」
〇〇「でも昨日、全て変わったかもしれないって思った」
きょもが核心を突く。
きょも「好き?」
〇〇は目を閉じない。
〇〇「分からない」
正直。
〇〇「でも、前より近い気持ちになってるのは本当」
北斗が初めて口を開く。
北斗「自分から誘って」
低い。
〇〇を見る。
北斗「再告白されて」
一拍。
北斗「手繋いで」
もう一拍。
北斗「それで“分からない”?」
刺さる。
〇〇「急に答え出せない」
北斗「一か月待たせてる」
事実。
〇〇「分かってる」
きょもが静かに言う。
きょも「〇〇はさ」
視線が集まる。
きょも「廉のことを失いたくないのか、」
少し間。
きょも「それともまだ選びたくないのか」
言葉が止まる。
図星。
北斗は告白しない。
奪うとも言わない。
ただ、静かに言う。
北斗「自分で始めたなら」
〇〇をまっすぐ見る。
北斗「最後まで自分で決めろ」
その目は怒ってない。
でも、苦しい。
昨日、俺はそこにいなかった。
その事実が、重い。
個室に沈黙が落ちる。
〇〇の胸が強く鳴る。
これはもう、仲間の話じゃない。
完全に恋の話。
静まり返った空気。
視線が重い。
〇〇は立ったまま、唇を噛む。
〇〇「……もう、わからないよ」
小さく。
でもちゃんと聞こえる声。
〇〇「ちゃんと向き合おうって思って誘ったのに」
〇〇「ドキドキしてる自分もいるし、でも急に答え出せないし」
〇〇「どうしたらいいか、わからない」
本音。
強い〇〇が、初めて弱い。
空気が冷える。
北斗は何も言わない。
樹も慎太郎も黙る。
そのとき。
パンッと手を叩く音。
ジェシー「はい!重い!」
全員びくっとする。
ジェシー「ここ何の部屋?恋愛相談室?」
慎太郎「ちがう、焼肉屋!!」
ジェシー「そう!肉!肉冷める!」
無理やりテンションを上げる。
きょもが小さく笑う。
樹も息を抜く。
ジェシー「〇〇さ」
少しだけ柔らかくなる声。
ジェシー「分からないって言えるの、ちゃんとしてる証拠だよ」
慎太郎「そうそう!即答できるほうが怖いわ」
高地「恋愛ってテストじゃないし」
きょも「締切ないしね」
空気が少しだけ緩む。
〇〇が座る。
北斗は静かに水を置く。
北斗「冷める」
肉をひっくり返す。
それだけ。
でもさっきより温度が戻ってる。
慎太郎「てか手繋いだってさらっと言うなよ!」
〇〇「だから全部話したじゃん!」
ジェシー「正直者か!」
樹「隠されるよりマシ」
きょも「うん。俺は聞けてよかった」
北斗は黙ってる。
でも、怒ってない。
ジェシーが肉を〇〇の皿に置く。
ジェシー「はい。とりあえず食え」
〇〇「なにそれ」
慎太郎「恋は腹が減ると余計迷う」
樹「名言風に言うな笑」
笑いが少し戻る。
空気がちゃんと戻る。
さっきの冷たさが、少しだけ溶ける。
でも。
完全じゃない。
北斗と〇〇の間には、まだ何か残ってる。
でも今は。
普通に肉を食べて、笑ってる。
それでいい夜。
慎太郎「この肉やばくない?」
ジェシー「お前それさっきも言ってた」
慎太郎「いや今のはマジ」
〇〇が箸を伸ばす。
〇〇「どれどれ」
一口。
目がぱっと開く。
〇〇「なにこれ、うま」
さっきまで泣きそうだった人とは思えない声。
樹「切り替え早」
〇〇「だって美味しいだもん!」
きょも「単純」
〇〇「きょもも食べてみなよ」
自然にトングを奪う。
〇〇「焼き係やる!」
ジェシー「出た、仕切り屋」
〇〇「うるさい!焦げるの嫌なんだもん」
真剣に肉を並べる。
慎太郎「さっきまで恋愛迷子だった人が」
〇〇「今も迷子だよ!」
即答。
でも笑ってる。
高地「その感じが〇〇だよな」
〇〇「なにそれ」
樹「さっきの顔より今のほうが安心する」
〇〇「さっきのは忘れて」
ジェシー「無理」
〇〇「消して」
慎太郎「録音してないけど脳内保存済み」
〇〇「最悪!」
笑いが広がる。
北斗はその様子を見てる。
無邪気に笑う〇〇。
