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6章 世界の夢幻と色彩の少女達


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── クリエルテス ──


キラキラ、ピカピカ、光る岩。水晶の天地は無限に続く。

あっちを見れば宝石の森が、こっちを見れば金属の台地が。ここはもしかして宝の世界?

いえいえ、ただの食料です。どれも硬くて美味しいですよ。

石を全て道具にする変わった方々、今日も何かご入用ですか?───




「うー、目がチカチカするのよ」


煌めく水晶の草の輝きに当てられ、パフィは目を細めた。

ここは水晶のリージョン『クリエルテス』。パルミラの故郷せかいである。


「ほわー……」(こんな世界もあるんだ。不思議だなぁ)

「綺麗ねー」


青く、まるで氷のように見える水晶の地面、そして色とりどりの水晶の岩。生える植物も透明感があり、木の葉も透明感のある水晶。しかし自生する木々の肌はどう見ても石で、葉の中には宝石の実が成っている。

塔を出て初めて見た光景は町頭の光を乱反射し、太陽の無い町を眩しく彩っている。

町行く人々は、当然水晶の体を持つクリエルテス人が多い。リージョンシーカーもあるのでファナリア人をはじめとする他世界の人々も時々歩いていた。


「水晶って結構いろんな色あるのねぇ。緑なんかは初めてみる」

(ぱるみらみたいな人がいっぱいいる。なるほどーそーゆー世界かー)


初めて見るその光景に、アリエッタ達はしばらく塔の前でキョロキョロと見渡していた。

そんな少女達を、通行人がチラチラと見ている。


「なにあれ可愛い~」

「あんな服あるのか」

「あれって最近見るようになったフラウリージェの!?」

「マジで? もしかしてお金持ちのお嬢様集団?」


一般的な服は基本的に単色なのに対し、多数の色が織り込まれたアリエッタデザインの服は、見る者に衝撃を与えている。そんな声が聞こえたミューゼとパフィは、ちょっと恥ずかしそうに笑った後、そっとアリエッタの手を握った。


「う?」(2人ともどしたの?)

「なんかちょっと恥ずかしいかも」

「まぁ目立つのは当たり前なのよ。ねぇ総長?」

「まぁな……」


フラウリージェから服をもらって数日。ニーニルでは王女達と一緒にいたせいか、視線に慣れてしまっていたが、違うリージョンで知らない人々の視線を浴びて、いきなり恥ずかしくなってしまった。

その中でもとびきり恥ずかしがっているのはピアーニャである。


「なぁ、わちだけ…かえっていいか?」

「駄目に決まってるのよ。責任者がいなくてどうするのよ」

「そうそう、大人でしょ?」

「そうなんだが、そのいいかたムカツクな……」


ブツブツ文句を垂れながら、隠れていたピアーニャが前に出てきた。その瞬間、遠巻きに見ていた女性達から「かわいー!」との声が上がった。


「おのれアリエッタああぁぁ!」

「ぴあーにゃ?」(なーに?)


ピアーニャも例にもれず、アリエッタの新作を着ていた。いや着せられていた。

ベースは白い大きめのシャツとショートパンツ……なのだが、羽織っている青いケープのついた青いジャケットは、しっかりとモチーフがあった。腕部分は三角になるように脇が広く、襟元にはフリルのように白いギザギザがついており、青いフードを被れば上にも白いギザギザがついている。そして後ろに伸びる青い尾びれ。

サメである。サメの口から顔が出ている着ぐるみ風の服なのである。


「似合ってるのよ、総長」

「似合ってますね」

「うるさいなっ!!」


見た目3歳児の怒っている姿が服とマッチして、周囲の女性を悶えさせていた。アリエッタも思わずニッコリ。

全員サメという魚は認識していないが、狂暴な魚というものならばヨークスフィルンで見ている。今回作ったのは、その魚が印象に残ったからだろうと納得していた。


「さっさといくぞ! となりのガーネにいくんだろ」

「はーい」


迫力の全くないサメに怒られ、ミューゼ達はようやく歩き出した。

リージョンをつなぐ転移の塔のある町はアンジェラという町。かなり広い空間の中にある大きな町で、石の販売などのリージョン交流で栄えていた。鉱石・宝石といえばクリエルテス、そういうイメージが出来る程、重宝されているリージョンなのである。

そんな町の外れには、いくつかの方向に細い空洞がある。クリエルテス内は大きな空洞に人が住み、空洞同士が枝分かれした道でつながっているという、洞窟型のリージョンなのだ。


