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〇〇side ――収録前
楽屋の鏡の前
ライトに照らされた自分の顔
いつもと同じメイク
いつもと同じ衣装
なのに、鼓動だけ違う
今日は特別回
豪華俳優陣ゲスト
姫野〇〇
永瀬廉
松村北斗
高畑充希
四人の名前が並ぶテロップをさっき確認した
緊張しないわけがない
コンコン
ノック
廉が顔を出す
廉「準備できた?」
〇〇「うん。そっちは?」
廉「余裕」
即答
でも目が少しだけ鋭い
強がりだってわかる
廊下を歩く
北斗の楽屋の前を通る
扉は閉まっている
足が一瞬止まる
会えば、きっといつも通り話せる
でも
今日はテレビ
感情は持ち込まない
そう決めて、スタジオへ向かう
――――――――――
北斗side ――収録前
静かな楽屋
台本を何度もめくる
共演者欄
姫野〇〇
永瀬廉
高畑充希
文字を追うだけで、胸がざわつく
高畑さんとは映画の現場で何度も芝居を重ねた
呼吸も分かる
でも今日は違う
〇〇と廉が並ぶ
あの二人の映画は大ヒット
スマホに表示されるニュース
『消えゆく君のために、僕は笑っていよう』大ヒット
スクロール
『秒速5センチメートル』演技評価急上昇
評価は嬉しい
でも
現実は作品みたいに綺麗じゃない
立ち上がる
逃げない
今日も、抱えたまま立つ
――――――――――
廉side ――収録前
マネージャー「今日、視聴率相当いきますよ」
廉「やろな」
平然
でも心は熱い
四人並ぶ
話題になる
〇〇の横に座る
北斗とも並ぶ
もう待たへん
スタジオ入り
北斗と目が合う
逸らさない
静かな火花
――――――――――
収録本番
司会「今夜は超豪華俳優陣!」
歓声
四人横並び
まずは『消えゆく君のために、僕は笑っていよう』
病室の名シーンが流れる
司会「姫野さん、この笑顔の裏側は?」
〇〇「泣きそうでした。でも彼女は最後まで笑うって決めた人だったから」
スタジオが静まる
司会「永瀬さんは?」
廉「隣で見てて、守りたいって思ってました」
観客「きゃー!」
〇〇「やめて」
廉、笑う
続いて
『秒速5センチメートル』
雪の駅
司会「松村さん、難しい役でしたね」
北斗「答えを出さない恋なので、言えないままの感情を大事にしました」
〇〇の指がわずかに動く
司会「高畑さんから見た松村さんは?」
高畑「松村さん、本番になると目が本当に変わるんです」
北斗「高畑さんが明るくしてくれたので助かりました」
自然な距離
司会「ジャンルは似ていますが意味は真逆ですよね」
廉「僕らは“選ぶ恋”」
北斗「僕は“抱える恋”」
司会「お互いの作品どうでした?」
廉「正直、悔しいです。北斗の芝居すごかった」
北斗「ありがとうございます。でも俺はああやって選ぶ強さは持てないかもしれない」
一瞬、視線が〇〇へ
〇〇「どっちも強さだと思います。選ぶのも、抱えるのも」
空気が張り詰める
――
司会「ここからは裏話暴露コーナー!」
歓声
司会「永瀬さん、姫野さんの裏の顔ありますか?」
廉「あります」
〇〇「ちょっと待って」
廉「〇〇、天然です」
観客「えー!」
〇〇「違う」
廉「映画の一番大事なクライマックス、病室のシーン」
司会「はい」
廉「俺が泣きながらセリフ言い終わった瞬間」
間
廉「“あ、コンタクトずれた”って普通の声で言いました」
スタジオ大爆笑
〇〇「言ってない!」
廉「言いました」
〇〇「小声だった!」
廉「普通の声でした」
観客爆笑
廉「しかも俺の肩掴んで」
再現
廉「“ちょっと動かないで”」
スタジオ崩壊
〇〇、思いきり廉の腕を叩く
〇〇「やめて!」
バシン
廉「痛っ!」
観客「きゃー!」
司会「仲良しですね!」
廉「俺号泣してる役やのに目開けて待機」
〇〇「ちゃんと謝った!」
廉「“今めっちゃ泣いてるからこのまま使える?”って」
爆笑
高畑「プロですね」
北斗、少し笑いながら
北斗「現場明るくなりそうですね」
〇〇「フォローが真面目」
司会「松村さんは天然タイプどうですか?」
北斗「…好きですよ、そういうの」
一瞬、間
観客「おおー!」
〇〇「え?」
北斗「現場が和むので」
廉「危ない発言」
笑い
――
司会「高畑さん、松村さんの裏話は?」
高畑「松村さん、不器用なんです」
北斗「え」
高畑「マフラー巻くシーンで全然上手く巻けなくて」
映像再現
観客爆笑
廉「それはあかん」
〇〇「貸してって言えばいいのに」
北斗「言えなかったんです」
高畑「だから私が巻きました」
拍手
――
司会「もし自分が役の立場なら?」
廉「俺は選びます。迷わない」
北斗「…抱えます」
〇〇「私は…選びたい。でも怖いです」
廉、小声で
廉「怖くてもええやん」
〇〇「聞こえてる」
また叩く
笑い
モニター
【番組歴代最高視聴率更新速報】
歓声
――
〇〇side ――収録後
楽屋
一気に静か
今日、何回視線が交差した?