肉をひっくり返して、
「あっ焦げる!」って騒いで、
きょもに「落ち着け」って言われてる〇〇。
北斗、少しだけ口元が緩む。
〇〇「北斗、食べてないじゃん」
急に振られる。
北斗「食べてる」
〇〇「嘘。ほらこれ」
自分の箸で焼けた肉を皿に置く。
自然。
距離ゼロ。
慎太郎「距離!」
樹「さっきの空気どこいった」
〇〇「ご飯中は平和主義なの」
ジェシー「新ルール?」
〇〇「うん。恋愛禁止タイム」
きょも「今更?」
〇〇「今だけ!」
全員また笑う。
慎太郎「てかさ、〇〇ってさ」
〇〇「なに?」
慎太郎「ほんと感情顔に出るよね」
〇〇「出てない」
ジェシー「出てる」
樹「めちゃくちゃ出てる」
〇〇「出てない!」
きょも「今日で一番元気」
〇〇「だってお腹空いてた」
北斗が小さく言う。
北斗「単純」
〇〇「うるさい」
即返し。
でも笑ってる。
さっきまで冷たかった空気は、もうない。
ただの仲間みたいに、
ただのいつもの夜みたいに、
騒いで、食べて、笑ってる。
でも。
北斗は知ってる。
さっきの「わからない」は本物。
そして〇〇も知ってる。
北斗がずっと黙って聞いてたこと。
今は無邪気に戻れてる。
それが、少しだけ救い。
ーー
夜ご飯を終え、個室を出る。
高地「そろそろタクシー振り分けしようか。道が同じ人でまとめる感じで」
〇〇「いやー!でも私は絶対きょもと一緒がいいー!」
きょも「俺も同じだよ」
〇〇「離れたくないー!!」
ジェシー「まあまあ、北斗も気まずそうだし、ここはルーレットで決めよ」
慎太郎「しょうがないな……」
〇〇「いやー!やだー!」
高地がスマホでルーレットアプリを立ち上げる。
〇〇「止まれ止まれ……!」
慎太郎「じゃあスタート!」
ルーレットがくるくる回る。
全員息を止めて見守る。
画面が止まる瞬間、帰りのタクシーの席はこうなった:
タクシーA(〇〇・北斗・樹・慎太郎)
タクシーB(きょも・高地・ジェシー)
〇〇「えっ、また北斗と同じ……!」
北斗は表情を変えずに頷く。
〇〇は少し戸惑いながらも、無邪気に笑ってタクシーに歩く。
〇〇「窓側座ろうっと!」
北斗は自然に隣に座る。
〇〇がちらっと北斗を見るけど、まだ「仲間」としか思っていない。
窓の外は夜景が流れる。
タクシーは夜の街を走る。
やがて樹と慎太郎の家に到着する。
樹「じゃあ俺ここで降りるわ」
慎太郎「俺もここで」
〇〇「バイバーイ!」
北斗「……」
二人きりになったタクシーの中、〇〇は少しドキドキしながら座席に落ち着く。
〇〇(心の中)「昨日の映画のこと……手を繋いだのは廉だったのに、まだ思い出すとちょっとドキドキする」
北斗(心の中)「……昨日のこと、俺は関係ない。でも隣にいる〇〇、なんか落ち着く」
静かなタクシーの中。
夜景が流れる。距離は近いけど、〇〇はまだ北斗が自分に特別な感情を抱いているとは思っていない。
北斗は窓の外を見ながら、今の二人の距離と空気を胸に刻む。
タクシーの中、窓の外は夜景。二人の距離は近いまま。
〇〇「……最近、仕事忙しかったんでしょ?撮影とか舞台とか」
北斗「別に、忙しいってほどでもないけど……」
(心の中:どう答えようかな、軽く流すしか……)
〇〇「ふーん。そういう言い方、北斗らしいね」
北斗「らしいもなにも……普通だし」
〇〇「普通かぁ。映画とか舞台とか、けっこう大変そうなのに」
北斗「大変って言われても……仕事だし。別に特別じゃない」
(心の中:〇〇は俺のこと、普通にしか見てないな……)
〇〇「そっか。まあ、北斗がちゃんとやってるのはわかるけど」
北斗「わかってもらえればそれでいい」
〇〇「……北斗って、いつも真面目すぎるよね」
北斗「うるさいな。仕事なんだから当然だろ」
〇〇「なんか不器用だよね、あんた笑」
北斗「別に不器用じゃない。普通だし」
(心の中:でも隣に〇〇がいると、少し嬉しい気もする……)
