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めーし
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瑞希 流星♟也中
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「置いていくなんて……聞いてないアルよ」って台詞がもう……王耀の無力さと愛おしさが溢れてて、読んでて涙腺崩壊しました……。永遠を生きる存在が、たった一人の人間を忘れないって誓う姿、すごく美しくて苦しい。時雨は王耀の歴史の一部になったんだね。この静かな別れのシーン、ずっと心に残ります。
深い悲しみの底で、どれだけの時間が流れただろう。
部屋を包んでいたオレンジ色の夕暮れの光はいつしか消え失せ、障子の向こうは深い群青色の夜へと変わっていた。やがて、静まり返った和室に、規則正しい秋の虫の音だけが戻ってくる。
王耀は、冷たくなりかけた時雨の体をしっかりと抱き締めたまま、動かずにいた。
幾千年の歴史のなかで、彼は数え切れないほどの別れを経験してきた。戦火の中で消えていった民、時代の波に飲まれて散っていった英雄たち、そしていつの間にか忘れ去られていった無数の記憶。死というものに対して、彼は誰よりも慣れているはずだった。
――だが、こんなにも胸が引き裂かれるような痛みは、今までに一度もなかった。
「……ずるいアルよ、時雨」
掠れた、けれどどこか優しさを帯びた声が、静かな部屋にぽつりと落ちる。
王耀はゆっくりと顔を上げ、妻の顔にそっと触れた。もう呼吸はしていない。しかし、その顔に浮かんでいるのは、苦しみでも絶望でもなく、あの夜に見せた恥じらいや、これまでの人生を慈しむような、穏やかで美しい微笑みだった。
「置いていくなんて……そんなの、聞いてないアルよ」
涙で濡れた頬のまま、王耀は彼女の額にそっと自分の額を寄せた。
ひんやりとした冷たさが伝わってきて、彼女がもうこの世界にいないという現実を突きつけてくる。けれど、不思議と心にあった冷たい空洞は、少しずつ満たされていくような気がした。
それは、彼女が遺してくれた言葉の温もりだった。
『耀さんが……わたくしのことを、覚えていてくださる限り……わたくしは、耀さんの、長い長い歴史の一部になって……ずっと、貴方の胸の中で、生きていきます……』
そうだ。
人間である彼女の命はここで終わりを迎えたかもしれない。けれど、彼女が遺した愛も、共に過ごした十年の記憶も、不老不死である彼の魂に深く、消えることのない刻印として刻み込まれている。
王耀はゆっくりと息を吸い込み、固く閉ざしていた腕を少しだけ緩めると、時雨の乱れた白銀の髪を丁寧に、いとおしそうに梳いた。そして、彼女の冷たくなった両手を自分の胸にそっと当てる。
「……約束するアル。絶対に忘れない」
彼の声は、もはや震えてはいなかった。
それは誓いであり、永遠を生きる国家としての、彼女に対するたった一つの誠実な返答だった。
「お前の声も、髪の匂いも、あの夜の無茶苦茶なキスも、泣き顔も、笑顔も……全部、我の一部にして、この世界が終わるその日まで、一緒に連れて歩いていくアルよ」
王耀は微笑んだ。涙はまだ瞳の端に残っていたが、その表情には、すべてを受け入れた者の穏やかな強さがあった。
彼はゆっくりと立ち上がり、時雨を布団に寝かせると、その周りに彼女が好きだった花をそっと手向けた。
窓を開けると、ひんやりとした夜風が部屋に流れ込み、静まり返った空には、満天の星々が瞬いていた。その星の光は、まるで遠くから彼女が微笑んでいるかのように、どこまでも優しく輝いている。
これから先、彼が歩む途方もなく長い時間のなかに、もう彼女の姿はない。隣を歩いて、手を繋いでくれる温もりもない。
だけど、彼はもう孤独ではない。彼女が遺してくれた温かい思い出と、胸の奥底で響くその声と共に、彼は再び前を向いて歩いていくことができる。
「おやすみ、時雨。……また会う日まで、少しの間だけ待っててほしいアルよ」
静寂の中、王耀の呟きは夜空の星へと溶け込み、二人の長い物語は、終わりではなく、永遠の絆として彼の心の中にしっかりと根を下ろしていった。