この作品はいかがでしたか?
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「時間いっぱいです!! それでは本日の大目玉!! 人魚のケイミーは世界貴族、チャルロス聖の5億ベリーにて――」
――ああああああああああ!!!
ヒューマンショップの出入り口に何かが突っ込んできて、派手に壊れていく。
「何だお前もっとうまく着陸しろよ!!」
「できるか! トビウオだぞ! おめーが突っ込めっつったんだろ!!?」
そんな口論が後ろから聞こえてきた。
「あっ!! ケイミー!! ケイミー探したぞ~~!! 良かった!!」
「ちょっと待て麦わら! 何する気だよ!!」
叫びながら舞台の方へと駆けだしていくルフィをハチが止める。必死で止めたせいで、ハチの吸盤の付いたタコの腕が露出してしまう。
「きゃああ~~~!!! 魚人よ~~~!!! 気持ち悪い~~~~!!!」
「何!? 魚人!?」
「なんで魚人が陸にいるんだよ!」
「何この肌の色!? 何その腕の数…!?」
「怖いわ! 存在が怖い!! 近寄らないで!!」
俺は立ち上がり、ハチの方へ向かう。
「おい、ジェディ」
ローの制止を聞かず、俺はパーカーを脱いでハチに被せる。
「ニュ~、ジェイデン…?」
「落ち着いて腕を隠せ」
「ハチ、一旦逃げよう! 今度はお前が危ねェ!」
「おれはいいんだ、ケイミーが」
「でもお前が怪我をすればケイミーも、ッ!」
――ドン! ドン! ドォン…!!
3回の銃声音。本来はすべてハチに当たる銃弾。だが、原作とは少し違って俺がいた。1発はハチに、もう2発は俺に当たった。ハチを庇ったことを後悔はしていないが、撃たれたところが痛い。
それに、ハチも当たり所が悪い。庇えていない。これじゃあ無駄に2人撃たれただけだ。
「うぐっ……」
ハチが階段に伏せる。俺も肩と足を撃たれてしまったのでその場に倒れ込む。
「むふふふ、むふーん、むふーん♪ 当たったえ~~っ! 魚人を仕留めたえ~~! しかも邪魔する人間にも当たったんだえ~!」
「ハチ! ジェイデン!!」
「お父上様! ご覧ください! 魚人を捕まえましたえ! 自分で捕ったからこれタダだえ? 得したえー、魚人の奴隷がタダだえ~!! この狐の男も綺麗だからついでに奴隷にするえ~。タ~ダ、タ~ダ!」
ルフィが俺とハチの間を横切って天竜人の方へ向かう。明らかな怒りを露にして。
「待っ……てくれ゛……ハァ、麦わら…! だめだ…ハァ…ハァ……怒るな、おれが、ドジったんだよ…げほっ。〝目の前で誰かが撃たれても〟天竜人には逆らわねェって……約束、しただろ……どうせおれは海賊だったんだ…悪ィことしたから、その報いだ……」
そう言ってハチは苦しそうに呼吸を繰り返す。
「ジェイデンも、庇ってくれてありがとう……そして、ゴメンな……ご、こんな゛……つもりじゃなかったのになぁ…!!」
「……庇いきれてないから、お礼とか、言わないでくれ…。カッコつけようとして失敗したんだ…」
クソ、意識が徐々に遠のいてきた……。
「それでも、ありがとう……。おれ、ナミにちょっとでも償いをしたくて、おめェらの役に立ちたかったんだげども゛………やっぱりおれは、昔から……何やっても、ドジだから……! 本当にドジだから…!! 結局迷惑ばっかりかけて……ゴベンなァ~~…!!」
「魚め~!!」
天竜人のその声に、俺はハチの傷に触らないように彼に覆いかぶさった。
「撃ったのにまだベラベラ喋って、お前ムカつくえ~~!!!」
ルフィが俺たちを庇うように手を横に広げる。
