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#年の差
水無月 京
836
鷹槻れん

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鷹槻れん

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#強引
カーテンの隙間から覗く陽の光に照らされた昴はゆっくりと目を覚ました。
ぼんやりとした頭で天井を見上げたあと、隣へ視線を向ける。
そこには希海と羽衣子が寄り添うように眠っていた。
「……いつの間に眠っちまったんだ……?」
昴は小さく呟きながら昨夜のことを思い返す。
色々とあって気が昂っていた為、とても眠れるような状態ではないと思っていた。
だから希海と羽衣子が眠りについたら自分はベッドを抜け出してリビングへ行くつもりだったのだ。
それなのに気付けば朝になっている。
「……羽衣子の読み聞かせか……」
眠ってしまった原因を考えれば一つしか思い浮かばなかった。
昨夜羽衣子が希海に絵本を読み聞かせていた時の穏やかな声。
「……あの声には、どうにも眠気を誘われる……」
思い返しながら昴は苦笑する。
二人を起こさないよう昴はゆっくりとベッドから抜け出すと、眠っている希海と羽衣子に布団をかけ直し、足音を立てないよう静かに寝室を後にした。
リビングへ向かうと、既に起きていた皐月と乙哉が昴を迎えた。
「おはようございます」
「よく眠れましたか?」
「ああ、まあな」
短く答えると皐月がキッチンへ向かう。
「今、コーヒー淹れますね」
「ああ、頼む」
昴はソファーに腰を下ろし、何気なくついていたテレビへ視線を向けた。
ちょうど画面ではテーマパークの特集が放送されているところで、楽しそうなアトラクションや園内の様子を眺めていた昴はふと何かを思いついたように口を開いた。
「皐月、乙哉」
「はい?」
「なんですか?」
「希海と羽衣子が起きたら、ここへ行く」
そう言って昴はテレビ画面を指差す。
「お前らも来てくれ」
突然の提案に皐月と乙哉は顔を見合わせながら、
「もちろん、いいですよ」
二人がそう答えると昴は満足そうに頷いた。
それから暫くして、羽衣子と希海が目を覚ましてリビングへやって来る。
「パパ、おとくん、さっくん、おはよ!!」
元気いっぱいに挨拶する希海に三人は笑顔を向ける。
「おはようございます。すみません、だいぶ眠ってしまって」
その後ろから羽衣子が申し訳なさそうに頭を下げると昴は気にした様子もなく首を横に振った。
「よく眠れたなら良かった」
「今、朝ご飯の用意しますね」
そう言って皐月がキッチンへ向かおうとすると羽衣子がすかさず声を掛ける。
「あ、手伝います」
「羽衣子ちゃんはいいから座ってなって」
「でも……」
「広瀬さんの言うとおりですよ、座っててください」
「すみません」
羽衣子は申し訳なさそうにダイニングテーブルに着くと、その隣に座った希海に乙哉が声を掛けた。
「希海、飯食ったら遊園地行くってよ」
「え!?」
その言葉に希海の瞳が一瞬で大きくなる。
「ゆーえんち!? パパ、ほんと!?」
「ああ」
「テレビで特集組まれててな。それを観た昴さんが行こうって言ってくれたんだよ」
乙哉が説明すると希海は嬉しそうに昴を見上げた。
「希海が良い子にしてたからな」
「やったぁ!」
飛び跳ねそうな勢いで喜ぶ希海に昴も嬉しそうに笑みを浮かべていた。
「ただ、俺はまだ怪我が治ってねぇから、あんまり一緒に乗り物には乗れねぇんだ、悪いな。乙哉や皐月も行くからアイツらと沢山乗るといい」
「パパといっしょがよかった……」
その言葉に羽衣子が優しく声を掛けた。
「希海くん、乗り物によってはパパも一緒に乗れるから大丈夫だよ」
「ほんと?」
「うん。みんな一緒に乗れるものもたくさんあるから、今日はみんなで楽しもうね」
「うん!」
羽衣子の言葉に再び笑顔になった希海を見て、昴や乙哉もホッとしていた。
それから朝食を済ませ、全員が出かける準備を整える。
今日は五人での移動になる為、普段使っているセダンタイプの車ではなく三列シートのワンボックスタイプの車を使うことに。
すると希海は早々に一番後ろのシートを指差した。
「ぼく、いちばんうしろがいい!」
「じゃあ、俺と一緒に後ろ座るか」
「うん!」
一番後ろの席にチャイルドシートを設置して乙哉と隣に座る希海。
真ん中のシートには昴と羽衣子が座り、運転席には皐月が着き、一行は目的地に向けて家を出発した。
コメント
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昴が「パパといっしょがよかった」と口にした希海に、優しく選択肢を残す羽衣子の言葉──あのやりとりがとても沁みました。無理に宥めるのではなく、一緒に乗れる方法を伝えて希海の笑顔を取り戻す流れが自然で、昴や乙哉のホッとした表情も目に浮かびます。家族の日常が穏やかに積み重なっていく第88話、とても温かい気持ちになりました。次はどんなアトラクションを楽しむのか、楽しみにしています。