〇〇「……でも、演技はうまいよね。昨日の映画も、すごく良かった」
北斗「そうか?……」
(心の中:あくまで映画の話として受け取ってるんだな)
〇〇「いや、ほんとに。あんなにちゃんとできるなんて、正直びっくりした」
北斗「……まあ、頑張ったからな」
〇〇「ふーん。努力してるんだね」
北斗「当たり前だろ」
〇〇「……なんか、北斗って本当に、そうやってあんまり感情出さないんだね」
北斗「出す必要ないし」
〇〇(心の中)「隣でこうやって話してるだけで、落ち着くな……」
窓の外の街の灯りがゆっくり流れる。
不器用で素直じゃない会話だけど、二人の距離は少しずつ近づいている。
ーーー
〇〇を見送って、タクシーの中は急に静かになった。
街灯の明かりが車内を薄く照らす。
北斗は座席にもたれながら、昨日のことを思い返す。
あの上着を貸した時のこと。
〇〇は小柄で、上着を着ると余計に小さく見えた。
肩幅も腕も、全てが守ってあげたくなるくらいちっちゃくて、でもどこか全部を一人で抱えてるみたいだった。
北斗は手を伸ばすわけでもなく、ただそっと見守っていた。
その瞬間、心の奥がぎゅっと痛む。
「昨日、手を繋いだのは……廉か」
嫉妬が胸を締め付ける。
〇〇の笑顔が、楽しそうに手を繋がれてる姿が、頭から離れない。
悔しい。絶対、悔しい。
でも、それを口に出すことも、どうすることもできない。
〇〇はまだ何も気づいていない。
自分の存在すら、特別じゃないのかもしれない。
北斗は肩で小さく息をつく。
悔しさと切なさ、そして羨ましさが入り混じった感情が、胸をぐるぐると巻きつく。
あの小さな手、あの小さな背中。
上着を返す時、少しだけ触れた肌の温かさ。
今も思い出すたびに胸が熱くなる。
「……俺、なんでこんなに、どうしようもなく思うんだ」
タクシーの揺れだけが、切なさをさらに際立たせる。
外のネオンが流れ、静かに車内を包む。
北斗はずっとその感覚に浸ったまま、ただ黙って座っている。
誰にも言えない気持ち。
でも、どうにもできないこの現実。
ーーーーーーー☀️
北斗side
スマホを手に取り、画面をじっと見つめる。
〇〇はもう起きている時間だろうか。
昨日のご飯や映画のこと、手を貸したときの小さな手の感触が、まだ胸に残っている。
北斗LINE:
「おはよう。昨日の帰り、大丈夫だった?」
送信ボタンを押す手が少し震える。
タクシーの揺れも、〇〇と過ごした距離も、すべて思い出す。
悔しさ、嫉妬、切なさ――全部入り混じって胸を押し付ける。
しばらくして、〇〇から返信がくる。
〇〇LINE:
「おはよう!ありがとう、ちゃんと帰れたよ。北斗は?」
北斗LINE:
「俺も無事。昨日は楽しかった」
〇〇LINE:
「楽しかったね。久しぶりにみんなでご飯できたし」
北斗は画面を握ったまま、しばらく黙る。
昨日、手を貸したときに触れた小さな手、ちっちゃく見えた〇〇の姿。
全部思い出して、胸がぎゅっとなる。
北斗LINE:
「そうか」
〇〇LINE:
「そうだ、今日ちょっと報告があるんだけど!」
北斗は画面に目を凝らす。
〇〇LINE:
「大ヒット御礼舞台挨拶が決まった!映画『消えゆく君のために、僕は笑っていよう』、廉と一緒だよ」
北斗LINE:
「そっか、おめでとう」
〇〇LINE:
「ありがとう。昨日の話も映画の話も、色々聞いてくれてよかった」
北斗は窓の外を見つめる。
ネオンの光が流れる中で、悔しさと切なさが胸を締め付ける。
手を繋いだのは廉。
それでも、上着を貸したときの温もり、ちっちゃく見えた〇〇の姿が目に浮かぶ。
北斗LINE:
「そうか」
返事は短いけれど、言葉の奥にはたくさんの感情が詰まっている。
〇〇はまだ、自分の心の奥で揺れていることに気づいていない。
北斗は画面を見つめたまま、切ない気持ちを抱えて朝の光に包まれる。
ーーーーーーーーーー
