無名
三途春千夜・歪愛
1話 : 浮き足
自覚できるほどに
今オレ、三途春千夜は浮き足立っている。
なんせ、我が王・梵天首領こと、マイキーに
思い切り褒められたのだから。
回想
三途: 失礼します。
佐野: あぁ。
そう短い返事を聞いて オレは部屋に入った。
佐野: どうした。
三途: 任務の報告です。
梵天首領・マイキー。
目元には濃い隈。
色白で光の無い瞳をもち、
白い髪のセンター分けをした男。
筋肉はついているが身体は細く、
服の袖口から見える手はガリガリと言ってもいいだろう。
だが、そんなマイキーを三途は
好いて、尊敬し、担ぎあげていた。
佐野: 言え。
三途: はい。今回は_____ 。
正直自分のモノにしたいくらい
尊敬し、好いている。
人前では理性を保ち普通にしているが、
頭の中も心の中もマイキーで満ち満ちている
三途: これくらいですね。
そういい、任務の結果を綴った資料を見せる
佐野: …………。
あぁ、資料を熱心に見つめる顔も美しい。
そう思いながら顔を眺めていると……
佐野: …………ウン。
佐野: いい収穫だ。良くやった。
思いもしない褒め言葉に
頭の先から足先まで嬉しさで溢れていく
褒めて貰えるなんて今日で1年の運を使い切ったかもしれない。
だが、理性は保ち続ける。
三途: ありがとうございます。
三途: これからも頑張りますね。
佐野: あぁ。
初めは褒められる度ニヤけていないか心配で、中学ぶりの黒マスクをつけていたが
それを付ける事は自分の気分を害すだけだったので数週間で剥ぎ取った。
三途: では、失礼しました。
佐野: あぁ。
ここまでが、経緯だ。
そして部屋を出たオレは
人気 のない廊下で
止まらないニヤニヤを露にしていた。
あまりにも浮き足立っている行動で
注意が足りてないのは分かってはいるが
この幸福な気分は抑えられそうにない。
が、案の定、周りへの注意が足りず
後ろに迫る影に気づけなかった。
蘭: 三途〜。
三途: ……!?
何故ここに灰谷兄がいるのか、 全く分からない。
余程、驚いた顔をしていたのだろう。
真横にいる人物が「ふっ」と吹き出した。
三途: 何笑ってんだよ……
蘭: いやさ、オマエそんな驚いた顔出来るんだ〜と思って
そうおちゃらけて言うこいつに腹が立つ。
三途:オレだって人間だぞ?驚くくらいする。
そう、オレは理性の効くだけで
普段は表情の緩い人間だ。
……つい先程のように。
蘭: 三途っていつもは仏頂面というか、真顔というか。
蘭: 感情が分かりにくいからさ。
三途: そんなにかよ……?
オレはそんなに硬い顔していたのか。
まぁ、気づいたところで丁度いい表情なんて知らないから変わることはないが。
蘭: 何より、取引の時の貼り付けた笑顔!!
蘭: いつもの真顔とのギャップが酷い!!
何を元気に言ってるのか……
やはりコイツは忌々しい。
三途: テメェみたいにいつもニコニコしてる方が怖ェだろうが。
きっとオレが常時笑顔でいれば
笑われるか、怖がられるかの2択だろう。
そしてどちらとも却下だ。
蘭: え、心外〜
蘭: 俺傷つきやすいんだよー?
何を馬鹿げた事をと思い適当に返事をする。
三途: はいはい。さっさと仕事に戻れ。
普段ならこのまま会話は終わる。
だが今回は違った。
蘭: ねぇ。三途。
三途: あ?まだ何かあんのか?
そして、この時灰谷兄が放った言葉で
オレの反社人生はガラッと変わってしまう。
next 10❤︎。
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6/2 20:33