何回叩いた?
スマホが震える
廉「お疲れ」
短い
返信しようとして止まる
今日は余韻が強い
――
廉side ――収録後
控室
マネージャー「最高視聴率です」
廉「そっか」
嬉しい
でもそれ以上に
隣に立てた
逃げなかった
次は
行動
――
北斗side ――収録後
廊下
高畑「松村さん、今日ちょっと熱かったですね」
北斗「そうですか?」
高畑「ええ。珍しく感情出てました」
北斗「…かもしれません」
察している
でも聞かない
ありがたい
楽屋
抱え続けるだけじゃ終わらない
動き出している
三人の時間が
静かに、確実に
進んでいる。
ーーーーーーーーーー
放送終了直後
Xトレンド
1位
【〇〇 廉 叩く】
2位
【神回確定】
3位
【距離感どうなってる】
切り抜き動画
例のシーン
廉「“あ、コンタクトずれた”って普通の声で言いました」
〇〇「言ってない!」
バシン
廉「痛っ!」
観客「きゃー!」
ここがループ再生される
――――――――――
視聴者の声
「叩き方ガチすぎて好き」
「廉の“痛っ”リアルすぎ」
「距離感恋人」
「北斗の顔一瞬固まったよね?」
「高畑充希さん笑い方可愛い」
「歴代最高視聴率納得」
「この四人空気やばい」
「廉、完全に好きやん」
「松村北斗の“好きですよ”も忘れるな」
考察アカウント爆誕
“叩きは照れ隠し説”
“北斗の目線検証スレ”
“廉の小声『怖くてもええやん』解析動画”
切り抜きが止まらない
再生回数100万突破
――――――――――
〇〇side
マネージャー
「叩いたシーン、バズってます」
スマホを渡される
トレンド1位
〇〇「なんで…」
動画を見る
自分の叩き、思ったより強い
コメント欄
“夫婦漫才”
“公開イチャイチャ”
“北斗の表情切ない”
最後のコメントで指が止まる
見返す
確かに
叩いた瞬間
北斗、笑ってるけど
目が少しだけ静か
胸がちくっとする
でも
番組としては大成功
女優としては正解
そう自分に言い聞かせる
――――――――――
廉side
マネージャー
「例のシーン、再生回数えぐいです」
廉「そらな」
動画を見る
叩かれた瞬間の自分
嬉しそうに笑ってる
コメント
“廉嬉しそうすぎ”
“完全に好きな人に叩かれてる顔”
廉、苦笑い
でも否定しない
あの距離
作ったわけじゃない
自然に出た
それが一番強い
北斗の表情も見る
静か
負けへん
画面を閉じる
次はもっと近くへ
――――――――――
北斗side
一人の部屋
トレンドを見る
【〇〇 廉 叩く】
動画再生
バシン
廉の笑顔
〇〇の照れ
自分のワイプ
一瞬
止まる
巻き戻す
確かに少しだけ
表情が落ちてる
コメント
“北斗切ない”
“秒速の役そのままじゃん”
皮肉
抱える恋
まるで現実
でも
今日
ちゃんと笑えた
逃げなかった
それでいい
今はまだ。
ーーーーーーーーーーーーーーー
その日の夜。
〇〇side
事務所 会議室
マネージャー「来月のCMですが、映画効果でかなり増えてます」
スタッフ「今日の番組以降、SNSの反響もすごいです」
〇〇「炎上はしてないですよね?」
スタッフ「むしろ好感度上がってます」
会議は一時間半
ようやく終了
マネージャー「今日は以上です。お疲れ様でした」
〇〇「お疲れ様です」
資料をまとめて廊下へ出る
その時
スタッフA「SixTONESってほんと仲良いよね」
スタッフB「今もまだYouTube撮ってるらしいよ、スタジオで」
スタッフA「まだ?元気すぎ」
足が止まる
スタジオまでは少し遠い
さすが我らの事務所
広すぎる
今日はもう仕事終わり
……覗くだけならいいよね
長い廊下を歩く
スタジオ前
中から笑い声
コンコン
ドアを少し開ける
ジェシー「え?」
樹「うわ、〇〇じゃん」
慎太郎「本物だ」
きょも「どうしたの?」
高地「迷子?」
北斗は少し後ろ
目だけこちらを見る
〇〇「迷ってない」
笑う
〇〇「お疲れさま」
ジェシー「なんでいるの?」
〇〇「会議終わって。まだ撮影してるって聞いたから」
樹「覗きに来たの?」
〇〇「うん」
慎太郎「素直かよ」
笑い
高地「さっき終わったとこ」
