テラーノベル
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「それじゃあ、この前の宿を予約しておく。まだ眠いだろう? ゆっくり休め。カップは俺が片付けておくから」
そう言って昴は立ち上がると、そのまま部屋を出て行こうとする。
その背中を見つめながら羽衣子は思わず声を掛ける。
「昴さん」
「どうした?」
振り返った昴に羽衣子は口を開きかける。
「あ……その……」
“まだ行かないで、もう少し傍にいてほしい”
そう伝えたいのに言葉にならず、どう言えばいいのか分からず黙り込んでいると、
「うわーん、パパー! ういちゃぁ……!」
遠くから、希海の泣き声が聞こえてきた。
「希海、どうしたんだ? 大丈夫だって」
続いて乙哉が宥める声も聞こえてくるけれど希海はなかなか泣き止まない。
「おとくんじゃないの! パパとういちゃんがいいの!」
どうやら希海は乙哉ではなく昴と羽衣子に傍に居て欲しいらしい。
「……乙哉が困ってるな」
昴は苦笑しながら羽衣子へ視線を戻した。
「羽衣子はいい、俺が行く。すまないがカップの片付けを頼めるか?」
そう言って今度こそ一人で部屋を出ようとするけれど羽衣子は咄嗟にその背中へ声を掛けた。
「私も、私も行きます……駄目、ですか?」
その言葉に昴が足を止めて振り返ると、羽衣子は不安そうな表情を浮かべていた。
「……分かった。一緒に行こう」
昴の返答に羽衣子はほっとしたように頷き二人で部屋を出るとすぐに寝室へ向かう。
寝室では泣いている希海を乙哉が何とか宥めようとしていた。
「乙哉、代わるからもう下がっていい」
「昴さん、羽衣子ちゃんも」
二人の姿を見つけた乙哉はほっと胸を撫で下ろした。
「乙哉、悪いが羽衣子の部屋のカップの片付けだけお願いしてもいいか?」
「え? あ、はい、了解っす。それじゃあ後は頼みますね」
それだけ言うと乙哉は二人に任せて寝室を出て行き、残された昴と羽衣子はベッドの上で涙を浮かべている希海へ近づいていく。
「希海くん、どうしたのかな? 怖い夢見ちゃった?」
羽衣子が優しく声を掛けると希海は涙を拭いながら小さな声で答えた。
「ういちゃ……パパ……」
「もう大丈夫だ。怖くないからもう一度寝ような」
昴も優しく声を掛けるけれど希海は二人の服をぎゅっと握る。
「……っ、パパも……ういちゃんも……いっしょに……」
その言葉に昴と羽衣子は顔を見合わせて視線を交わすと、どちらからともなく小さく頷き合った。
「そうだな。一緒に寝るか」
「そう、ですね」
昴と羽衣子は希海を真ん中にして三人でベッドへ入った。
すると、先程まで泣いていた希海の表情がみるみるうちに明るくなる。
「みんないっしょ! うれしーね!」
嬉しそうに笑った希海は左右にいる二人の手をそれぞれ握る。
小さな手に包まれた二人の間にも自然と穏やかな空気が流れていく。
「ぼく、もうねむくなーい」
嬉しさですっかり目が冴えてしまったのか希海は眠くないと言ってなかなか眠らない。
「まだ寝てる時間だ、目を瞑れば自然と眠れるから大人しく寝なさい」
「やだぁ、ねれないもん」
昴が言い聞かせても全く眠る気配がない希海。
見かねた羽衣子はチェストに置いていた絵本を手にすると、
「希海くん、絵本読んであげるからきちんと横になろう? ね?」
絵本で希海の眠気を誘おうと提案する。
「えほん! うん! よこになる!」
すると先程まで嫌がっていた希海は素直に横になって寝る体勢を整えた。
「偉いね。それじゃあ始めるね」
こうして羽衣子による読み聞かせが始まり、希海はわくわくと瞳を輝かせながら物語に耳を傾ける。
その横で羽衣子の心地良い声を聞いていた昴は、
「……パパ、ねてる」
いつの間にか希海よりも先に眠りの世界へ誘われていたようで規則正しい寝息が聞こえてきた。
「希海くん、パパは疲れてるから、静かにしようね」
「うん」
「それじゃあ希海くんも私と一緒に寝ようか。次に起きたらもう明るくなってるから、そしたら起きようね」
「うん」
こうして羽衣子と希海は気持ち良さそうに眠る昴を起こさないよう身体を寄せ合うと、二人も徐々に眠りへ落ちていくのだった。
#大人の恋
鷹槻れん

17,923
#年の差恋愛
コメント
1件
わああ第87話読みました〜!!😭💕 希海くんの「パパとういちゃんがいいの!」がもう尊すぎて胸がギュッてなったよ…!寝かしつけで昴さんが先に寝ちゃうの、なんかもう本当の家族みたいで温かくなった〜〜✨ 羽衣子ちゃんが絵本読んでるシーン、優しさに溢れてて泣ける🥺 三人で寄り添って眠る姿が宝物みたいで、ずっと見ていたい気持ちになりました!!次の話も楽しみにしてるね⋆♡