舞台挨拶会場は熱気で包まれ、ファンの歓声が鳴り止まない。
〇〇がマイクを握り、MCから質問が始まる。
MC:「公開から20日で、△△億円突破、△△△万人の方が映画『消えゆく君のために、僕は笑っていよう』を観られたそうですが、率直な感想をお願いします」
〇〇「本当にありがとうございます!予想以上にたくさんの方に観ていただけて、とても嬉しいです。撮影中は集中していて、余裕がなくて、自分のことばかり考えていたんですけど……こうして皆さんが楽しんでくださるのを聞くと、やっぱり嬉しいです」
廉「〇〇が自然に役に入り込んでくださったおかげで、僕も思い切って演じることができました。現場で一緒に芝居をさせていただいて、本当に安心できる存在でした」
〇〇「そう言ってもらえると嬉しい笑。廉がいたから、私も安心して役に集中できたんです。撮影中、ふざけたり笑ったりする場面も、廉が隣にいてくれたから自然にできました」
MC:「余命一年を宣告された女性を演じるという、難しい役柄でした。演じる上で意識されたことは?」
〇〇「日々忙しく仕事をこなす中で、少しずつ心が消えていく様子や感情の揺れを丁寧に表現することを意識しました。雨の名シーンや大学の休み時間でのささやかなキス、病院での切ないシーンなど……限られた時間の中で互いの気持ちを伝えるように心掛けました」
廉「特に雨のシーンは、僕もとても緊張いたしました。〇〇が自然に泣かれるので、僕も思わず心が揺さぶられました」
〇〇「でも廉がいたからこそ、泣きながらも安心して演じられたんです。現場で手を握ってくださったり、そっと励ましてくださるのが、本当に心強かったです」
廉「いや、僕も必死でした笑。でもお互いに支え合いながら作れたことが、作品にちゃんと出ていると思います。病院のシーンも、〇〇が微妙な表情の変化まで見せてくださったので、僕も自然に演じることができました」
MC:「撮影で特に心に残ったシーンは?」
〇〇「やっぱり病院のシーンですね。感情を押さえながらも、相手に対する思いを伝えなければならなくて、すごく集中しました。廉と見つめ合うだけで、心が揺れる瞬間もありました」
廉「僕もあのシーンは忘れられません。〇〇が笑いながらも少し切ない表情をされた瞬間、僕の心も自然に動かされました。何度も『大丈夫?』って聞きそうになりました笑」
〇〇「え、そんなこと言ってくれてたの?全然覚えてなかった」
廉「覚えてるわ笑〇〇は小柄なので、より小さく見えた瞬間とか……守りたくなる場面が何度もありました」
MC:「演じる上で大変だったことや、印象に残っているエピソードは?」
〇〇「感情の起伏を丁寧に意識するのが大変でした。笑うシーンも泣くシーンも、少しでもリアルに見えるように注意しました。特に最後のシーンは、感情を保ちながらも、相手とのやり取りを自然に見せるのが難しかったです」
廉「僕も正直、ラストは涙をこらえるのが大変でした。〇〇の芝居に引っ張られる部分もあり、自然に心が動く瞬間もありました。現場で目を合わせるだけでも胸がいっぱいになりました」
〇〇「本当にお世話になりました。廉が隣にいてくれなかったら、もっと泣いていたかもしれません」
廉「いやいや、僕も助けられましたし、お互い様です。〇〇の表情や動きなど、全部見ていて楽しかったです」
MC:「では、ファンの皆さんにメッセージをお願いします」
〇〇「20日間で△△△万人の方に観ていただけて、本当に感謝しています。限られた時間の中で互いを大事にする気持ちや、心の温度を丁寧に伝えたつもりです。これからも応援してくださる皆さんと一緒に作品を楽しめたら嬉しいです」
廉「僕も、〇〇と一緒にこの作品を作れて本当に良かったです。現場では色んな思いがありましたが、こうして皆さんの前でお話できるのはとても嬉しいです。〇〇のおかげで、安心して演じられましたし、作品もより良くなったと思います」
