無名
三途春千夜・歪愛
第2話・気づき
蘭: ねぇ。三途。
三途: あ?まだ何かあんのか?
そうオレを言い止めた灰谷兄が放った言葉で
オレの反社人生はガラッと変わってしまう。
蘭: ねぇ、三途。
三途: あ?まだ何かあんのか?
そう問い返しながら振り返った。
三途: い゙っ……!
振り返ると同時に腕を強く掴んで捻られる。
急に何をするんだ。と灰谷兄の顔を見たが
その時の表情は忘れられないだろう。
満面の笑みを浮かべ、とても仲間を痛ぶっているような表情ではなかった。
三途: 何のつもりだテメェ。さっさと離せ。
普段掴まれる程度なら振り払うが、
捻られていると無理矢理振り払った時こちら側が怪我をする可能性が高い。
そのため下手に振り払えなかった。
蘭: ……
離せと命令しても何も言わず表情も微動だにしない。
ただ掴む力も捻る圧力もどんどんと強くなる。
このままでは脱臼……いや、骨折をする可能性もある。
三途: 灰谷。腕を離せ。
いつものように出来るだけ痛みを表情に出さないよう冷静に言う。が……
急に灰谷兄の表情がかわった。
能面のような貼り付けたような。
先程まで不可思議とはいえ、満面の笑みで笑っていたような影や形は一切なかった。
三途: ·····。(表情が変わった·····?)
蘭: はぁ。
急に深いため息をつき、
次の瞬間。オレは痛みに悶えた。
三途: あ゙ぁ”……!!
そう。折られたのだ。腕を。
腕を折られたとなると、流石のオレも表情が
ぐしゃり、と歪む。
今の一瞬でオレは冷静さが欠け、
呼吸が少し荒くなり冷や汗が吹きでた。
それに比べ腕を折った本人はまたもや満面の笑みを浮かべた。
そして、突然に笑い始めた。
蘭: ははっ……ふっ…く、ふはっ。
まるでこの状況を笑っているかのように。
いや、実際笑っているんだろう。
だが正直、そんなこと気にすることなど出来ないくらいにオレは焦っていた。
仕事が出来ない。
ラットも殺れない
車の運転も。
無論、これは今気にすることでは無い。
これからの生活よりも今は荒れた呼吸と冷や汗を止める方が重要だった。
三途: っ”…ふーっ……ふっ、……はぁっ…。
だが、普通、急に腕を折られて冷静さが欠けない奴など居ない。
今、三途は冷静さが大きく欠けていた。
蘭: 三途〜。
そう呼びかけてくるが、不覚にも答えられない
無視を決め込んでしまっていた。
そして、それは目の前にいる相手の怒りに触れることになった。
蘭: ねぇ。聞いてんの?
蘭: もう一本いっちゃう?
圧のかかった言葉。
それが耳に入った瞬間またもや腕が軋んだ
今だに掴まれていた折れた腕をさらに強い圧力で掴まれたのだ。
それでも、痛みに呻くことしか出来ない。
三途: ぃ゙っ”だ…!
流石に痛みが限界だった。
もう折れている。振り払っても強い痛みしか来ない。
そう考え、思い切り振り払った。
蘭: え〜それ絶対痛かったでしょ〜。
振り払った瞬間に襲った痛みは気が遠くなるほど痛い。
掴んでいた手が無くなったことで足の力が抜けていたオレは床にへばった。
三途: が ッ”ぁぁ”……!! (痛ってェ·····!!)
痛みに吠えながらオレは灰谷兄を見上げた
そして、息を飲んだ。
ソイツの顔を見て背筋が凍る。
顔を赤らめ、心から嬉しそうにオレを見ている
瞳孔がハートに見えそうだ。
蘭: 〜〜〜っ。
そして、急に悶えたかと思えば両肩を掴まれた
蘭: 今!!今の顔…っ!!!
今は冷や汗や、悪寒で真っ青なはずだ。
笑われるのかと思った。だが、
飛んできた言葉は予想と180度違う物だった。
蘭: すっごくいい ! ❤︎
オレは痛みで埋まりそうな脳を働かせてその言葉を理解しようとしたが、
全くをもって理解できなかった。
口からは短い言葉がこぼれる。
三途: はっ……?
意味がわからなかった。
何がいいのか。
そして1つの感情に気づく
目の前にいる。
いつも見下していたコイツが。
灰谷兄が。
怖い。
蘭:三途はさ、いっつも無表情だよね。
蘭: そんなところも愛しいんだけどね。
オレは舐められないために、無表情を心がけていた。それは事実だ。
だが、普段「ヤク中」などと毒を吐く灰谷が
「愛しい」と言ったことに恐怖を覚えたのも、また事実だった。
畏怖するオレに構うこともなく淡々と灰谷兄は続ける。
蘭: ずっとずっっっと。無表情。
蘭: でも、三途との合同任務の日。
蘭: 三途はオレを庇って撃たれたよね。
確かにオレはこいつを庇って撃たれた。
その傷は最近完治したばかりだった。
蘭: オレ、その時さ。三途の滅多に動かない表情が大きく歪んだ時。
蘭: 胸が苦しいくらいいっぱいになったんだ。
蘭: とっってもいい表情だった。
蘭: また見たい。ずっと見ていたい。
蘭: だから……さ。
そこで言葉を止めたが、何が言いたいのかオレはハッキリとわかった。
それと同時にオレはやっと気づいた。
コイツはおかしい。
逃げないといけない。
そして、1つの可能性が浮かんだ。
灰谷兄はオレを「愛しい」と言った。
そう。愛しい、と
何か、悟ったような表情をしていたのだろう。
気づかれてしまった。
蘭: やっと気づいた?
ジリジリと元から近かった距離をさらに縮めてくる。
蘭: オレはさ。
聞いてはいけない。
逃げなければならない。
ここはまだ梵天の本拠地。
すぐ角を曲がれば部下の1人や2人はいる。
瞬間。
オレは駆け出していた。
三途: っ”……!!!
蘭: っあ。
走る度に揺れる腕が痛んで悲鳴を上げる
そんなことどうでもよかった。
段々と近づいてくる曲がり角に安心していた。
_____肩を掴まれるまでは。
??: はい。すとーっぷ。
蘭: ナイス〜。__、やるじゃん。
??: それほどでもある。
あぁ、終わった。
コイツも一緒かよ。
オレはもう逃げられないのだろうか。
コイツらのせいで。
💬、+👤よろしくお願いします🙏
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