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「ホラ見ろ巨人くん。会場はえらい騒ぎだ。オークションは終わりだ。金も盗んだし、さァ、ギャンブル場へ戻るとするか……」
「質の悪ィじいさんだな。…金取るためにここにいたのか」
「あわよくば私を買ったものからも奪うつもりだったがなァ。考えても見ろ……こんな年寄り、私なら絶対奴隷になどいらん!! わはははは!」
ぐび、と恐らく酒を飲む白髪の老人。レイリーだ……。
「ん? 何だ、ちょっと注目を浴びたか」
「……!? なんだあのじいさんと巨人!」
「ありゃ商品じゃないか! どうやって檻から抜けて……どうやって錠を外したんだ!?」
「どうする!?」
「どうって…おれたちは捕獲は専門外だ!! 錠もついてねぇ巨人なんて抑えきれねェ」
「れ、レイリー……」
「え? コーティング屋か!? どっちが!?」
「おお!? ハチじゃないか!? そうだな!? 久しぶりだ。何しとる、こんなところで! その傷はどうした! ――あ~いやいや、言わんでいいぞ。…………ふむ……ふむふむ」
レイリーは会場内を見渡す。
「つまり――なるほど……まったくひどい目に遭ったな、ハチ…………お前たちが助けてくれたのか。――さて…」
「っぐ」
覇王色の覇気だ。頭の中がグラつく。
出血して弱ってさえしなければもう少し余裕をもって耐えられたかもしれないけど、今の俺では無理だった。ローにもたれかかり、意識が飛びそうになるのをなんとか堪える。海賊たちを残して全員がばたばたと倒れていく。
「キツ…」
音が遠い。足がふらふらする。
「ごめ、ん、ロー…」
「いい」
……あれ、ケイミーの首輪外れてる。さっきの爆発音はケイミーの首輪のだったか…。
「悪かったなキミら……見物の海賊だったか……。今のを難なく持ちこたえるとは、半端者ではなさそうだな」
「――まさかこんな大物にここで出会うとは……」
「〝冥王〟シルバーズ・レイリー…!! 間違いねェ、何故こんなところに伝説の男が…」
「この島じゃコーティング屋の〝レイさん〟で通っている……。下手にその名を呼んでくれるな。もはや老兵、平穏に暮らしたいのだよ」
こんなバッキバキの覇王色の覇気を出しておいてな~にが老兵じゃい!!
『犯人は速やかにロズワード一家を開放しなさい! 直〝大将〟が到着する。早々に降伏することを勧める! どうなっても知らんぞ!! ルーキーども!!』
外から拡声器を使った海軍のアナウンスが聞こえてくる。
「おれたちは巻き込まれるどころか、完全に共犯者扱いだな」
「〝麦わらのルフィ〟の噂通りのイカレ具合を見れたんだ、文句はねェが……〝大将〟と今ぶつかるのはゴメンだ…!」
「あー、私はさっきのような力はもう使わんのでキミら頼むぞ。海軍に正体がバレては住みづらい」
「長引くだけ兵が増える。先に行かせてもらうぞ」
「……ん、うわっ…?」
俺の足が縺れ、たたっとキッドの方に引き寄せられる。覚えがあるな、コレ。初めてキッドにチョーカーを貰った時と同じだ。
キッドのジキジキの実の能力でチョーカーの金属部分が引っ張られてキッドの手に吸い寄せられているのだ。
「いつまで別の奴のとこにいやがる、ジェイデン」
キッドがそう言ってニヤリと笑った。
「キラー、抱えておけ」
「あぁ」
俺はそのままキラーさんに抱き上げられる。うわあ、すっごいソフトに抱っこされた……。女だったらときめいて恋に落ちるよこんなの。
「もののついでだ、お前ら助けてやるよ。表の掃除はしといてやるから安心しな」
キッドの挑発のような言葉に、ルフィとローの船長組がキッドの後をついていく。言い争いをしながら…。
「酷い怪我だな、ジェイデン。一部始終見ていたが、お人好し具合は相変わらずか」
キラーさんが俺を抱えながら言った。少しして、俺の烏融が震える。これは烏融が震えているんじゃなくて、多分キッドの能力に引き寄せられているんだ。
俺は烏融をギュッと抱きしめる。……というか俺このままだとまたキッド海賊団の船に乗って四六時中キッドに口説かれることになるのでは? っぐぅ、そろそろ俺の貞操が危ない気がする……。
オークション会場の外は海軍が大量にいた。わあ~、いっぱいいる~(死)
「迫撃砲は能力者以外を狙え」
でかい大砲と、海兵が持つ銃が俺たちに向く。
「お、俺動けないのに…」
「大丈夫だ。キッドのお気に入りを誰かに傷つけさせるようなことはしない」
そう言ってキラーさんが俺の頭を撫でた。
「海賊どもを討ち取れ~!!」
「「おお~!!」」
海兵たちが突っ込んでくる。もう作戦もクソもない。これから始まるのは大乱闘だ。
ドォン、ドォンドォン、ドン、ドォン……! 大砲や銃弾が撃ち込まれる。
「おいキッド! 何を突っ立ってる!」
「…なあ、キラー」
「ん?」
「俺たちの通って来た航路じゃ、ワンピースを手にするなんてこと口にすると、大口を開けて笑われたもんだ。そのたびに俺は笑った奴らを皆殺しにしてきたがな。……だがこの先は、それを口にする度胸がねえ奴が死ぬ海だ。〝新世界〟で会おうぜ」
「……ジェディは置いていってもらうぞ」
ローがROOMを展開する。
「シャンブルズ」
ふっと景色が変わったかと思えばペンギンの腕の中にいた。
「よう、おかえり」
「た、ただいま…?」
「チッ、誰の許可を得て俺からそいつを攫った?」
「おい、ジェイデンはおれと一緒に魚人島に行くんだ!」
「ジェディはうちで預かる」
三船長が代わる代わる俺の名を呼び、俺を奪い合う。なんだこの状況、やめてくれ……。俺はぎゅうっと目を閉じて頭を抱えた。というかここにいたら俺もお尋ね者になっちまうよ~……狐の面は一応つけてるけど……!!
「ペンギン、俺重いだろ、ごめんな…」
「いや、意外と軽いから大丈夫だ。一回降ろすから、背中の方に回ってくれるか?」
「う、うん…」
地面に降ろしてもらった瞬間、俺の体がぐんっと引っ張られる。キッドだ。
「げほっ…荒い、苦しい」
「悪かった。もうしねェよ」
キッドが俺の頭に頬を擦り寄せる。いや待て、俺はローの船の方がいいんだ。己の貞操の安寧のためにも! と思ったところで足を撃たれて怪我をしているので歩けない。さっきから景色が変わりすぎてちょっと目が回る。
「さっさと引くぞテメェら!」
「「おう!!」」
キッドの声にキッドの船員たちが答える。
俺の体はキッドに抱えられ、そのままその場の海軍から逃げる。ああ……ローたちハートの海賊団が遠のいていく……ルフィたちも……。