「ここって昼とか夜とかどうなるの?」

「ヒカリがくらくなるぞ。テンジョウとカベにひかっているスイショウがあるだろう?」


遠く離れた場所に、光を放つ大きな水晶が見えた。昼は明るい光を一斉に放ち、夜はその光が消え、その周囲の小さな水晶が小さな光を灯すという。

まだ見ぬその光景は想像がつかないが、ミューゼとパフィの楽しみが増えた。ハウドラントでもヨークスフィルンでも、夜は綺麗な景色が見えたので、期待しているのだ。


「ねぇ、綺麗な宝石がいっぱい売ってるのよ。もしかして宝飾店なのよ?」

「あ、ほんとだー。高そう~」


通り道にある小さな店に、山のように置いてある色とりどりの石。


(なんだろう、エメラルドにサファイア…っぽいけど。綺麗だなぁ)


前世では宝石などに縁が無かったアリエッタも、あまりの量に驚いていた。そもそも頭くらいの大きさの宝石など見た事が無い。

じっと見ていると、通りかかったクリエルテス人の男性が、そのうちの1つを手に取り、お金を払った。そして、そのまま宝石にかぶりついた。


『えっ……』


3人共驚くが、そもそもクリエルテス人は石を食べる種族である。パルミラも美味しそうに石のステーキを食べていたのを今思い出し、ちょっと凹みながら納得した。

そんなミューゼ達に、ピアーニャが説明する。


「あそこ、ただのショクヒンテンだぞ」

「うん、そうだったね……ここはそーゆートコだったわ」

「綺麗だったから忘れてたのよ」


ちなみにアリエッタは、理解が追い付かず、まだ茫然としている。

大きなカルチャーショックを受けている間も、アリエッタ達は周囲の目を引き続けている。それはもちろん服のせい。

クリエルテス人にとって、他リージョンから来た人が食品店で驚くのは、珍しい事ではない。可愛い集団が驚く所を見て、笑うというよりも微笑ましい気持ちになっているのだった。

温かい視線を感じたミューゼは一気に恥ずかしくなり、アリエッタを抱き上げて速足で町の外れへと歩き始めた。当然後を追うパフィとピアーニャ。パフィはともかく、ピアーニャは最初から恥ずかしい思いをしているので、先を急ぐのは望むところである。


「これが道?」

「そうだ」

「遠くから見たら小さいと思ってたのよ。目の前だと結構大きいのよ」


町の外れまでやってきた一同の目の前にあるのは、大人が10人以上横並びになってもまだ余裕がある程の穴。当然高さもそれなりにある。道の中にある壁や天井の水晶も、これまでと同じく光を発しており、遠くまでよく見えている。

そんな通路には、歩く人々もいれば、『雲塊シルキークレイ』で上の方を飛んでいるハウドラント人や、人にぶつからないように高速で滑走するワグナージュ人なども、たまに見ることができる。流石に石を食べる事が出来ないとクリエルテスでは暮らせないので、シーカーや商人の類である。

アリエッタ達も、ピアーニャが一緒にいるという事で、空中を飛んでいく。歩くよりも格段に速いので、あっさり隣のガーネという町にたどり着いた。


「この町は家の扉が赤いのよ」

「柱とか壁に家を掘っているのは変わらないのね」

「モクザイとかないから、アナほったほうがはやいからな。シュウリもイシつかうし」


通路を抜けた先には、アンジェラよりは少しだけ小さい規模の町、ガーネがあった。壁や柱にドアがついており、人々はその中で暮らしている。

ここで初めて見る光景が多すぎて耐えられなくなったアリエッタが、ミューゼの手を引いて歩き出した。


「およっ? どうしたの?」

「みゅーぜ! みゅーぜ!」(なんかさっきから宝石生えてない!? どういう世界なの!?)

「どうしたのよ? お腹空いたのよ? でもアリエッタには食べられないのよ?」


とりあえずアリエッタが指差したのは、水晶の草の中に生えた宝石の花。しかもたくさん。


「……これって高いの?」

「いや、やすいどころかザッソウだ」


リージョンが変われば常識も価値観も変わる。一見綺麗な宝石も、クリエルテスではその辺りに自生する石でしかない。

眉をひそめて唸るミューゼ達がクリエルテスに慣れるのは、だいぶ先の事になるだろうと、ピアーニャは考えていた。


「まぁココのことについては、ゆっくりおしえてやる。さきにいくトコロがあるからな」

「おっと、わかったのよ」


目的を思い出し、パフィは地図を開いた。


「あっちなのよ」


パフィの案内で、一行は1つのドアの前にやってきた。これまで見てきたのと同じように、壁の中が家になっている様子。

ミューゼがノックして待つ事少し。ドアが勢いよく開かれた。


「我の眠りを妨げるのは誰リムかっ!」


現れたのは、少し小さな……パルミラだった。


『……ん?』

からふるシーカーズ

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