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zmem
大丈夫なひとはれっつごー
ーーーーー
痛い、痛い。
目の前が涙で滲む。
擦れば跡になってしまうと溢れるに任せて俯けば、大粒の雫がぼたぼたと零れ落ちた。
「え、えみさん…」
別室に居たはずの友人の声に振り返る。ぼやけた視界に黄緑色の人影が映った。
「あ…ゾム、さん…?すみません、お見苦しい姿を。」
いい歳したおっさんが泣いている姿なんて見たくないだろう。それでも止まらない涙に仕方なくへらりと笑う。
「ちょっと顔、洗って来ますね。」
その笑いすらもぎこちなくなってしまった気がしてゾムさんの隣を足早に通り抜けようとするが、肩を掴んだ手に引き留められた。
「あの、ゾムさん…?」
「…誰にやられたん?」
「え?」
滲んだ瞳越しでも分かるほど近くから顔を覗き込まれる。その声が含むのは、空気が重くなるほどの怒気。
「誰に泣かされたんや?俺がおらん間に何があった?隠さず言え。エミさんにそんな顔させた奴は今すぐ消してーー」
「待ってください!」
ぶわり、と怒りに呼応して膨らもうとするコートを掴み慌てて叫ぶ。
「玉ネギ!玉ネギ切ってて涙出ただけです!」
途端、動きを止めたゾムさんがきょとんとした顔で私の顔と後ろのキッチン、その上にある切りかけの食材を見た。
「…たまねぎ?」
「はい、玉ネギです。」
「それで、泣いたん?」
困惑した様子のゾムさんに、彼が人間に詳しくないことを思い出して説明する。
「玉ネギの硫化アリルという成分が細胞が壊れることで気化して目や鼻の粘膜を刺激してしまうので人間は玉ネギを切ったとき涙が出るんです。」
「…そんなんで泣くとか、弱すぎるやろ。」
ぷいと顔を逸らしたゾムさんがまな板の上の包丁を取り上げ残った玉ネギをザクザク切っていく。「自分が泣くようなもんをあんなに色んな料理に使ってるとか意味わからんでほんま…美味いけど…」なんてブツブツ呟く背中に微笑んだ。
「ゾムさん、」
「何や」
「心配してくれてありがとうございます。」
「…人間が弱っちすぎてびっくりしただけや!」
コメント
5件
まじでemさん可愛すぎますって🤦♀️週の真ん中でいちばんきつい日になんて素晴らしい作品を👏疲れ吹っ飛びましたわ...zmさんの怒りに呼応して膨らもうとするところとかThe人外みたいな表現でめっちゃ好きです💕
emさんの天然ホワホワ感が好きすぎる
うわ、めっちゃいい話……! エミさんが玉ねぎで泣いてるのを、ゾムさんが「誰にやられたんや」って怒るところ、一瞬で空気変わって鳥肌立ちました。それで誤解が解けた後の「…たまねぎ?」って間の取り方が可愛すぎるし、照れ隠しの「人間が弱っちすぎてびっくりしただけや!」もツボです。硫化アリルの説明を真顔でするエミさんと、実はめっちゃ心配してたゾムさんの距離感、すごく好きです。続きが気になるー!
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#knut
M.S🦊🎧
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