きょも「今はほぼ雑談」
ジェシー「反省会と言いながらお菓子食べてる」
〇〇「いいなあ」
樹「入れば?」
〇〇「いいの?」
慎太郎「もちろん」
〇〇が中に入る
北斗、ゆっくり近づく
北斗「会議お疲れ」
〇〇「うん。そっちは?」
北斗「長かった」
ジェシー「番組神回だったな」
樹「叩き強すぎ」
慎太郎「トレンド1位」
〇〇「やめて」
きょも「廉くん嬉しそうだったよね」
一瞬空気が変わる
樹「北斗も見てたよな?」
北斗「……見た」
ジェシー「何回?」
北斗「一回」
慎太郎「嘘つけ」
高地「ワイプ止めて見てたでしょ」
北斗「止めてない」
〇〇「ほんとにやめて」
樹「でもあの叩き方ガチだったよ」
慎太郎「バシンって」
ジェシー「廉“痛っ!”ってリアル」
〇〇、顔を覆う
〇〇「編集で消してほしかった」
きょも「無理無理。あれがハイライト」
高地「距離感バレたね」
〇〇「何もバレてない」
北斗、静かに
北斗「楽しそうだった」
〇〇「え?」
北斗「スタジオ」
短い言葉
樹、空気読む
樹「〇〇、座る?」
〇〇「少しだけ」
丸椅子に座る
慎太郎「今日オフ?」
〇〇「うん。終わり」
ジェシー「じゃあYouTube出る?」
〇〇「今から?」
高地「カメラもう片付けちゃった」
きょも「でも撮ったら神回確定」
樹「タイトル“叩いた女優乱入”」
〇〇「やめて」
笑いが広がる
北斗は隣に立ったまま
距離が近い
でも触れない
ジェシー、ニヤニヤ
ジェシー「北斗、なんか言いなよ」
北斗「何を」
慎太郎「ほら」
北斗、少し間
北斗「……来てくれてありがとう」
静か
〇〇、少し驚く
〇〇「うん」
目が合う
一瞬
樹「はいはい空気重い」
笑いで流す
でも
確実に何かは動いている
ジェシー「よし!撤収!」
慎太郎「急だな!」
樹「空気読めよ」
高地「今日はここまで!」
きょも「〇〇またね」
〇〇「え、ちょっと」
樹、北斗の肩を軽く叩く。
樹「鍵よろしく」
北斗「……ああ」
ジェシー「じゃーなー!」
バタン、とドアが閉まる。
静か。
〇〇「……わざとでしょ」
北斗「だろうな」
〇〇「露骨すぎない?」
北斗「優しさ」
〇〇は椅子に腰掛ける。
〇〇「変なの」
少し沈黙。
スタジオの空調音だけが響く。
〇〇「北斗」
北斗「ん?」
〇〇「廉のことさ」
北斗は動じない。
もう知っている話だ。
北斗「うん」
〇〇「この前も言ったけど」
北斗「告白されたやつな」
〇〇「そう」
北斗は視線を逸らさない。
北斗「待っててって言ったんだろ」
〇〇「うん」
北斗「知ってる」
〇〇「だよね」
〇〇は少し俯く。
〇〇「今日、収録中さ」
北斗「うん」
〇〇「なんか…悪いことしてる気分になった」
北斗「なんで」
〇〇「だって私、待たせてるのにあんなに笑って」
北斗「仕事だろ」
〇〇「うん。でも」
北斗「でも?」
〇〇「廉、本気だったから」
北斗の胸がきつくなる。
北斗「分かってる」
〇〇「私、ずるいかな」
北斗「少しな」
〇〇「やっぱり?」
北斗「でも正直だ」
〇〇「決められないんだよ」
北斗「好きかどうか?」
〇〇「うん」
北斗は少しだけ視線を落とす。
北斗「嫌いじゃないんだろ」
〇〇「うん」
北斗「じゃあ廉は希望ある」
〇〇は小さく頷く。
沈黙。
〇〇「北斗はどう思う?」
北斗「何を」
〇〇「待つって」
北斗は少し考える。
北斗「きつい」
〇〇「だよね」
北斗「でも好きなら待つ」
〇〇「そんな簡単に言える?」
北斗「言える」
〇〇「なんで」
北斗、ほんの一瞬だけ〇〇を見る。
北斗「好きな人が笑ってるなら、それでいいって思うから」
〇〇はその言葉をそのまま受け取る。
〇〇「廉もそうなのかな」
北斗の胸が締め付けられる。
北斗「多分な」
〇〇「今日さ」
北斗「うん」
〇〇「私が廉叩いたとこ、バズってるらしいね」
北斗「トレンド上位」
〇〇「最悪」
北斗「楽しそうだった」
〇〇「仕事だから」
北斗「分かってる」
少し間。
〇〇「ねえ北斗」
北斗「ん?」
〇〇「もしさ」
北斗「うん」
〇〇「好きな人が“待ってて”って言って、でも他の人と楽しそうにしてたらどうする?」
