そこは、暗かった。
異様に高くやせ細った木が、
周りに何本も立っている。
森の中だろうか。
ふと見ると、目の前で一人の少年が
すすり泣いているのがわかった。
その少年はボロボロで、
血のような、肉塊のようなものが、
そこら中に散乱していた。
夢の中の俺は、そいつに話しかける。
pe?「大丈夫?」
そう言って近づこうとするが、
こちらに気づいた瞬間、
そっぽを向かれてしまう。
???「…来ないで、お願いだから…」
そう塩対応を取られてしまうが、
夢の中の俺は諦めが悪いようだ。
pe?「俺、ぺいんと!お前、名前なんて言うの?」
???「…知らない。名前なんてない。あったとしても、言わない。」
塩対応を続ける少年だが、それを見て俺は
もっと心配してしまったようだ。
pe?「足とか腕とか、いっぱいケガしてるよ?俺が治してあげる!」
そう言って俺はまた近づこうとする。
その瞬間、男の子は俺に対して
ハエでも蹴散らすかのようにブンブンと
手を振り回した。俺は思わず後ずさる。
???「来ないでって言ってるじゃん!僕から離れろ!!」
そう少年が拒絶するも、
俺は抗いながら少年の傷を
持っていたティッシュや絆創膏で
手際よく処置していった。
pe?「はい、これでおっけー!」
俺は青い血のついたティッシュを
自身のポシェットに詰め込む。
???「…なんで、逃げないの?怖く、ないの?」
pe?「まぁ、確かに怖いけどさ…でも君も怖がってるし、なによりケガしてたじゃん!人助けは大事だって、父さん言ってた!」
良い奴すぎる俺に対し、
その少年はようやく顔を上げた。
その顔は、どこか、俺の知ってる誰かに、
似ているような気がした。
???「…あり、がとう…」
pe「………ん………………」
俺は朝、目覚めた。
寝ぼけ眼をこすりながら、洗面所に向かう。
脳がはっきりしてきたとき、
俺はあの夢の光景について
思考を巡らせていた。
pe「…あの光景、どっかで見たことあるような…」
その時、どこからか声が聞こえた。
dp「大丈夫かよ?本体さん。」
pe「……あ、ダーペ。」
俺は、虚無を見つめながら語りかける。
俺の周りには誰もいない。
語りかけているのは、俺の脳内だ。
ダークぺいんと。俺はダーペと呼んでいる。
ダーペは、いつの間にか俺の中にいた。
いつから居たかも、なぜ居るのかも
俺は知らない。
ダーペのことは、母さんにも日常国の
みんなにも、伝えたことは無い。
ダーペと俺は、二重人格のような関係だ。
俺が主人格で、ダーペが第二人格。
しかし、医療機関で検査をした所、
二重人格では無いらしい。
ダーペは「俺はお前に取り憑いた悪魔だ。
だから俺らは二重人格では無い。」
とか言い張ってるけど、
案外本当なのかもしれない。
俺とダーペの記憶は共有されない。
いや、ダーペの方に俺の記憶は行くが、
俺の方にダーペの記憶が来ることは無い。
ダーペが記憶を共有したいと思えば
俺にダーペの記憶を共有することも
できるそうだが。
なので、俺はダーペに隠し事を
することができない。
dp「昨日から災難だなぁ、お前。」
pe「ほんとなんなんだよ…急に不思議なこと起こりすぎだって…」
dp「…で?あの夢が見覚えあるって言ったか?」
pe「うん…記憶にはないんだけど、なんか凄く、既視感があるというか…」
dp「ほーん…意味不明だな。」
pe「俺だってわかんないよ……」
俺は分かりやすく肩を落とす。
dp「…さて、そろそろ朝食の時間じゃないか?」
pe「あ、ほんとじゃん!あっさごっはん〜!」
俺は一度夢のことを忘れ、
ルンルンと楽しげに朝食を食べに行った。
俺が来た時には既に全員が席に着いており、
一番最後に俺は席に着いた。
みんなで朝食を食べる。
しかし、盛り上がることはなかった。
みんなで黙々と口を動かしていたとき、
コンコン、と食堂のドアが叩かれた。
mob「失礼します。幹部様方はいらっしゃいますでしょうか?…あ、電話番の○○です。」
kyo「ん、ほいはっへ……っし、のみ込めた。なんや?」
mob「えっと…夢縁町という町の町長さんから、町付近でらっだぁ統領のニット帽とマフラーらしきものを発見したと連絡がありまして…」
kyo「………………………?!」
その言葉を聞いた時、全員の手が止まった。
きょーさんはガタッと音をたて立ち上がる。
kyo「…その町、どこや。」
mob「え?えーっと…ここから、東の方に……」
電話番の女性は、何が何だか分からないと
言いたげな顔でその場所を説明しようとする。