ーーー
舞台挨拶が終わり、会場の熱気が少しずつ引いていく。
バックヤードの廊下。
スタッフの声が遠くで響く中、〇〇と廉は少し離れた場所で立ち止まる。
さっきまでの明るい空気とは違う。
静かで、真剣な空気。
少しの沈黙。
廉「今日、すごかったな。」
〇〇「うん。あんなに観てもらえてると思ってなかった。」
廉「〇〇が頑張ったからやろ。」
〇〇「違うよ。廉が隣にいたから。」
視線がぶつかる。
どっちも逸らさない。
廉「さっき舞台で言ったこと、本心やからな。」
〇〇「守りたくなるってやつ?」
廉「うん。」
一歩、近づく。
廉「役としてだけじゃない。」
空気が変わる。
〇〇は黙って廉を見る。
廉「ちゃんと話したかった。」
〇〇「私も。」
その一言で、廉の目が揺れる。
廉「俺、ずっと変わってない。」
〇〇「うん。」
廉「再会してからじゃない。もっと前から。」
〇〇は小さく息を吐く。
〇〇「え、」
廉「……ずっと好きやった。」
はっきり言う。
逃げない目。
〇〇は一瞬目を伏せるけど、すぐ顔を上げる。
〇〇「私ね、怖かった。」
廉「何が?」
〇〇「好きって言って、失うのが。」
廉はすぐ首を振る。
廉「失わへん。」
迷いのない声。
廉「〇〇がどんな選択しても、俺はちゃんと受け止める。でも、逃げたままは嫌や。」
〇〇「うん。」
胸が熱くなる。
〇〇「今日、決めた。」
廉の呼吸が止まる。
〇〇「もう本当に逃げない。ちゃんと向き合う。」
廉「俺と?」
〇〇「うん。」
その瞬間、廉の表情が崩れる。
嬉しさを隠せない顔。
廉「やっとやな。」
〇〇「待たせた?」
廉「めちゃくちゃ。」
でも笑ってる。
廉「でも待てたのは〇〇やからや。」
距離が少し縮まる。
廉「今すぐ答え欲しいわけちゃう。でも――」
〇〇「うん。」
廉「俺はこれからも隣にいたい。」
まっすぐ。
〇〇はゆっくり頷く。
〇〇「気持ち、ごまかさない。」
廉の手が少し動く。
触れそうで触れない距離。
廉「じゃあ俺は待つ。でも今度はただ待つだけちゃう。」
〇〇「どういうこと?」
廉「取りにいく。」
その目は本気。
〇〇は少しだけ笑う。
〇〇「やっぱ強いね。」
廉「〇〇相手やからな。」
そのとき、マネージャーの声。
「そろそろ移動します!」
二人は少し離れる。
でもさっきまでとは違う。
もう曖昧じゃない。
廉「あとで連絡する。」
〇〇「うん。」
すれ違う瞬間。
廉「今日はありがとう。」
〇〇「こっちこそ。」
背中を向けて歩き出す。
でも分かってる。
今日、関係は変わった。
共演者以上。
――――――――――
夜
部屋の灯りを落とした〇〇は、ベッドに座ってスマホを見る
着信 ―― 廉
少しだけ深呼吸してから、通話ボタンを押す
〇〇「もしもし」
廉「……起きてた?」
〇〇「うん 廉は?」
廉「俺も なんか今日そのまま寝られへんくて」
少しの沈黙
電話越しにお互いの呼吸が聞こえる
廉「今日さ ちゃんと話せてよかった」
〇〇「うん」
廉「逃げへんって言ってくれたやろ」
〇〇「言ったね」
廉「あれ めっちゃ嬉しかった」
〇〇「そんな顔してたよ」
廉「バレてた?」
〇〇「うん 分かりやすい」
二人とも少し笑う
廉「正直な 怖かった」
〇〇「……うん」
廉「またごまかされるんちゃうかって思ってた」
〇〇「ごめんね」
廉「謝らんでええ 俺が好きなだけやし」
その優しい言い方に、胸がぎゅっとする
〇〇「でも ちゃんと向き合うって決めたから」
廉「それ 期待していい?」
〇〇「……うん」
長い沈黙
でも重くない
廉「俺な 〇〇の隣におりたい」
〇〇「うん」
廉「守りたいって言ったけど ほんまは一緒に戦いたい 〇〇が強いのも弱いのも全部知った上で」
〇〇「廉 真っ直ぐすぎる」
廉「〇〇相手やからな」
〇〇「ねえ」
廉「うん?」
〇〇「もし私がちゃんと好きって言ったら 後悔しない?」
廉「せえへん」