北斗は即答しない。
数秒の沈黙。
北斗「我慢する」
〇〇「え」
北斗「約束したなら待つ」
〇〇「苦しいじゃん」
北斗「苦しいよ」
〇〇「それでも?」
北斗「それでも」
〇〇は感心したように笑う。
〇〇「北斗、意外と一途なんだね」
北斗「……どうだろうな」
〇〇は気づかない。
その“一途”が自分に向いていることを。
〇〇「ありがと」
北斗「何が」
〇〇「ちゃんと聞いてくれて」
北斗は小さく頷く。
北斗「送る」
〇〇「いいのに」
北斗「夜遅い」
〇〇「子供じゃない」
北斗「知ってる」
立ち上がる二人。
スタジオの電気を消す北斗。
暗くなる空間。
北斗(言うな。今は言うな。)
隣を歩く〇〇は何も知らない。
ただ、少し安心した顔で笑っている。
その笑顔を守りたいと思っていることも、
北斗が“待つ側”に立っていることも、
何も知らないまま。
ーーーー
スタジオの電気を落とす北斗。
北斗「行くか」
〇〇「うん」
並んで廊下を歩く。
夜の事務所は静か。
〇〇「ほんと急に帰ったよね、みんな」
北斗「わざとだろ」
〇〇「だよね」
角を曲がった瞬間。
足音。
〇〇「……あ」
廉「お疲れ」
一瞬、空気が変わる。
北斗の視線が静かに鋭くなる。
〇〇「廉。まだいたの?」
廉「打ち合わせ長引いた」
北斗「お疲れ」
廉「北斗も」
淡々とした声。
でもお互い目は逸らさない。
廉「今日の番組さ」
〇〇「やめて」
廉「叩くの強すぎ」
〇〇「だって天然暴露するから!」
廉「嬉しかったけど」
北斗の指先が小さく動く。
〇〇「なんで」
廉「距離近いって言われるやつでしょ、ああいうの」
〇〇「違うし」
廉、少し真面目になる。
廉「待ってる身としてはさ」
北斗の呼吸がわずかに止まる。
廉「特別っぽい瞬間あると、安心する」
〇〇「特別じゃない」
廉「俺の中では特別」
沈黙。
北斗は黙ったまま。
廉「ちゃんと待ってるから」
〇〇「……うん」
北斗が一歩前に出る。
北斗「遅い。送るぞ」
〇〇「え、もうそんな時間?」
廉「送るんだ」
北斗「夜遅い」
廉「そっか」
数秒、静かな対峙。
廉が北斗を見る。
廉「北斗」
北斗「なに」
廉「俺、本気だから」
真っ直ぐな目。
北斗も逸らさない。
北斗「知ってる」
廉「待つって決めたし」
北斗「そう」
廉「簡単に諦めない」
空気が張り詰める。
〇〇「ちょっと怖いんだけど」
廉、笑う。
廉「怖くない」
北斗「怖くない」
同時。
一瞬、視線がぶつかる。
廉「じゃあ帰る」
〇〇「うん、お疲れ」
廉「おやすみ」
少し間を置いて
廉「〇〇」
〇〇「なに?」
廉「焦らなくていい。でも忘れないで」
〇〇「……うん」
廉は去っていく。
足音が遠ざかる。
静寂。
〇〇「なんか緊張した」
北斗「だろうな」
〇〇「廉、本気だよね」
北斗「うん」
〇〇「私、ずるいかな」
北斗「少し」
〇〇「やっぱり?」
北斗、わずかに息を吐く。
北斗「でも選ぶのは〇〇だろ」
〇〇は気づかない。
北斗がその“選択肢”の一人だということに。
〇〇「送ってくれるんでしょ?」
北斗「ああ」
並んで歩き出す二人。
北斗の表情は静か。
でも胸の奥では、廉の言葉が何度も響いている。
“俺、本気だから”
ーーーーーーーーーー
事務所前。
夜風が少し冷たい。
タクシーが止まる。
北斗「乗れ」
〇〇「え、いいよ一人で帰れる」
北斗「顔やばい」
〇〇「やばくない」
北斗「やばい」
運転手がドアを開ける。
北斗「ほら」
〇〇は少しだけ迷ってから乗り込む。
〇〇「……ありがと」
北斗も隣に座る。
ドアが閉まる。
タクシーが走り出す。
街の光が窓を流れていく。
〇〇「今日ほんと長かった」
北斗「何時間?」
〇〇「朝5時入りで、生放送まで」
北斗「寝てないだろ」
〇〇「寝た」
北斗「何時間」
〇〇「……2時間」
北斗はため息をつく。
北斗「自慢にならない」
〇〇は小さく笑う。
〇〇「でも楽しかった」
北斗「無理して笑うな」
〇〇「してない」
少し沈黙。
タクシーの揺れが心地いい。
〇〇「……あったかい」
北斗「暖房」
〇〇「うん」
声がゆっくりになる。
瞼が重くなる。
北斗は横目で見る。