天竜人は、そんなルフィに向かって発砲しようと金色の銃を向けた。
「やめろ、ムギ!! おめェらもただじゃ済まねェぞ!!」
「る、ふぃ…おこんな…」
どうせ止めても無駄だってわかってるくせに、俺はルフィの手を掴もうとする。でも腕が痺れてしまって動かない。
「お前もムカつくえ~~!!!!」
そんな傲慢な天竜人の声など聞こえない。そんなことを言わんとばかりに、ルフィは拳を握り、そして天竜人の顔を思い切り殴りつけた。
ルフィのパンチを食らった天竜人がぶっ飛んでいく。衝撃で会場内の座席が壊れていく。会場にいた全員が口をあんぐり開けている。そりゃそうだ。あの天竜人が殴られたんだから。
「悪ぃお前ら……コイツ殴ったら海軍の〝大将〟が軍艦引っ張って来んだって……」
「お前がぶっ飛ばしたせいで、斬り損ねた…」
「ハチ! ジェイデン! しっかりして!」
「ニュ~…お前ら、大変なことを……!」
「…まー、ルフィだから仕方ないわ!」
麦わらの一味がそれぞれケイミーを助けるべく動き始める。
「……チャルロス!」
「チャルロス兄さま~~!! お父上様にも殴られたことなどないのに~!!」
「おのれ!! 下々の身分でよくも息子に手をかけたな!!」
会場の天竜人と海賊を除く一般人たちが一斉に外へと雪崩れていく。
「この世界の創造主の末裔である我々に手を出せばどうなるか」
猟銃のようなものを握り、こちらに銃弾を浴びせてくる天竜人。
震える手で俺は烏融を抜き、ハチとナミに銃弾が当たらないよう防ぐ。銃弾が刀身に当たるたびに痛みが走る。一気に会場内が戦場と化す。
俺も、ローに怪我見てもらわねえと……。ハチはチョッパーが見るから多分大丈夫だ。
「貴様ら、あくまでも我々には向かうというんだな!!?」
「ケイミーは売り物じゃねぇ!!」
「〝海軍大将〟と〝軍艦〟を呼べ!! 目にものを見せてやれ!!」
そう叫んだ天竜人を、上から降ってきたウソップが尻で敷いた。
それを横目に、何とか俺はローのもとに辿り着くことができた。
「…ろ、ぉ……」
「お前は何でそう無鉄砲なんだ」
「ハチ、は…友達、だから……。救急セット、俺のかばんのなか、ある……」
ローが俺の鞄から消毒液とガーゼを取り出し、俺の腕と足に処置を施す。銃弾はローの能力で取り除いてもらった。
俺が手当てされている間にも、会場内では戦いが繰り広げられていた。
「――首に着いた爆弾外したらすぐ逃げるぞ。軍艦と大将が来るんだ」
「えェ!?」
「海軍ならもう来てるぞ、麦わら屋」
「何だお前……なんだそのクマ」
「海軍ならオークションが始まる前からずっと、この会場を取り囲んでる」
「えぇ!? 本当か!?」
「シャボンディ諸島には本部の駐屯所があるから、海軍はすぐにここに来るよ。天竜人がオークションに参加するのならなおさらな」
「まァ、海軍の奴らも真逆天竜人がぶっ飛ばされる事態になるとは思わなかったろうな」
「トラファルガー・ローね…あなた。――ルフィ、海賊よ、彼」
「……ふふ、面白ェもん見せてもらったよ。麦わら屋一味」
ローがそう言って笑みを浮かべた。
――ドンッ!
「うるさいアマス下々民! あいつらの狙いの人魚を殺すのアマス!!」
「ケイミーが、」
「しまった、ケイミーちゃんが!!」
「さァ、〝魚〟!! 死ぬアマス!!」
天竜人がケイミーに銃を向け、今にもその引き金を引こうとした時――激しい〝圧〟を感じた。
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