しかし、俺がそれを止めた。
pe「…あの…俺、その町、知ってます。」
kyo「はぁ?!!」
きょーさんが凄い形相でこちらに振り返る。
俺は怯えながら声を出した。
pe「そ、そこ…俺の地元、です……」
tr「……なっつかしいなぁ、ぺいんとの故郷!」
夢縁町に着くや否や、
トラゾーがワクワクした様子で
俺たちの先陣を切った。
あの後、しっかりと場所を説明し
トラゾーにも連絡を入れ全員で夢縁町へ
向かうことになった。
事前に母にも連絡を入れていたためか、
町の知り合いが出迎えてくれた。
mob「よお、ぺいんと!やっとかめなぁ!」
mob「元気しとった?」
mob「日常国の幹部として、しっかりやっとるか?」
pe「そんな心配せんでも大丈夫!元気元気!!」
そう言って、俺はニカッと笑ってみせる。
kr「…ぺいんと、バリバリ方言出てるなぁ…」
tr「まぁ、そりゃここで育ってきた訳ですね。」
二人はお互いを見やり、苦笑した。
クロノアさん達は何度かこの町に
来たことがあるため慣れているようだが、
俺らが楽しんでいる横で、運営国の四人が
肩身を狭くして歩いていた。
しかし、町のみんなはそれを見逃さない。
mob「おい、日常国以外の幹部もおるぞ!」
mob「運営国の方々だ!急いで御出迎えせねば!!」
町のみんながバタバタと準備に
取り掛かるのを見て、四人はビビりながら
道の端寄りの方を歩く。
kyo「…俺らも結構人気になっとったんやなぁ…全く知らん人達に名前知られとる…」
md「…キンチョウスル……」
re「ちょ、俺帰っていい?帰っていいかな?」
cn「まぁ、帰ってられないんだけどねぇ…」
運営の四人は、身を縮こませながら
愛想笑いして役所に向かう。
マフラーとニット帽は、
そこに管理してもらっているそうだ。
sn「…めちゃくちゃ緊張してますね、きょーさん達…」
kyo「そら緊張するやろ!初めて来る村やぞ?知らん人ばっかなんやぞ?!」
tr「いや、 そんな緊張することですか?」
md「ヨウキャ…ヒッコンデロ!」
sn「えぇ……………」
四人は常に周りを警戒しながら
体を寄り添い合い密集して道を歩く。
俺らはそれを見て、苦笑するしかなかった。
役所まで向かい扉を開けると、
白い髭を生やした50代前後のおじさんが
出迎えてくれた。
mob「おぉ、本当に来てくださるとは!」
町長は俺らを見やり、ふわっとした
微笑みを浮かべる。
mob「わざわざこんな町まで足を運んでくださり、誠にありがとうございます…!」
kyo「い、いえいえこちらこそ!わざわざ連絡までして頂いて…!」
きょーさんは町長との会話にとても
戸惑っている。大丈夫だろうか。
mob「とりあえず、こちらにかけてくださいな。」
kyo「あ、ありがとうございます!」
きょーさん達はオドオドしつつ腰掛ける。
俺らも座るよう促され座った。
mob「…おや?椅子が一つ余ってしまいましたか…」
mob「すいません、急いで片付けて参ります。」
そう言って町長さんは、
余分になった椅子を
役所のカウンター裏へと持ち込む。
おそらく、らっだぁの分も
用意してもらっていたのだろう。
町長は戻って来るなり、首を傾げる。
mob「えぇっと、今日は…あぁ、そうだ!落とし物の話でしたな。」
そして、またカウンター裏へと姿を消す。
本当に昔から、しっかりしているのか
ドジなのかよく分からない人だ。
町長がカウンターから出てきたとき、
少し鉄臭い匂いがした。
mob「…こちらなのですが……」
町長は、手に持っていた青いニット帽と
赤のマフラーを俺らに見せる。
それを見て、俺らは絶句した。
それは、確かにらっだぁのものだった。
色、柄、形…どれも、俺らが
見慣れたもの。見間違えるわけが無い。
しかし、問題はそこじゃなかった。
re「…なんだよ、これ……」
レウさんが声を上げる。
その二つには、血がついていた。
いや、見た目だけ見れば血ではない。
全くもって血には見えない。
しかし、本能が、匂いが、
これは血だと騒いでいる。
スライムのようにネバネバしていて、
鉄の匂いと同時に、ゴミ捨て場のような
異臭も持ち合わせていて、そして、
sn「…青い…血……?」
その血は、青かった。
コメント
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うはーきたこれ2人の異常が見えるので
青いニット帽と赤マフラー、、それはまさしくピエロですn(((((