〇〇の頭が小さく揺れる。
北斗「寝ろ」
〇〇「寝ない……」
数秒後。
コトン。
肩に重み。
北斗の体が少し固まる。
〇〇は完全に眠っている。
規則正しい寝息。
北斗「……即落ち」
小さく呟く。
昼間は誰よりも強い顔で立っているのに。
今は無防備。
北斗はそっと体勢を整える。
肩が安定するように。
〇〇が起きないように。
北斗「信用しすぎ」
でも、その重みが嬉しい。
ジャケットを脱いで、〇〇の膝にかける。
タクシーが信号で止まる。
赤い光が二人を照らす。
北斗は横顔を見つめる。
長いまつ毛。
少し開いた唇。
北斗「……ずるい」
言ってないのは自分。
伝えてないのは自分。
それなのに。
こんな距離で眠る。
スマホが震える。
ポケットの中。
北斗は画面を見る。
“廉”
一瞬、視線が揺れる。
出ない。
振動が止まる。
北斗は再び〇〇を見る。
起きない。
北斗「今は起こさない」
マンション前に到着。
運転手「着きました」
北斗はそっと肩を揺らす。
北斗「〇〇」
〇〇「ん……」
北斗「着いた」
〇〇「え……寝てた?」
北斗「爆睡」
〇〇「最悪……」
ジャケットに気づく。
〇〇「これ北斗の?」
北斗「ああ」
〇〇「ありがと」
何も知らない笑顔。
北斗の胸が少し痛む。
〇〇「今日もありがとね」
北斗「うん」
ドアが開く。
降りる前。
〇〇「北斗」
北斗「ん?」
〇〇「また明日」
北斗「……ああ」
〇〇が去る。
ドアが閉まる。
タクシーが走り出す。
後部座席で一人になった北斗。
肩に残る温もり。
ポケットの中の着信履歴。
北斗は目を閉じる。
静かな夜。
言えないままの想いだけが、重く残る。
――――――
マンションに入った〇〇。
靴を脱いだ瞬間、スマホが震える。
画面。
廉
〇〇「……タイミング」
通話に出る。
〇〇「もしもし?」
廉「寝てた?」
〇〇「今帰ったとこ」
廉「そっか。北斗と?」
〇〇「うん、送ってもらった」
一瞬の間。
廉「優しいな」
〇〇「顔やばいって言われた」
廉、少し笑う。
廉「俺も送れたのに」
〇〇「仕事だったでしょ」
廉「終わったあと連絡しようと思ってた」
〇〇はソファに座る。
〇〇「ごめん」
廉「なんで謝るの」
〇〇「なんか、待たせてるのにさ」
廉「待つって言ったの俺」
〇〇「でも」
廉「焦らなくていい」
優しい声。
でもその奥に強さがある。
廉「ただ」
〇〇「うん?」
廉「他の誰かに取られるのは嫌」
〇〇、少し黙る。
〇〇「取られないよ」
廉「分かんないだろ」
〇〇「……」
廉「俺、今日北斗の顔見て思った」
〇〇「え?」
廉「負ける気ないって顔してた」
〇〇は驚く。
〇〇「え、なにそれ」
廉「なんでもない」
少し笑う。
廉「とりあえず今日は寝ろ。声眠そう」
〇〇「バレた?」
廉「バレる」
〇〇「ありがと、電話」
廉「おやすみ」
〇〇「おやすみ」
通話が切れる。
〇〇は少しだけ天井を見る。
胸の奥が、少しだけ騒がしい。
――――――――――
一方その頃。
タクシーの中。
北斗は着信履歴を見つめている。
廉
数秒迷う。
そして、発信。
コール音。
廉「……珍しい」
北斗「さっき出れなかった」
廉「〇〇と一緒だった?」
北斗「送ってた」
沈黙。
廉「優しいな」
北斗「別に」
廉「俺も送れた」
北斗「仕事だろ」
廉「終わったあと連絡するつもりだった」
北斗「そう」
数秒。
廉「北斗」
北斗「なに」
廉「俺、本気だから」
北斗「知ってる」
廉「待つって決めた」
北斗「うん」
廉「でも黙って待つ気はない」
北斗の目がわずかに鋭くなる。
北斗「奇遇だな」
廉「え?」
北斗「俺も」
空気が静かに張り詰める。
廉「〇〇の気持ち次第だろ」
北斗「ああ」
廉「正々堂々いこう」
北斗「当たり前」
短い沈黙。
廉「奪う気ある?」
北斗は少しだけ笑う。
北斗「ある」
廉「……やっぱり」
北斗「でも今は言わない」
廉「なんで」
北斗「タイミング」
廉「俺はもう言った」
北斗「知ってる」
数秒。
廉「負けない」
北斗「俺も」
通話が切れる。
タクシーが夜を走る。
同じ想い。
違うアプローチ。
でも目指す先は一つ。
――――――