即答
廉「〇〇となら 何があっても後悔せえへん」
〇〇は目を閉じる
〇〇「……もう少しだけ時間ちょうだい」
廉「いくらでも待つ」
〇〇「待つだけじゃないって言ってたよね」
廉「うん 取りにいく」
〇〇「強いなあ」
廉「〇〇やから」
静かな夜
〇〇「今日 舞台挨拶でさ」
廉「うん」
〇〇「隣に廉がいて 安心した」
廉「俺も」
〇〇「自然に笑えた」
廉「俺も自然やった」
少し声が柔らかくなる
廉「〇〇 無理すんなよ」
〇〇「してないよ」
廉「してる顔 分かるから」
〇〇は小さく笑う
〇〇「ずっと見てた?」
廉「うん ずっと」
鼓動が強くなる
廉「これからも 見る」
〇〇「……うん」
廉「好きやで」
静かな声
強くも弱くもない、まっすぐな言葉
〇〇は少し息を止めてから
〇〇「ありがとう」
廉「今はそれでええ」
〇〇「おやすみ 廉」
廉「おやすみ 〇〇」
通話が切れる
静かな部屋
でも心はもう静かじゃない
――――――――――
北斗side
舞台挨拶が終わった夜。
北斗は控室で一人、スマホを握っていた。
さっきまでモニター越しに見ていた〇〇と廉の距離感が、頭から離れない。
笑い合う視線。
自然に近い立ち位置。
あの空気。
……もう話してるよな。
分かってる。
でも確かめたかった。
トーク画面を開く。
北斗
「お疲れ。」
既読、早い。
〇〇
「ありがと。見てた?」
北斗
「うん。」
少し間を空けて、指が動く。
北斗
「廉とちゃんと話せた?」
送ってから、しまったと思う。
直球すぎたかもしれない。
でも既読はすぐについた。
〇〇
「うん。ちゃんと話したよ。」
胸が、ぎゅっと縮む。
北斗
「そっか。」
短い。
でもそれ以上、言葉が出ない。
〇〇
「北斗にはちゃんと伝えたかったから。」
なんでそんな優しい言い方するんだよ。
北斗
「わざわざ俺に言わなくてもいいのに。」
〇〇
「言いたいから言ったの。」
その一文に、息が止まる。
北斗は天井を見上げる。
覚悟してたはずなのに、全然平気じゃない。
北斗
「……後悔しない?」
少しだけ、本音が滲む。
〇〇
「しないよ。ちゃんと自分で決めたから。」
強いな。
昔から、そういうところ変わらない。
迷っても、最後は自分で決める。
北斗
「そっか。」
またそれしか言えない。
〇〇
「北斗、怒ってる?」
北斗
「怒ってない。」
嘘じゃない。
怒ってはない。
ただ、苦しいだけ。
北斗
「応援は、する。」
送信ボタンを押す指が少し震えた。
〇〇
「ありがとう。」
その“ありがとう”が、やけに遠い。
しばらく画面を見つめたまま、動けない。
廉ともう話してる。
ちゃんと向き合って、決めてる。
俺は何してたんだろうな。
好きだって言えばよかった。
奪いにいけばよかった。
でも今さら遅い。
北斗
「今日はゆっくり休めよ。」
〇〇
「北斗もね。」
それで会話は終わった。
スマホを伏せる。
胸の奥がじわじわ痛む。
応援するって言った。
言ったけど――
ほんとは。
全然、応援なんてしたくない。
「……くそ。」
小さく呟いた声は、誰にも届かない。
でも、
まだ完全には終わってない。
北斗は目を閉じる。
次に会う時、自分はどんな顔をするんだろう。
笑えるのか。
それとも、もう隠せないのか。
――――――――――☀️
翌朝
芸能ニュースサイトのトップに、二つの大きな見出しが並んだ。
【速報】
映画『消えゆく君のために、僕は笑っていよう』
公開20日で興行収入△△億円突破 動員△△△万人超え
国民的女優〇〇と永瀬廉がW主演を務める話題作が、公開から20日で大ヒットを記録。
切なくも温かいラブストーリーが口コミで広がり、リピーターも続出している。
余命一年を宣告されたトップ女優と、彼女を想い続ける幼馴染。
限られた時間の中で紡がれる“生きる意味”と“愛の形”が幅広い世代の共感を呼んでいる。
SNSでは