とある日の夜。
〇〇はソファに沈み込んでいる。
台本を開いたまま、目だけがぼんやりしている。
最近ずっと忙しい。
撮影、番宣、打ち合わせ。
気づけば、ちゃんと休んでいない。
スマホが震える。
画面。
北斗
〇〇「……珍し」
通話に出る。
〇〇「もしもし?」
北斗「起きてたか」
〇〇「うん。どうしたの?」
北斗「声疲れてる」
〇〇「気のせい」
北斗「嘘」
〇〇は小さく笑う。
〇〇「なんの用?」
数秒の間。
北斗「最近、リフレッシュしてないだろ」
〇〇「え」
北斗「オフの日も台本持ってるって聞いた」
〇〇「誰情報?」
北斗「内緒」
少し沈黙。
北斗「飯行こ」
〇〇「……は?」
北斗「ちゃんと飯食ってるか怪しい」
〇〇「食べてる」
北斗「コンビニだろ」
〇〇「……」
北斗「図星」
〇〇「うるさい」
北斗の声はいつも通り落ち着いている。
でもどこか柔らかい。
北斗「明日、夜空いてるか」
〇〇「明日?撮影終わりなら」
北斗「じゃあ迎え行く」
〇〇「え、普通に行けるけど」
北斗「顔バレしたら困る」
〇〇「それは北斗も」
北斗「俺はいい」
〇〇「よくない」
小さく笑い合う。
〇〇「なんで急に?」
北斗、少しだけ間を置く。
北斗「ただ」
〇〇「うん?」
北斗「疲れてる顔見るの、嫌だから」
〇〇の胸がわずかに揺れる。
〇〇「……優しいね」
北斗「違う」
〇〇「違わない」
北斗は小さく息を吐く。
北斗「俺が行きたいだけ」
〇〇「え」
北斗「たまには二人でゆっくり飯食うのも悪くないだろ」
その言い方が、少しだけ特別に聞こえる。
〇〇「……うん」
北斗「嫌なら断れ」
〇〇「嫌じゃない」
数秒、無言。
でも嫌な沈黙じゃない。
〇〇「じゃあ、明日」
北斗「ああ」
〇〇「楽しみにしてる」
北斗の声がほんの少し低くなる。
北斗「俺も」
通話が切れる。
〇〇はスマホを胸に置く。
なんだろう。
廉に誘われた時とは違う感覚。
落ち着く。
でも、少しだけ鼓動が速い。
一方、北斗。
部屋でスマホを握ったまま。
北斗「……言った」
ただの食事。
ただのリフレッシュ。
でも。
北斗「ここからだ」
静かな夜。
少しだけ、何かが動き出す。
――――――🌙
夜。
〇〇はマンションのエントランスを出る。
オフ感のあるニットにロングスカート。
ナチュラルなメイク。
髪もゆるく下ろしている。
仕事の完璧な女優の顔じゃない。
ただの〇〇。
街灯の下に立つ北斗。
黒のロングコートにシンプルなトップス。
落ち着いたシルエットのパンツ。
スマホを見ていた北斗が顔を上げる。
北斗「……」
言葉が止まる。
〇〇「お待たせ」
北斗、数秒無言。
〇〇「なに」
北斗「いや」
視線を逸らす。
北斗「そんな感じなんだな」
〇〇「どんな感じ?」
北斗「オフ」
〇〇は首を傾げる。
〇〇「オフだよ?」
北斗はもう一度見る。
ラフな服。
厚底じゃない靴。
少しだけゆるい雰囲気。
北斗の胸がじわっと熱くなる。
北斗(やばいだろ…)
いつもは遠い存在。
今日は近い。
北斗「似合ってる」
〇〇「え、珍し」
北斗「本音」
〇〇「ありがと」
さらっと笑う。
無自覚。
北斗は小さく息を吐く。
北斗「行くぞ」
タクシーが止まる。
北斗がドア側に立つ。
北斗「乗れ」
〇〇「命令口調」
北斗「はいはい」
〇〇が乗り込む。
北斗も隣へ。
ドアが閉まる。
タクシーが走り出す。
車内は静か。
ネオンが流れる。
〇〇は窓の外を見ている。
北斗は横目で見る。
ラフな横顔。
仕事中には見せない柔らかさ。
北斗「……」
〇〇「なに?」
北斗「いや」
視線を外す。
北斗「今日、ほんとにオフだな」
〇〇「だからオフだって」
〇〇が笑う。
その笑顔にまた胸が鳴る。
北斗(なんでこんな破壊力あるんだよ)
カーブで車が揺れる。
〇〇の肩が少し触れる。
〇〇「ごめん」
北斗「いい」
距離が近い。
ニットの柔らかい質感。
ほのかな香り。
北斗は無言で前を向く。
北斗「今日誘ったの正解だった」
〇〇「なんで?」
北斗「その顔見れたから」
〇〇「どの顔」
北斗「仕事してない顔」
〇〇は少し黙る。
〇〇「北斗の前ではしてないよ」
無意識。
北斗の心臓が強く鳴る。
北斗「……それ、ずるい」
〇〇「なにが?」
北斗「なんでもない」
信号で止まる。
赤い光。
至近距離。
北斗は一瞬だけ、まっすぐ見る。
北斗(これ以上は危ない)
青に変わる。
タクシーが再び走り出す。
ただのご飯。
でも北斗の中では、もうただじゃない。
北斗「なあ」
〇〇「ん?」
北斗は少し間を置く。
北斗「最近さ」
〇〇「うん」
北斗「ちゃんと笑ってるか?」
〇〇「またそれ?」
北斗「仕事じゃなくて」
〇〇は少し考える。
〇〇「……どうだろ」
正直な声。
北斗の視線が柔らかくなる。
北斗「廉とは?」
一瞬、空気が変わる。
〇〇はゆっくり北斗を見る。
〇〇「急に名前出すじゃん」
北斗「避けるな」
〇〇「避けてない」
数秒の沈黙。
〇〇「……ちゃんと向き合ってるよ」
北斗「好きなのか?」
ストレート。
〇〇の心臓が少し跳ねる。
〇〇「……分かんない」
北斗の指先がわずかに動く。
北斗「分かんないって何」
〇〇「大事だよ。すごく」
北斗「それは分かる」
〇〇「でも、好きって即答できるかって言われたら…」
言葉が止まる。
タクシーが信号で止まる。
赤い光が二人を照らす。
北斗はまっすぐ見る。
北斗「じゃあさ」
〇〇「なに」
北斗「俺は?」
静か。
〇〇の呼吸がわずかに止まる。
〇〇「……なにそれ」
北斗「俺は大事?」
〇〇「当たり前じゃん」
即答。
北斗の胸が少し揺れる。
北斗「それは仲間として?」
踏み込む。
〇〇は視線を逸らす。
〇〇「北斗は……」
言葉が続かない。
北斗は小さく息を吐く。
北斗「正直に言え」
〇〇「分かんない」
その言葉に、北斗の目がわずかに揺れる。
〇〇「でも」
北斗「……」
〇〇「北斗といると楽」
静かな声。
〇〇「無理しなくていいって思える」
北斗の心臓が強く鳴る。
北斗「それだけか?」
〇〇「……分かんないってば」
少し照れた声。
信号が青に変わる。
タクシーが走り出す。
北斗は前を向いたまま言う。
北斗「俺は分かってる」
〇〇「なにが」
北斗「自分の気持ち」
空気が張りつめる。
〇〇は何も言えない。
北斗はそれ以上言わない。
ただ、静かに続ける。
北斗「今日はリフレッシュだろ」
〇〇「……うん」
北斗「考えすぎんな」
でもその横顔は、いつもより真剣だった。
タクシーは目的地へ近づいていく。
ただの食事のはずなのに。
もう、ただじゃない。
タクシーが店の前で止まる。
北斗「着いた」
〇〇「落ち着いてるね、ここ」
二人は時間差で降りる。
人目につきにくい入口。
北斗が扉を開けようとした、その瞬間。
店の中から笑い声。
ガラス越しに見えた横顔。
〇〇「あれ?」
扉が開く。
出てきたのは
永瀬廉と
髙橋海人。
海人「え、ちょ、北斗!?」
北斗「は?」
廉が〇〇を見る。
一瞬、目が止まる。
廉「……偶然やな」
〇〇「びっくりした」
海人「なにこれ、集合?」
北斗「違う」
海人が北斗の肩に腕を回す。
海人「北斗ここ来るの珍しくない?」
北斗「たまたま」
海人「嘘くさ」
二人の距離は完全に仲良しモード。
〇〇「二人ほんと仲良いよね」
海人「俺ら?親友!」
北斗「勝手に言うな」
でも否定は弱い。
廉は静かに〇〇を見る。
廉「飯?」
〇〇「うん、リフレッシュ」
廉の視線が北斗に移る。
北斗は表情を変えない。
廉「そっか」
数秒の沈黙。
海人「じゃあ一緒に入る?」
〇〇「え?」
北斗「お前が言うな」
海人「だって楽しそうじゃん」
廉は少し考えてから言う。
廉「どうする?」
問いかけは〇〇へ。
〇〇は普通に答える。
〇〇「せっかくだし、いいんじゃない?」
北斗の心臓が一瞬だけ強く鳴る。
でも顔には出さない。
北斗「俺はどっちでも」
海人「決まり!」
自然な流れで4人で店内へ。
〇〇は何も疑っていない。
北斗の気持ちにも。
廉の視線の意味にも。
ただの偶然。
ただの楽しい夜。
でも、並びはこうなる。
海人と北斗が前。
後ろに〇〇と廉。
海人「北斗この前さー!」
二人はすでに男子トーク。
〇〇「ほんと仲良いね」
廉「せやな」
廉の声は柔らかい。
でも視線はまっすぐ。
入口の前。