「涙止まらなかった」
「廉くんのまっすぐな愛に心撃ち抜かれた」
「〇〇ちゃんのラストの笑顔が忘れられない」
など絶賛の声が相次ぐ。
映画関係者は
「派手な展開ではなく、二人の繊細な感情の積み重ねが評価されている」
と分析している。
ーー
その数時間後。
別のニュースが拡散され始めた。
【話題】
松村北斗 × 高畑充希
映画『秒速5センチメートル』
松村北斗の演技評価が急上昇
公開中の映画『秒速5センチメートル』で主演を務める松村北斗の演技力が、映画評論家や観客から高い評価を受けている。
繊細な心情表現と抑えた芝居、言葉数の少ない役どころで見せる“目の演技”が印象的だと話題に。
SNSでは
「静かなのに感情が伝わる」
「北斗くんの表情だけで泣ける」
「充希ちゃんとの空気感がすごい」
といった声が広がっている。
関係者は
「派手な恋愛描写ではなく、時間の流れや距離感を丁寧に描いた作品。松村の内側の演技が評価につながっている」
とコメント。
二作品はどちらも“恋愛”をテーマにしている。
だが意味は違う。
『消えゆく君のために、僕は笑っていよう』は
限られた時間の中で“愛を選ぶ物語”
『秒速5センチメートル』は
すれ違いと距離の中で“想いを抱え続ける物語”
前に進む愛と、
抱えたまま進む愛。
ーー
〇〇side
朝
楽屋で一人、スマホを開く
トップニュース
『消えゆく君のために、僕は笑っていよう』
興行収入△△億円突破
思わず息を吐く
嬉しい
素直に嬉しい
あの現場で、泣いて、笑って、
必死に向き合った時間が、ちゃんと届いてる
スクロールする
次の記事
松村北斗『秒速5センチメートル』
演技評価急上昇
指が止まる
ジャンルは似ているのに、意味は違う
私たちは
“愛を選ぶ物語”
北斗は
“抱え続ける物語”
抱え続ける
その言葉が胸に引っかかる
昨日の電話を思い出す
廉の声
真っ直ぐな言葉
「取りにいく」
私は前に進もうとしている
でも
北斗はどうしてるんだろう
スマホを伏せる
嬉しいはずなのに
少しだけ、落ち着かない
もし今、北斗に会ったら
どんな顔をする?
私はちゃんと、まっすぐいられる?
胸の奥が静かに揺れる
でも決めた
逃げない
進むって決めた
だから
一度だけ深呼吸して
メイク室のドアを開ける
今日は笑う日
女優としても
一人の人間としても
――
廉side
移動車の中
マネージャーが嬉しそうにスマホを差し出す
「興行収入△△億円突破」
画面を見た瞬間、自然と笑みがこぼれる
やったな
頭に浮かぶのは数字より〇〇の顔
雨のシーン
病院のシーン
舞台挨拶で隣に立った感覚
ちゃんと届いてる
スクロール
別の記事
松村北斗『秒速5センチメートル』
演技評価急上昇
静かな演技
目で語る芝居
抱え続ける想い
……強いな
正直に思う
同じ恋愛ジャンルでも全然違う
俺たちは
前に進む物語
北斗は
止まった時間を抱える物語
対照的すぎる
昨夜の電話を思い出す
「取りにいく」
自分で言った言葉
負けへん
作品も
気持ちも
今回は、待つだけやない
ちゃんと掴みにいく
スマホをポケットにしまう
目が、はっきりと前を向く
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北斗side
自宅
静かな朝
スマホを開く
自分の記事
演技評価急上昇
静かな芝居
繊細な目の演技
評価されてる
嬉しい
でも心は静かだ
スクロール
〇〇と廉の映画
大ヒット
希望
愛を選ぶ物語
一瞬、息が止まる
愛を選ぶ
俺の作品は
抱え続ける物語
皮肉だな
現実も、似てる
好きだって言えないまま
抱えたまま
でも
それで終わるつもりはない
画面を消す
評価が上がったなら
自信にしていい
俺は弱くない
静かに立ち上がる
抱え続けるだけの男で終わる気はない
次、会った時
ちゃんと目を見て話す
逃げない
今度は
俺が動く