一瞬、立ち止まる。
四人の距離が微妙に交差する。
偶然のはずなのに、
空気は少しだけ張りつめている。
案内されたのは半個室。
海人「どう座る?」
海人が先に座る。
その隣に北斗。
向かいに〇〇。
その隣に廉。
海人「バランス良くない?」
北斗「何の」
〇〇「別にいいけど」
廉は静かに〇〇の隣に座る。
北斗は水を一口飲む。
ほんの一瞬だけ、視線が〇〇と廉の距離に落ちる。
でも何も言わない、
海人「てかさ!」
三人が同時に見る。
海人「このメンツ、バラエティ出たら絶対おもろいよね?」
〇〇「カオス」
廉「確かに」
海人「三角関係とかあったら最高じゃん!」
空気が一瞬止まる。
〇〇「は?」
北斗「お前黙れ」
海人「冗談冗談!」
でも笑ってるのは海人だけ。
廉は〇〇を見る。
〇〇「何その設定」
北斗「くだらない」
さらっと流す。
〇〇は本当に何も気づいていない。
料理が運ばれる。
海人「北斗これ食えよ」
北斗「別に良いよ」
海人「好きじゃん」
北斗「覚えてんの?」
海人「当たり前」
自然なやり取り。
〇〇は笑う。
〇〇「ほんと仲良いね」
海人「でしょ?」
北斗「腐れ縁」
海人「でも俺のこと一番理解してんの北斗だから」
北斗「うるさい」
でも口元は少し緩む。
〇〇はその雰囲気に安心している。
ただの仲間。
ただの友達。
廉が〇〇の皿に料理を取り分ける。
廉「これ食べやすいで」
〇〇「ありがと」
自然。
優しい距離。
北斗はそれを横目で見る。
表情は変わらない。
海人はその空気を察している。
海人「〇〇さ」
〇〇「ん?」
海人「最近ちゃんと休んでる?」
〇〇「またそれ?」
廉「ほんまに心配してる」
北斗「無理すんなよ」
〇〇「みんな保護者?」
笑う。
無邪気。
北斗の気持ちにも、廉の想いにも、まだ気づかない。
――――――
食事は穏やかに進む。
でも、
廉は〇〇を守るように座り、
北斗は感情を隠して笑い、
海人は全部分かっていて空気を回す。
四人なのに、
見えない線が三角に交差している。
〇〇だけが、その中心で笑っている。
ーーー
〇〇が席を立つ。
〇〇「ちょっとお手洗い」
海人「いってらっしゃい」
扉が閉まる。
数秒後。
北斗も立つ。
海人「北斗?」
北斗「電話」
個室を出る。
廊下の奥。
ちょうどトイレ前で、廉と鉢合わせる。
静かな空気。
廉「偶然多いな今日」
北斗「だな」
視線がぶつかる。
廉「どういうつもり?」
直球。
北斗「飯誘っただけ」
廉「二人で?」
北斗「問題あるか」
廉は少し近づく。
廉「俺、待ってるって言うたよな」
北斗「知ってる」
廉「それでも?」
北斗の目が揺れない。
北斗「それでも」
数秒の沈黙。
廉「本気?」
北斗「最初から」
空気が張る。
廉は小さく笑う。
廉「やっぱりな」
北斗「お前こそ」
廉「俺も本気や」
静かな宣戦布告。
扉の向こうから〇〇の足音。
二人は何事もなかったように距離を保つ。
北斗が戻る。
海人はじっと見ている。
海人「話した?」
北斗「何を」
海人「俺に嘘つくなよ」
北斗は水を飲む。
海人「本気じゃん」
北斗「……ああ」
海人「〇〇気づいてないよ」
北斗「知ってる」
海人「どうすんの」
北斗「待つ」
海人「また?」
北斗「俺は急がない」
でもその声は少しだけ低い。
海人「傷つくぞ」
北斗「慣れてる」
海人はため息。
海人「かっこつけすぎ」
北斗「うるさい」
でも目は真剣。
〇〇が戻る。
何も知らない顔。
〇〇「なんか静かじゃない?」
海人「平和」
廉も戻る。
四人揃う。
会話はまた軽くなる。
その途中。
〇〇がふと北斗を見る。
さっきより少しだけ無口。
〇〇「北斗?」
北斗「ん?」
〇〇「疲れてる?」
北斗「別に」
〇〇「そっか」
でもその目は、ほんの一瞬だけ長く止まる。
理由は分からない。
ただ、なんとなく。
胸の奥が少しだけざわつく。
でも〇〇はすぐに笑う。
気づかない。
まだ気づかない。
四人の夜は続く。
表面は穏やか。
裏では静かに火がついている。
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